作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(570)」 | ロロモ文庫

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東西新聞の危機(5)

説明する山岡。「このつくね親子丼は人間の情けの味だ。この鶏は俺を子供のころから可愛がってくれたおマチ婆ちゃんが俺に美味しい鶏を食べさせたい一心で心を配って育てあげた鶏だ。ぶつ切りにしても美味いがつくねはふっくらと柔らかくしかも食べ出があり、栄養もある。このつくね親子丼はおマチ婆ちゃんの愛情が食べ物に形を変えたものだ。だがお前はこのつくね親子丼のような人間の情のこもったものは食べることはできない。なぜなら誰もお前を愛さないからだ。このつくね親子丼のような情けのこもった料理を作ってくれる人間をお前は持ってない。お前は誰にも愛されていない。それは人間として敗北以外なにものでもない」「ぬうう」

そこに現れる海原。「金上、お前は私の赤絵大皿の偽物をゴドラムに渡した。私は外に出す作品には台帳を作ってある」「なに」「台帳にはその作品の特徴を詳細に記すと同時にいろいろな角度から撮った写真がある」「ぬう」「金上、台帳があるのを知らなかったのは迂闊だったな」「うぬ、見ておれよ」

金上はなんとかなりそうねと山岡に言う栗田。「問題はゴドラムね」「谷村局次長に聞いたら、明日朝一番で乗り込んで来るそうだ」「どんなことを仕掛けて来るのかしら」「今日は疲れた。晩飯は俺が作る。む、親子丼だ」「つくねじゃなくて、正統な親子丼を作ろうと言うのね」「ぬ。一風変わった親子丼だ」

あれと呟く栗田。「これカツ丼じゃないの」「れっきとした親子丼だ」「あ。もしかしたら」「このカツはトンカツじゃなく鶏肉で作ったチキンカツだ。一番の特徴は香りだ。普通のカツ丼は豚肉と卵を合わせるから他人同士の風味。でもこの親子丼は卵と鶏肉だからまさに親子の風味。しかも普通の親子丼と違って、鶏肉に衣をつけてカツレツに揚げてあるから香ばしさが立つ。普通の親子丼よりこくがある。でも鶏肉を使ったぶん、軽くてあっさりしている」「美味しいわ。カツ丼と親子丼のいいところを合わせた味よ。本当にチキンカツを卵でとじるって絶妙の組み合わせね」

呟く栗田。「この親子カツ丼を食べて、ゴドラムに対抗できる人間がいるのに気づいたわ」「誰だ」「海原雄山とあなた」「ぬ」「あなたと海原雄山が協力してゴドラムと戦うのよ」「ぬう」「この親子丼の味を考えて。鶏肉と卵。親子の組み合わせが素晴らしい力を引き出す」「ぬうう」