作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(694)」 | ロロモ文庫

ロロモ文庫

いろいろなベスト10や漫画のあらすじやテレビドラマのあらすじや映画のあらすじや川柳やスポーツの結果などを紹介したいと思います。どうぞヨロピク。

本物のたこ焼き

山岡に大阪でたこ焼きなるものを食べされて往生したと言うブラック。「ぐにゅぐにゅしたメリケン粉の団子の中に冷凍物の茹でたタコのかけらと紅しょうがが入っていて、それにべたべたのトンカツソースをかけ、削り節と青のりをかけて食べる。あんなものを食べるやつの気が知れやせん」「ブラック、一緒に大阪に来い」

作り方を説明する会津屋の店主の遠藤。「油を引いた鉄板のくぼみに、まず天ぷらの揚げ玉を入れる。その上にだしで溶いた小麦粉を注ぐ」「ぬ、だしで溶いてるのか」「味もつけてある。この段階で味がついているのが、うちのたこ焼きの特徴だ。そこにゆでたタコを一切れいれる、さらにその上からだしで溶いた小麦粉で一杯にする「ぬ、中に入れるのはタコだけか。ほかの店では紅しょうがを入れたりするが」「うちはタコしか入れない。紅しょうがなんか折れると味が壊れる」「ぬう」

「頃合いを見て、ひっくり返す。ほどよく焼けたら出来上がりだ。食べろ」「む。削り節も青のりもソースもかけないんでやすか」「そんなことをしたら、せっかくのタコの香りも味も失せるだろ。味は粉をだしで溶く時につけてある」「ぬ。これは本当にたこ焼きでげすか」「外側はぱりっと香ばしくて、中はとろりと柔らかく、タコの風味もたっている」「なんて上品で軽い味なんでげしょう。これにとんかつソースなんざつけたらおしまいでげす」

うちがたこ焼きの元祖だと言う遠藤。「たこ焼きが広まっていくうちに、いろいろ味を変化につけたいと思った人が、昔は高級とされたソースをつけるようになった。うちの店の名前からわかる通り、俺の父は福島出身で、大阪でラヂオ焼きに出会った」「ラヂオ焼き?」「たこ焼きの前身で、タコの入ってないたこ焼きだ。父はそのラヂオ焼きに工夫をして、醤油で煮た牛肉を一切れ入れたら、これが当たった、そして父は兵庫県の明石に明石焼きがあるのを知った。小麦粉を溶いたものに、タコ、イカ、エビなどを入れて焼き、それを椀に入れただし汁につけて食べる」「ぬ。それも美味しそうげすな」「明石焼きは今も人気がある。銀座で明石焼きで繁盛してる店がある」

「それで、父は牛肉のかわりにタコを入れるのを思いついた。それもダシで溶いて味をつけて、まわりをカリっと焼きあがる。それも当たったんだ」「これが本物のたこ焼きだったんでげすな」「ぬう。大阪はたこ焼き一つとってもこれだけ奥が深い。大阪の食文化に挑戦しない手はない。今度の日本全県味巡りは大阪が舞台だ」