男の紋章 風雲双つ竜 | ロロモ文庫

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人を殺めないと言う誓いを破り、父である父庄三郎の仇である斎賀を斬った大島組の若親分の大島竜次は頼山寺で精神修養をすることを決意する。竜次の行方は知ってるが、誰にも言うことはできないと晴子に言う竜次の母で村田組の女親分である村田きよ。竜次が戻ってくるまで大島組の世話をすると答える晴子。風来坊の辰に竜次の行方を探せと命じる大島組の若者頭の雄造。

きよに話があると言う結城組の親分の結城。「明日の公会堂の入札の件だが、相場30万でできる仕事だが、40万で井沢に落とさせ、浮いた10万はうまくやろって話なんだよ」「……」「こいつはどうあっても聞き入れてもらわないといけねえ。お前さんがイヤだと言うと日本中の渡世人を相手にすることになることを忘れちゃいけねえ」「お話はそれだけでしょうか」あの建築場所は私の縄張りだと言う井沢。「何分よろしくお願いします」「考えるまでもありません。この話、村田はきっぱりお断りします」「そうか。まあいい。まあ。今晩ゆっくり考えてくれ」

どう見積もっても30万の工事だと若者頭の松川に言うきよ。「あの入札は明日村田組が30万で落とす」「そいつはいけねえ。降りてください」「今さら後へは引けない。30万でできる仕事を40万で引き受けては、旦那方に申し訳がない」「親分」「私はやる。日本中の渡世人を向こうに回しても」

竜次を探し当て、村田組が大変なことになっていると話す辰。大島組に戻り、俺には親分の資格はないと言う竜次。「俺には親分の資格はない。何も言わず黙って出してくれ」「何を仰る、若」「長い間、俺のような男によく尽くしてくれた。雄造。お前、組を引き継いでくれ」「若、あっしも組を出ます」「組を出ることは許さん」

なぜ戻ってきたと聞くきよに親父はいつも菊祭りの時は、菊人形を飾っていたと言う竜次。

「それが親父のたった一つの道楽でした。一つの菊人形を飾るためには、冷酷なまでに気に入らない花を切っていました。そうしなければできなかったからです」「なぜ戻ってきたかと聞いているんです」「お母さん。公会堂の工事を私にやらせてください。お母さんはこの工事に手をつけてはいけない」

大島組をどうするつもりだと聞かれ、私はもう大島組の人間ではないと答える竜次。「お母さんの息子として仕事をやりに来たんです」「私はお前に幸せになってほしかった」「自分一人の幸せが一体何になると言うんです」「……」「やくざの喧嘩ではないはずです。大切な工事です」「竜次。お前は渡世人の世界に戻ってはいけない」

そこに自ら大島組を破門になったと現れる雄造たち。「話では村田さんでは土方人夫を探してるとのこと。是非雇っていただきてえ」「……」「申し上げますが、決して喧嘩の腕貸しじゃござんせんよ」竜次に使ってあげろと言うきよ。「そして、うちの者も改めて今日からお前に頼みます」あっしたちの命を預けると竜次に言う松川。喧嘩をするのではないと叫ぶ竜次。「仕事をするのだ。誰から喧嘩を売られても我慢しろ。我慢することは死ぬより辛いことだ。この工事には村田と大島の命がかかっていることを忘れるな」

井沢組の度重なる嫌がらせに耐え兼ねた松川は、井沢の命を狙うが返り討ちに遭う。殺されたんだねと聞くきよに犯人はわかりませんと答える竜次。「7か所の刀傷を受けていました」「竜次。工事から降りてください。入札の時、松川はそう言いました。これ以上怪我人を出してはいけない。村田の顔がどうなろうと構わない」「お母さん」「松川は私の父が拾って育てた男です。私の弟のような男だった」

降りるのは簡単ですと叫ぶ竜次。「しかし、このまま手を引いたんでは奴らの横暴を許すことになる」「……」「母さん。この工事はやくざの縄張り争いと違う。ここで降りれば、井沢たちの思うままになる。松川一人の死だけではなくなります。父はいつも言ってました。負け犬になるな。正しいと思ったら戦え。人様のために死ね、と」「竜次」「私はやります。奴らがどんな妨害をしようと」

助っ人に駆けつけた加賀爪にそれは断ると言う竜次。「お前の親父ならそんなことは言わないぞ。それともこの加賀爪じゃ役に立たないとでも言うのか」「叔父貴。叔父貴は何が渡世です」「なに」「まさか喧嘩が渡世じゃないでしょう。村田もそうです。土木建築請負が本業です」「理屈じゃかなわねえ。井沢は腕利きを揃えていると言うのに」「叔父貴の気持ちは嬉しい。しかし喧嘩をすれば沢山の人が傷つく。罪のない町の人に迷惑をかける。どうぞ引き取ってください」「……」

井沢に直談判する加賀爪。「話し合いたいことがある。この喧嘩を俺に預けてくれないか」「今の老いぼれたあんたにその貫禄はねえよ。さあ、転ばないうちに帰りな」「村田にも十分言い聞かせて、お前の顔は立てる」「うるせえな、爺さん」「井沢。俺はガキの使いじゃねえ」「うるせえな。帰れ」カッとなって斬りかかる加賀爪をあの世に送る井沢。

加賀爪の叔父貴をやられても我慢しろと言うんですかと竜次に聞く雄造。「奴らの殴り込みを黙って待たねばならないんですか」「さっき結城の使いが来た」「なんですって」「午後3時におふくろと一緒に井沢のところで話し合いをしたいそうだ」「若。行っちゃいけねえ」「話し合いだ。誰もついてくるな。それからおふくろには知らせないでくれ」しかし、きよにそのことを話してしまう雄造。竜次を追いかけて狙撃されるきよ。

きよが撃たれたと竜次に話す雄造。「すぐ病院に行ってください」「彼らと話し合いの約束をした。約束を反故にはできん」「若。あっしが行く」「帰ってくれ、雄造。一生一度のわがままだ。おふくろを頼む」「親不孝はいけねえ。もう二度と会えねえかもしれねえおふくろさんだ。帰ってやっておくんなせえ」「……」「若」

一人で来たのかと竜次に聞く結城。「村田はどうした」「母は来れません。それはそちらさまもよくご存知のこと」「大島、話は簡単だ。あの工事から手を引いてもらいたい。どうだ。井沢の顔を立ててやっちゃくれないか」「お断りします」「大島、お前はいくつなんだ。少しは自分の格を考えろ」

拳銃をぶっ放す竜次。「俺は生きて帰る。貴様たち相手に犬死にはできん」「……」「硯と紙を持ってこい。早くするんだ」「わかった」「書け。今後一切、公会堂工事に関し、村田組と大島組に手出しをしないと」「わかった」「今日限り、我々はあなたたち渡世ときっぱり縁を切る。井沢さんの署名もお願いします」「わかった」

病院に駆けつけた竜次にあなたが帰ってくるまで、おばさまは手術を拒否したと言う晴子。「もし竜次さんが帰ってこなかったら、おばさまもここで死ぬ気だったの」竜次に夢を見てたと言うきよ。「父さんの夢を。母さん、父さんに叱られたよ。竜次、見せておくれ。父さんの紋章を」「……」「見せておくれ。手術の前にもう一度だけ見ておきたい」

諸肌脱いで、背中の竜の刺青を見せる竜次。「立派だよ、竜次。でも本当の男の紋章は背中に彫るもんじゃない。心で彫るもんだ。母さん、お前に白い肌のままでいてほしかった」「……」「これで思い残すことはない。よく帰ってきました。手術はお前に頼みます」「僕には自信がないよ。もう何年もメスを持ってない」「自信をお持ち。お前の父さんは強かったよ。母さんの身体で医者としての自信を取り戻しておくれ」「……」「竜次。お前は立派な医者なんだよ」竜次は見事にピストルの弾を摘出して、母の命を救うのであった。