作:雁屋哲 画:花咲アキラ「美味しんぼ(367)」 | ロロモ文庫

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失恋気分

墓地移転のために栗田は10日間の休暇を取ることになり、そのことを団に告げる。「へえ、お祖母さんを連れて田舎に。ちょうどいい。僕もお伴しますよ」「え、団さんが。それは」「僕の予定表とぴったり合うんです。心配はいりません」

羽田に行くために団の車に乗る栗田。それを目撃する山岡と近城と二木と田畑と花村。「まあ。団社長と栗田さんが」「そんなバカな。お祖母さんと田舎へ行くんじゃなかったのか」「団社長と旅行に行くのよ。それを誤魔化すために、お祖母さまとだなんて。栗田さんも思い切ったことをするわね、山岡さん」「ぬ、ぬう」

山岡に命令する大原。「マスコミ関係の経営者が集まって作った言論改新会の朝食会の幹事の当番が私に回ってきた。当番の義務として朝食のメニューを考えなければならん。朝食と言っても、討議の邪魔になるようなものでは困る。と言ってサンドイッチみたいなつまらないものを出したんではバカにされる。来週までに朝食会のメニューを考えるんだ」

栗田がいなくて調子の出ない山岡は、カツカレーや湯豆腐やホットケーキを作って、大原を激怒させる。「山岡はいったいどうしたんだ。仕事を頼んだのにトンチンカンなことばかりする。栗田君はどうした。栗田君がいればこんなことにならぬはずだ」「栗田君は今日休暇から戻ってきて明日から出社する予定ですので、明日から山岡の作業に協力出来るはずです」「そりゃよかった」

そこに祖母のたま代と現れる栗田。「ただいま」「あら、出社は明日じゃなかったの」「みんなにお土産を買ってきたの。今日中に食べてもらおうと思って、途中で寄ったのよ」「あ、ゆう子、団さんの分まで残しとかなきゃダメよ。行きに羽田まで送っていたんだから」「え、羽田まで?」「ええ。お食事にした時に田舎に行くと話したら、団さんがちょうど同じ日に羽田から出張に行くからと送ってくださったの」「まあ。そうなの」「栗田君。君がいない間に山岡は大原社主に仕事を言いつかってね。それが全然うまくいかないんだよ」「まあ、どんな仕事なんですか」

岡星に行く山岡と栗田とたま代。「へへえ。朝食会のメニューねえ。贅沢な注文をつけるもんだねえ」「そこよ、山岡さん」「え」「社主の階層の人たちは、物質的な贅沢には慣れていて感動しない。中味の心の贅沢に感動するのよ。この間、おチヨさんに作ってあげたパンケーキ入りスープなんかピッタリじゃない。材料も見た目も質素。でも中味に払われている心配りの贅沢さ」「むう。でもあれは俺が作ったスープじゃない」「どうして、そんなことにこだわるの」「心配しなくていい。あのパンケーキスープに匹敵するものがある」

朝食会にスープを提供する大原。「はて。と言うことは、このあといろいろな料理が出るのかな」「朝食会のメニューは討議の邪魔にならぬものと取り決めがあったはずだ。スープで始まるコースメニューとは面倒な」「ご安心ください。お出しするのはスープだけです」「ぬう。スープだけではあまりに貧弱、腹は減っては議論が出来ん」

「スープの中味にご注目ください」「これは?真ん中の生卵の黄身はわかるが」「パンです。濃いめに味をつけたコンソメスープにパンをちぎって入れ、生卵の黄身を浮かべてあります。生卵の黄身は潰して、よくかき混ぜてから召し上がってください」

「おう、なんとも優しい味」「コンソメ、生卵、パン。どれもありふれた材料だが、こうして合わさると実に豊穣そのもの」「胃に優しいが、いかにも力がつくと言った感じだね」「これなら腹にもたれず、しかも討議する力も出る。最高の朝食だよ」「東西新聞さんに一本やられたな」「外見は質素。しかし込められた心は贅沢。それがこのパンにスープです」

そうだったのかと喜ぶ近城。「団社長は単に羽田まで栗田さんと一緒に行っただけなんだね。よし、勝負はこれからだぞ」むっとする二木。「栗田さんと団社長が出来ていれば、私はやりやすかったのに」近城に言い渡す山岡。「近城さんと栗田さんとうまくいくように俺が協力すると約束したけど、あれは取り消すぜ」「え。男の約束だろ」「もう期限切れだ」