女神の憂鬱
売れっ子のモデルの江副ルミが匿ってくれ、と藤田のところにやってくる。3年前、無職だったルミと知り合った藤田は、ヌードモデルをやらないかともちかける。「絵や彫刻のモデルだ。需要はいくらでもある。画家。画学生。絵画教室。カルチャースクール。お前さんの身体は完璧だ。きっと売れっ子モデルになること請け合いだ」藤田の予言とおり、ルミはビールの宣伝のポスターに出るまでの売れっ子になる。
ルミはストーカーに追われてると藤田に訴える。「いつも帽子かぶってマスクかぶって顔はわかんないの。いやらしい電話や手紙もどっさり」その手紙の臭いをかいだ藤田はストーカーの正体がだいぶわかった、とルミに言う。
日本画の山口翔風のモデルを勤めるルミ。山口は帽子をかぶってマスクをして出かけようとするが、藤田に呼び止められる。「江副ルミとはちょっとした知り合いでしてね。あんまり彼女を困らせないでほしいんです」「なんのことだ」「江副ルミに送られてきたこの手紙。こいつには変わった物質がついていましてね」
それは胡粉だという藤田。「胡粉は日本画の絵の具です。原料はカキやハマグリの貝殻です。この手紙のものは市販のものと違う独特の香りがありましてね。山口先生は胡粉はわざわざ中国から貝を取り寄せるとか。あなたはルミをモデルにしていくうち、彼女に欲情してしまった。しかしプロの画家たるもの、モデルに指を触れることができず、欲情は妙な形で噴出した」
頭を抱える山口を慰める藤田。「わたしは先生を責めようとは思わないです。あの娘は自然児なんです。フェロモン全開で本能のままに生きる女。その彼女をモデルにして先生のさわやかな画風。無理が出るのは当然です。感じたままのルミを描いてみてはどうです。先生の欲情を画面に塗りこめるんです」山口翔風の新境地を描いた作品は、ギャラリーフェイクで展示され、好評を得るのであった。