作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(652)」 | ロロモ文庫

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トロロの深み

体調が悪いという富井にそういう時はトロロだと言う山岡。「昔の人は言った。山の芋、川に入ってウナギとなる、と。ヤマイモはウナギと同じくらい体に精をつけるということだ。ヤマイモのぬるぬるの中に含まれているムチンがたんぱく質の消化吸収をよくするとか、年を取ると失われる物質が、ヤマイモに含まれているとかいろいろな説がある」「む」「漢方でもヤマイモの干したものは疲労回復や虚弱体質改善に使う。おまけにヤマイモは弱った胃腸にも優しい。ヤマイモは消化酵素ジアスターゼが大量に含まれていて、一緒に食べたものの消化も助ける。だいたい生で食べられる芋が山芋のほかにない」「ぬう。岡星に行くぞ」

トロロ汁に使う芋は普通ヤマイモというが、実はいろいろ種類があると言う山岡。「植物分類学上ではナガイモ、ツクネイモ、ヤマトイモの3つはヤマイモと総称されるひとつの種類で、ジネンジョはヤマノイモと呼ばれ、別の種となる。ヤマイモは中国原種産で大昔に日本に渡ってきたらしい。一方、ヤマノイモのジネンジョは日本原産。両方ともツル性の植物だ」「ツル性の芋は世界中にあるんだな」

「ところでヤマイモの呼び名には混乱がある。関西でツクネと呼ばれる球形のヤマイモは本当はヤマトイモと言い、関東の人間がヤマトイモと呼ぶ手のひら型の芋は本当はイチョウイモという。ツクネは地方によっては伊勢イモ、大和イモ、豊後イモとか言う」「それだけ昔からいろんな土地で、その土地にあったヤマイモが育てられたんだな」「ヤマイモはだから栽培種だ。大雑把にわけると、ナガイモは北海道、長野、岩手などの寒冷山間地、イチョウイモは関東地方、球形のツクネイモは関西となる」

ジネンジョとツクネイモとイチョウイモとナガイモのトロロ汁を出す岡星。「色はジネンジョが一番濃く、においも強い」「ジネンジョとツクネイモは粘り気も強く、においも味も濃い。イチョウイモはそれより一段薄い。ナガイモは粘り気もさほどでなく、味も香りもさっぱりしてる」「ジネンジョとツクネイモは粘り気は強すぎる。まるでゴムみたいだ。これじゃ汁というよりお餅みたいだ」「ぬ。そういうと思った」

ジネンジョとツクネイモはダシでのばしたトロロ汁を出す岡星。「ぬう。これこそ本当のトロロだ。味も香りも強くて濃厚だけど、もったりと重すぎず、喉ごしがとても気持ちいい。薄くのばしても芋の味も香りも少しも薄まっていない」「そこが特にジネンジョの凄いところだ。芋自体がすごく味が濃いから、たっぷりのダシで伸ばしても、味も香りも損なわれない。むしろダシのうまみと芋のうまみの釣り合いがとれて、美味しさが増す。ツクネイモもジネンジョに次ぐ。ところがナガイモの場合、味も香りもそれに比べて、あっさりしている。そのあっさりしているのが美味しいところであるが、ダシであまりに薄めると、肝心の芋の旨味も香りも消えてしまう」「でもやはりトロロがご飯にかけないとな」

麦飯を出す岡星。「ぬう。このジネンジョのトロロのうまいこと」「副部長、元気になったか」「ぬうううう」