さいとうたかを「ゴルゴ13(586)」 | ロロモ文庫

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疑惑のペースメーカー

スイスのジュネーブで手術を受けるクラハイム。「気分はどうだね」「大丈夫です」「当初の予定通りに右脇腹にペースメーカーを埋め込んだ」「生まれてからずっと心臓病を患っていて、ついに機械を入れないとダメになってしまった。しかしこの機械は新開発のものでしょう」「ああ」「じゃ、例のモノは?」「ここにあるよ。その携帯電話を使って、重要な仕事を成功させてくれたまえ」

話し合うCIAのウィルソンとヘスター。「最近気になる動きがある」「なんだ」「スイスだが、お前は何か知ってるか」「スイスは28年ぶりに原発を作ることになったが、核兵器に関する情報収集を極秘裏にやってるらしい」「どうも、ウラン濃縮に必要な高性能遠心分離機に関する情報を集めているようだ」「うちがわかってるのはある男は動いてるという事実だけだ」「名前は?」「ベン・クラハイム。ただし経歴はわからない。ロシアを主に国外へ移動していることはわかっているが」「ロシア?」「うちは大変危惧している、永世中立国であるスイスが軍事的脅威になる核兵器に保有につながる技術導入を進めていることを。今,スパイをスイス周辺に派遣している」「わかった。当方もロシアにスパイを派遣しよう」

ロシアのモスクワにある原子力保安協会に顔を出すクラハイム。「クラハイム君。君は我が国のウラン濃縮技術をスイスに輸入するために、誠心誠意動いてくれることを感謝してる。膨大な資料を極秘裏に運び出す手段はちょっと思いつかない方法だが」「いえ」「ロシア政府では欧州に潜在的軍事友好国を生み出す好機と考えている」「スイスは少し前に国連に加盟しましたが、EUには加盟していません。スイスは重武装による中立を国是としている。それには大きな波に飲み込まれないよう、独自の戦略を持っていなければならない。そのためにロシアの優秀なウラン濃縮技術が必要なのです」

激しく咳が出たため、ロシア政府系総合病院に行き、内科医のポドロフの診察を受けるクラハイム。「肺は大丈夫ですね。咳は出るという事ですが熱もない。まず心配ないでしょう」「よかった」「ところで珍しい位置にペースメーカーを入れてますね。僕は見たことありませんよ」「リゾートに行って、目立つ位置に機械があると恥ずかしいから、このような位置に入れてもらったんです」「なるほど。腕のいい医師に手術してもらったんですね」

クラハイムの胸部レントゲン写真をチェックするポドロフ。(不思議だ。右側腹部から心臓へわざわざリード線を通すのは通常より面倒で難しいはず。なぜこんな所に。ん。なんだこれは。機械本体から1ミリほどの突起がある。通常のペースメーカーには絶対にないものだ。あの男、いったい何者だ)医療機器販売業者でヘスターのスパイであるチャンベルにクラハイムのレントゲン写真を見せるポドロフ。早速ヘスターに連絡するチャンベル。

話し合うウィルソンとヘスター。「クラハイムのペースメーカーを解析した結果、一般的に使われているものより、数百グラム重いことがわかった。それとこの突起だが、これは通信の役割をしている可能性が高いことが判明した」「なぜ通信機器が必要なんだ」「体内にあるペースメーカーの操作は一般的に電磁波による無線で行う。だがこれとは別にこの部分は高周波でのデータ通信を行っている。つまり奴はどんな厳重なボディチェックもやすやすとかいくぐれる極秘データ専門の運び屋なんだ」

「心臓が悪くてペースメーカーを使ってるわけじゃないのか」「いや、クラハイムは先天性の心臓病があるのは間違いない」「じゃあなぜそんな位置にペースメーカーを」「通常の心臓付近に埋め込んだ場合、仮に狙撃にあったら心臓もろとも撃ち抜かれる可能性がる。そうなるとデータが回収不能になってしまう。だから右脇腹に埋め込んだ」「なるほど」「あと、ペースメーカーは数百グラム重いと言ったが、実は微妙な突起が見つかった。これが自爆用の爆弾の可能性があるらしい」「なんだって」「心臓が狙撃で止まったら、自爆できるようになっているらしい」

「ちょっと待て。自爆なんかしたら敵はデータが手に入らんだろう」「だからあの突起だ。自分の身に危険が及んで、自爆するプログラムが作動したら、携帯電話へ保存データを送信して安全なサーバーに送れるようになってるのかもしれない」「なんという仕掛けだ。スイスは精密機器に関しては得意とする国だからな。これはうかうかしてられない」「ん。ウィルソン、何か動きがあったのか」

「ああ、スイスはウラン濃縮技術に関する研究者と、遠心分離機を製作する技術者を集めるようだ。しかもロシアだけじゃなくインドからも呼んでいるようだ」「それはインドと軍事的友好国のフランスが黙っちゃいない。このことが明るみになったら欧州の軍事対立が激化するぞ」「ああ、だから奴を消すしかない。と言って心臓とペースメーカーを同時に狙撃するスナイパーなんて思い当たらない」「こうなったら長官に相談するしかないだろう」CIA長官から依頼を受けたゴルゴ13は一撃でクラハイムの心臓とペースメーカーを通過させるのであった。(2008年12月)