家族はつらいよ | ロロモ文庫

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友人の服部に家に電話したら嫁の史枝に犯罪者に間違われたと憤慨する平田。「お前が悪い。いきなり「俺だ」なんて電話するから、オレオレ詐欺と間違われる」「くだらん」「孫は男の子だっけ」「来年高校だよ」「いいなあ。息子夫婦がいて孫がいて。三世代同居。今時珍しいんじゃないか」「おまけに次男坊までいるんだよ。結婚しないで」「いいじゃないか、にぎやかで。俺のとこなんか息子は転勤で博多に行ったきりだし、女房は婆さんの介護で年中留守。この俺はほとんど独居老人だぞ」「そのほうがいいよ。うるさい女房なんかうちにいないほうが」

今日はお前の誕生日だなと妻の富子に言う平田。「久しぶりに誕生日のプレゼントでもするかな。なんか欲しいものあるかい」「そりゃあるけど」「言ってみろ。ただし高いもんはダメだぞ。消費税は上がったし」「そんなにお高いもんじゃないの。お値段は450円」「450円?」離婚届を平田に渡す富子。「ここに名前を書いて、印鑑を押してほしいの。450円は戸籍謄本を取るためのお金」「おい。冗談だろ」「本気よ」

次男の庄太に母さんと何があったのと聞かれる平田。「この年になると色々あるんだ」「仲良くしてね、母さんと」「偉そうな口ききやがって。結婚してないくせに」「実は結婚しようと思ってる子がいるんだ」「本当か。じゃあ連れてこいよ」夫の泰造と離婚したいと平田に言う平田の娘の成子。「あの人が骨董市で買ってきた皿を割ってしまったの」「そんなことで離婚するなら離婚届は何枚あっても足りないな」「この皿、20万したって怒るの。買ってきた時は私には一万円って言ったのに。そういう嘘をつくのが許せないの」「じゃあ別れちゃえ」「それが娘に言う言葉なの?」「そうだ」

自分の立場はわかってると平田に言う泰造。「優秀な税理士の成子さんの事務所で働いていて、高い皿なんか買える立場じゃないってことは。でもどうしても欲しくなったんですよ。あの皿はまさしく古伊万里なんです。出すとこに出せば50万するシロモノなんです」「20万したって言えばよかったんだ」「それを言うと成子がどんなに怒るかと思うと。それは怖いんですよ、成子さんは。あんな優しいお母さんからどうしてこんな怖い娘が生まれたかと思うと」「よくわかった。もう別れるしかない。もともとあんな女と君が結婚したのは不思議だった。さっさと別れろ」「そんな」「今の俺は君たちのことなんかどうでもいいんだ。この俺が女房に捨てられようとしてるんだぞ」

成子に大変だと言う史枝。「お義父さんとお義母さん。離婚するだって」「ウソでしょ」「お義父さんがそうおっしゃってるのよ。お義母さんに捨てられたって」ちょっとした夫婦ケンカなんでしょと平田に言う成子。「私たちはしょっちゅう喧嘩してるから、いつも別れる別れないと言ってるけど。冗談で言ってるんでしょ」「冗談で言っていいことと悪いことがあるくらい、お前にはわからんのか。お母さんは本気で別れたいと言ってるんだぞ」

絶対困ると平田に言う史枝。「謙一は一番感じやすい年ごろよ。大好きなおじいちゃんとおばあちゃんが別れると言ったら、あの子、ショックで勉強に手がつかなくなるわ」「そういうことは母さんに言ってくれ。言い出したのは向こうなんだからな。いいか、この俺は被害者なんだからな」

恋人の憲子に家を出てマンションに住むと言う庄太。「引っ越しするのね」「うん」「どうして長い間、実家にいたの。家を出たいと思わなかったの。それともマザコン?」「違うよ。好きでいたんじゃないんだ。大学時代にアパート暮らしをしたことがあったけど、兄貴が帰ってくれと言うんだ」「なぜ」「親父と兄貴は仲が悪いんだ。僕がいないと家がバラバラになってしまうんだ。兄嫁も気が強いしね」「じゃあ、あなたは家族の緩衝剤なのね」「接着剤かな」「でも、あなたがいなくなって大丈夫なの」「今までなんとかやってきたから、もう大丈夫だろ。それに君と結婚するとなれば、必然的に出るしかないし」

泥酔して家に戻り、専務と一緒にカラオケに行ったと史枝に話す平田の長男の幸之助。「どうやら専務に好かれたみたいだ」「大変なことがあったのよ」「なんだい」「お義母さんがお義父さんと別れたいと仰ってるのよ」「え」「ちょうど成子さんと泰造さんが来て、例によって夫婦ケンカを始めたけど、それどころじゃなくなったのよ。どうしよう。これが本当だったら大変よ。どうする」「二人ともボケたんだ。相手にするな」

謙一の野球の応援に行くという幸之助にダメよと言う史枝。「今日は家族会議じゃないの」「なんだ、それ」「昨夜話したでしょ。あなた、酔っ払って聞いてなかったの。お父さんのことで相談しようときつく言われてるのよ。あなたにはうちにいてちょうだいと」「俺なしじゃダメか」「ダメよ。パパは家長でしょう。平田家の」

成子と泰造に君たちは大げさなんだと言う幸之助。「今日は大事な息子とのコミュニケーションの日だったんだぞ。それを両親が別れるのどうの。くだらない。だいたい事の起こりは君たちの夫婦ケンカなんだから」「じゃあお兄さんは平気なの。お父さんとお母さんが離婚しても」「単なる夫婦ケンカなんだからほっとけばいいんだ」「でもお母さんは本気みたいよ」「単なる夫婦ケンカなんだからほっとけばいいんだ」

庄太たちはまだなのと幸之助たちに聞く富子。「庄太たち?」「今日、連れてくるんでしょ。恋人」「それ、断れないかしら」「どうして」「私たちが今日来たのはお母さんたちの離婚問題について兄弟で話し合おうと思ったからなのよ」「あら。そのこと、知ってたの」「庄太の結婚問題も大事だけど、その前にお父さんとお母さんの離婚問題をなんとかしないと」「でも、私がお父さんと別れても、あの子は私の息子であることは変わりないでしょ」「じゃ、お母さん、本気なの?」「うん」

そこに憲子を連れて現れる庄太。「なんだ。みんなお揃いか。今日は僕たちのために来てくれたの?」違うのと言って庄太に事情を説明する成子。父さんと母さんがそんな深刻だと思わなかったと憲子に言う庄太。帰ったほうがいいわねと言う憲子にダメよと言う富子。「あなたはいずれこの家の家族になる人なんだから」そこに現れた平田に憲子を紹介する庄太。

はははと笑う泰造。「一昨年の正月以来ですね。家族がこうして集まるのは」どういうことなんですと平田に聞く幸之助。「なにが」「わかってるでしょ。みんながこうして集まってるのは」「俺が頼んだわけじゃない」「僕たちだって喜んで集まってるわけじゃないんですよ。こんな天気のいい日に家族会議なんて。会社の会議でうんざりしてるのに、なんで家に帰って会議なんかしなきゃならないんですか」

今日はパパの会社のくだらない会議とは違うと言う史枝に、くだらない会議とはなんだと怒る幸之助。「あら、いつも言ってるじゃない」「そういうくだらない会議も必要なんだ」喧嘩してる時じゃないでしょと呟く成子。幸之助に母さんの話を聞こうと言う庄太。それがいいと言う泰造。離婚したいって本当かと富子に聞く庄太。「うん」「何があったの。僕は母さんがこの暮らしにすっかり満足してると思ってたのに。母さんに憲子さんを紹介したら喜んでくれると思ってたのに」

理由を話す富子。「近頃、お父さんがイヤになってきたの。たとえば、洗面所で大きな声でうがいなさるでしょ。昔は男らしくていいなあと思ったり、それが夫婦の親しさだと思ってたけど、近頃、それがイヤなの。お父さんはパンツや靴下をお脱ぎになると、いつも裏返しのままポイっと洗濯籠の中に入れるでしょ。私はあれがイヤで、何度も言ったけど、ちっとも治してくださらない。そんなことがあって、お父さんと一緒にいるのが私のストレスなの」

母さんの気持ちはよくわかると言う庄太。「父さんが悪い。謝るべきだ」お父さんはパンツと靴下をちゃんと洗濯籠に入れればいいのかという幸之助に、そういうことじゃないと言う庄太。パパだって裏返しに出すじゃないと幸之助に言う史枝。「あれ、お父さんの遺伝なの」「そんなこと遺伝するか。馬鹿」喧嘩してる時じゃないでしょと呟く成子。子供たちも大きくなったから、この辺でお父さんから解放されて、好きなように生きてみたいと言う富子。「夫が先立たれた友達と一緒に静かな老後を過ごしたいの」

そんな暮らしもいいわねと言う史枝にお義姉さんの気持ちはよくわかると言う庄太。「大変だからね。この大家族の世話をするのは」すぐ庄太は史枝さんの肩を持つと言う成子に、僕は僕なりに家を支えてきたと言う庄太。「家を出てしまった姉さんには僕の気持ちはわからないよ」「じゃあ、あんたはお母さんの離婚に賛成なの」「そんなこと言ってるんじゃないよ」

憲子に驚いたでしょと言う平田。「こんなハチャメチャな家に嫁に行くなんて、イヤになったでしょ」「いいえ。私は皆さんの話を聞きながら、むしろ羨ましいと」「え」「私の両親は離婚しました。母は黙って家を出ていき、こんなに真剣に話しあうことなんて、私の家にはなかった」「じゃあ、あなたのお父さんは置いていかれたってことですか」「早く言えば」「お父さんはサラリーマンですか」「はい」「私と同じだ。一生懸命、家族のために働いて、家族のためにひたすら我慢して、その苦役からようやく解放されて隠居できたと思ったら、このありさまだ。俺は何も悪いことなんかしてない」

父さんは自分のことばかり言うと平田に話す庄太。「その長い年月の間、母さんが何を考えてきたか理解しようとする気持ちがないんだ」「なんだと」そうですよと平田に言う泰造。「お義父さんは論点がずれてますよ。お義母さんはそんなことはじゅうじゅうわかって、別れたいと言ってるんじゃないですか」「偉そうな口ききやがって。髪結いの亭主のくせに」激昂して発作を起こして倒れ、病院送りになるが、退院する平田。

引っ越しの準備をする庄太にあなたがいなくなると困ると言う史枝。「力仕事は謙一に仕込んであるから大丈夫ですよ」「お義父さんとお義母さんのことよ。このままうやむやになればいいと思うけど、それじゃお義母さんが可哀そうだし」生意気なことを言いますが家族の一員だと思って許してくださいと平田に言う憲子。「お義母さんは家族会議で別れたい理由をちゃんとお話になりました。それに対してお義父さんはお答えになるべきじゃないですか。お義母さんがいなくなると寂しいとか、自分にはお義母さんが必要だとか」

離婚届にサインして押印したと富子に言う平田。「まあ、なんだ。長い間世話になったから、なんかしなきゃと思ってたんだが、これにサインすることがお前の望みなら、それをかなえてやるのがいいかなと思って。なんか矛盾してるようだけどしょうがねえや。かれこれ45年、お前と一緒になってよかった。そんな風に思ってるよ。サンキュー」「本当にそんな風に思ってるの」「ああ」離婚届けを破く富子。「今の言葉を聞けたら十分。私、死ぬまで付き合います。どっちが先かわからないけど」早速、平田がパンツと靴下を向きを整えて脱ぐのであった。