さいとうたかを「ゴルゴ13(652)」 | ロロモ文庫

ロロモ文庫

いろいろなベスト10や漫画のあらすじやテレビドラマのあらすじや映画のあらすじや川柳やスポーツの結果などを紹介したいと思います。どうぞヨロピク。

ロンメル将軍の財宝

「特集「ドイツと移民」。今回は次期ドイツ連邦首相と目される人気政治家ドイツ未来党のドルン党首と右翼政治家民族党のベック党首との討論です。移民問題に関しては、真っ向から意見が対立するお二人です」「イスラム系住民はドイツの火薬庫であることは明かです」「ベック党首、あなたはヒトラーの再来と言われていることをどうお考えですか」「事実無根、不愉快ですね。私はユダヤ系の人々に何の偏見も持っていない」

「私はあなたの主張には嫌悪t感を覚える」「私のような愛国者の嫌悪感ですか?」「告白します。父はゲシュタポでした。そのことを私は恥じています」「愛国者のお父上が気の毒だ」「愛国者ですって?ナチスはドイツの名誉を貶めた売国奴集団ですよ」「ドルン党首、移民に対する考えは?」「我々が差別をやめ、十分な教育と職場を提供すれば移民問題など解消します」「奴らが我が国で大規模テロを起こした時、あなたが何を言うか、見ものですな」

話し合うLFV(憲法擁護庁州局)のメンバー。「射殺されたクルト・ガンスはアウシュビッツ強制収容所の生存者だった」「ほっといてもそう長くないでしょう。なんでこんな大袈裟な暗殺なんか」「それを調べろというのが本部の依頼だ。フィンク、この件は君に頼む」「わかりました」「もう一人はボームだ。彼はナチとユダヤの専門家。モサドにも顔が利く」

ガンスの遺体を調べるボーム。「あの男は偽物だ」「え」「左上腕、肘から20センチの血液型の刺青はナチ親衛隊の証だ」「え、ユダヤ人が親衛隊隊員?」「違う、恐らく戦犯として逃亡中の親衛隊隊員がユダヤ人になりすましたのだ」「そんな卑劣な」「ヒトラーの手下だ。鬼畜だ。会社の身元割り出しの要請をしろ」「じゃ、あの老人を暗殺したのは」「……」

ガンスの正体がわかったとボームに言うフィンク。「親衛隊少尉、オットー・アドラーです」「アドラー?元会計士、ウクライナのポルタヴァの金庫番だった男だな」「ポルタヴァ?」「アインザッツグルッペンの司令所の一つがあった所だ」「アインザッツグルッペン?」「移動虐殺部隊だよ。ユダヤ人を殺害するためだけに組織された史上最悪の軍団だ」「アドラーはポルタヴァからアフリカのドイツ軍つき保安警察に転属。上官はヴァルター・ラウフ大佐」「ラウフは移動ガストラックを開発し、最大20万人のユダヤ人虐殺に関与した戦犯だ。奴はラウフに気に入られていたのか」「保安警察の経理部門で頭角を現し、ラウフの眼に留まったようです」「……」

モサドのレビと会うボーム。「あの仕事はゴルゴ13か?」「……」「そして依頼主はモサドか?」「あとはあんたの問題だ」「どういうことだ。ユダヤ人虐殺の戦犯を処刑して、それで終わりじゃないのか」「わざと派手に殺して、奴らの作戦を早めたのさ」「奴らの作戦?」「とぼけるな。専門家のあんたならピンと来てるはずだ」「しかし、17年も経った今」「やつらは後継者を見つけたらしい」「後継者?」「じゃあな」

フェンリル最終作戦を知ってるかとフィンクに聞くボーム。「なんですか、それは」「死を覚悟したヒトラーが自ら立案した計画だ。莫大な財産を秘匿し、時は来たら、彼の後継者がナチスを再興する作戦。南米や中東に逃亡した大半の戦犯は、ナチの隠し財産を自分のためだけに使った。だがフェンリル最終作戦に関わった連中は別だったという噂がある」「私利私欲を持たないヒトラー崇拝の狂信者たち、ですか」「その指揮官と噂されるのがラウフなのだ」「え」

「ラウフはシリアの客人になり、同国の内務省警察創設に尽力。その後チリに亡命し、1984年肺がんで死んだ」「まんまと逃げおおせたわけだ」「彼が最終作戦を本気で考えていたとしよう。死後、誰が引き継ぐ?」「まさか、アドラー」「そう考えるのが自然だとう。ナチの財産を70年管理できるのは、有能で実直な会計士だけだ。ナチがヨーロッパとアフリカを侵略し、莫大な財産を略奪したのは知ってるだろう」「終戦間際、忽然と消えたんですよね」

「サルデーニャとコルシカの間の海底に財宝は沈められていた」「財宝?」「ロンメル将軍の財宝だ」「え、砂漠のキツネと言われた英雄が私腹を肥やしていたんですか」「正確にはアフリカのロンメルの快進撃の間に、親衛隊がユダヤ人から没収した大量の金銀財宝で、略奪したのはラウフだから、ラウフの財宝と言うべきだな」「……」「ラウフは逃亡先のシリアから部下のアドラーに命じて財宝を引き上げさせた。そしてアドラーは財宝を換金し、スイスや南米、ケイマン諸島の銀行に預けた」「そのアドラーはモサドが成敗した」「モサドの知り合いはこう言った。アドラーを暗殺すれば、数年後に計画されたフェンリル最終計画が早まる、と」「それはつまりヒトラーの後継者が見つかったということですか」「俺はそう思う」「それは一体誰ですか」「……」ボームはゴルゴ13にヒトラーの後継者の暗殺を依頼し、ゴルゴ13はドルンを暗殺するのであった。(2015年8月)