作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(634)」 | ロロモ文庫

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スコッチウイスキーの真価(6)

日本に戻って食前酒に何がふさわしいか答える前に俺達が選んだウイスキーを味わえと言う山岡。「用意したのはアイラ島のシングルモルトが2本、スペイサイドのシングルモルトが3本、ブレンデッドウイスキーが3本だ。それを試飲して感想を記入しろ。まずストレートのまま香りを嗅いで、同量の水をくわえて香りが変わるか試せ。そして口に含んで、ゆっくりと噛むようにして味わうんだ」

感想を発表する山岡。「まずアイラモルトだ。ラフロイグ15年については、30~40歳、働ぎ盛りの男、パンチがある。強烈な波のあと、なかなか引かない感じ。ボウモア17年については、柔らかいがしっかりしている、農園の女性のよう、なぎの海に感じる力強さ。こんなところだ」

「次はスペイサイドだ。ザ・グレンリヴェット12年は、清らかな水の感じ、味と香りの要素の多さは感じるが、そのどれもが刺激を与えない。グレンフィディックエインシャントリザードンは、大事に育った坊ちゃんの感じ、のびやかな勢い、切れ味もよい。カードゥ12年は、長年の友人のあたたかさ、実に心が落ち着く、田植えの頃のにおい、柔らかくあたたかい。こんなところだ」

「最後にブレンデッドウイスキーだ。バランタイン30年は、非常に丸く、つなぎの柔らかい、全てが備わった感じ。愛人より古女房。ホワイトマッカイ30年は、盛装した30代後半のいい女、色香に迷う。香り芳醇、味まろやか。オールドパースーペリア。秋の森の枯れた味わい。男性的、正統派、調和よし。こんなところだ」

8本飲んでもらったとなと呟く山岡。「で、なにが食前酒にいいかと言えば、この全てがよし」「ぬう。いい加減なことを言うな」「食前酒には西洋の食文化で、食欲を増進させるものだ。日本のレストランで食前酒にと言うと、シャンペンやキールやシェリーと決まっている。だからウイスキーを食前酒と言うと礼儀知らずと思うバカがいるが、それは違う。今飲んだウイスキーの中で、それを飲むと、そのあとの料理の味を損なう恐れのものがあったか」「ぬう、ない。どれもすがすがしい後口で、食欲を呼び起こす」「だからどれを選んでもいい。どうだ、雄山」「ぬう、勉強の成果を認めよう。このように本物の純粋のスコッチウイスキーは典雅で繊細、かつ力があって、真に生命の水と呼べるものだ。日本のウイスキー会社も一層の努力をして生命の水を追求してもらいたい」