作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(656)」 | ロロモ文庫

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チーズ対決(3)

皿の上に乗せてある覆いをとって、その匂いに驚く斎藤。「このチーズ腐ってる。本当に食べられるのか」「今一番の食べごろだ。フランスのノルマンディー地方のリバロで作られるチーズで原料は牛乳。熟成させる間にチーズの表面を塩水で洗うので、チーズの表面が濡れて、有用な菌が繁殖しやすくなる。その菌がチーズを熟成させ、この独特の香りと味を出す。この製法のチーズを英語でウォッシュタイプという。このリバロの歴史は古く、15世紀の文献に記されている。ウォッシュタイプのチーズはフランスだけでも他にポン・レベックとかマロワルとかいろいろあるけど、土地によって細菌叢が違うから、味も香りも違う」「むう」

「斎藤、おまえクサヤは嫌いか」「大好きだ」「クサヤとリバロのにおいは似てないか」「ぬう、そういえば」「悪く言えば腐敗臭に近い。タンパク質が分解したときにで出るにおいだ。クサヤは開いたムロアジをクサヤ汁と言って、ムロアジの内臓も血も入れた塩水につけて、干す作業を数回繰り返して作る。クサヤ汁の中の菌がムロアジの身に沁み込んで旨味を作り出すと同時に、有害な腐敗菌の繁殖を妨げて、クサヤを腐りにくくする」「ウォッシュタイプのチーズの作り方と似ている。塩水につけることで菌を繁殖させ、味を熟成させるとことが同じだ」「臭くないクサヤは美味しくない。それはリバロも同じだ。早く食え」「ぬう。妙に気持ちが落ち着いて、懐かしい感じがする」「チーズが嫌いというのは、本物の素晴らしいチーズを食べたことがないからで、本物のチーズはそんな先入観を吹き飛ばして、チーズを好きにする力を持っているんだ」

究極と至高のチーズ対決が始まり、日本人がいかにチーズを楽しんでもらうかを今回の主題にしたと言う海原。「チーズは最初に中央アジアの遊牧民が作り始め、それがイスラム文化圏を経て、ヨーロッパに伝わったという説が有力だが、やはりフランス、イタリアを中心とするヨーロッパチーズが種類もいろいろ豊富なようだ。日本はどうかと言うと、圧倒的にプロセスチーズは幅を利かせている。プロセスチーズは万人に受け入れられる味だが、逆に言えば単調で物足りない。チーズの本当の味じゃナチュラルチーズで味わうことができる。そこで今日はヨーロッパのチーズを題材に使うことにした」

すごい種類のチーズを出す海原。「チーズには原料乳によって種類が分かれる。同じ原料乳でも製法でまた種類がわかれる。実に多種多様だ。パルメザンは牛乳を原料としたイタリアのチーズだ。モッツァレラは水牛を原料としたイタリアのチーズ、ロックフォールは羊乳を原料としたフランスのチーズ、いわゆるブルーチーズの代表格だ。ミモレットは牛乳を原料としたオランダのチーズ、クロタン・ドウ・シャヴィニョールはヤギを原料としたフランスのチーズ、といちいち説明するときりがない。ではこのチーズをいかに楽しむか、それをこれから見せてやる」