太陽の墓場 | ロロモ文庫

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真夏の大阪のバラック街には人間の欲望をむき出しにして生きている人たちが住んでいた。花子は元衛生兵の村田を組んで、人間の血を売買するビジネスを始めていた。血をしこたまとられた動乱屋は村田を非国民と罵る。「わしも大日本帝国の軍人じゃった。今や旧軍人は集結する時だ。ソ連は日本を苦しめる。この国難を何とみる」「さっさと行きやがれ」

女だてらにええ商売しとるな、と花子をほめる動乱屋。「ふん。おっさん。この血はな、化粧品にも化けるんやで。血ゆうたら輸血しか考えんやつは時代遅れや」動乱屋に組まないかと持ちかける花子。「ええ金になるのかいな」「そら、おっさんの腕次第やで」

花子は愚連隊の信栄会のヤスを手先に使って、血液提供者を探していた。ヤスたちはぶらぶら歩いていた気の強い辰と気の弱い武を、信栄会に入れる。信栄会の会長は信という冷徹な男で、副会長のマサは娼婦の管理をする血も涙もない男であった。

夜、若い男と歩く花子に声を掛けヤス。「昼は血で、夜は体で大車輪やな。どや、養うてくれんか」「あほくさ」信栄会はこの一帯を縄張りにする大浜組に目の仇にされており、揉め事があるとしょっちゅうドヤを変えていた。武にあんた新入りかと聞く花子。「ノンビリした顔しとるな。そんなんで仕事務まるんか」「そのうち慣れるわい」「はは。あんた長生きするで」

お前、花子と何やっとるのや、とヤスに聞く信は、ヤスの耳に煙草を押し付ける。「お前が花子と昼間コソコソやっているの、わいが知らんとでも思うのか」「すんまへん。ずっと前小遣い稼ぎで血売ったんや。それから花子の手伝いを」ヤスをしばき上げる信。目を覆う娼婦ののぶ子。

ゴミ拾いのヤリとケイマの住む家にいつく動乱屋。手榴弾をヤリとケイマに見せつける動乱屋。「これ一発で寄せ屋一家は全滅やな」「なんでそんなもん持ってるんや」「お前らなんちゅう能無しや。集めたゴミはみんな寄せ松に持って行かれて、寄せ松に搾取されてるのがわからんのか」寄せ松に真面目に働けと言われ、俺は血で食ってるんじゃと答える動乱屋。どいつもこいつも働く気がないんや、と文句を言う寄せ松。「こんなんじゃ日本も終わりや。けったくそ悪いのお」ゴミ屋のバタ助はアル中で不能になっていたため、バタ助の女房のちかは朝鮮人のゴミ屋の寄せ平を家に引っ張り込んでいた。

怪我をしたヤスを見て、どないしたんやと聞く花子。「お前とのことがばれて、信にこないな目に会わされたわい」「なんやて。うちらのこと信栄会に言うたんか。アホ。スカタン。このことは信栄会にも大浜組にも内緒にしとったのに」「……」「信栄会のドヤはどこや」「信と組むんか」「台無しにされるよりましじゃい。なあ、ヤス。お前、大浜組に紹介したろか。うち、知りあいがおるんや」

花子をドヤに連れて行く途中で、ホルモンを運ぶ武と会うヤス。「よう。食堂の小僧やっとるんか」「……」「知ってるはずや。いったん組に入ったら抜けられんことは」武を蹴飛ばしホルモンを顔にかけるヤス。はははと笑う花子は、一緒に来いと武に言う。「うち、信に用事があるさかいに、一緒に行って話したるわ。信栄会に戻り」「いやや」「アホ。なんぼ逃げたかて、あんな目に会うだけやないか」

武とヤスと一緒に信栄会のドヤに行く花子。信は花子の顔をたてて武に焼きを入れるのは勘弁すると言う。「花やん。おもろい商売しよるらしいな」辰と武は公園で学生のアベックを襲い、武は棒で殴って男子生徒を眠られ、辰は男子生徒の持ち物を盗むと、女子生徒を犯す。辰のやつ、あんなことしよると花子に言う武。

花子に説教をする動乱屋。「我々とお前の血の売る目的は違うぞ。我々は大日本帝国のために血を売るが、お前はせいぜい不良と泊まるホテル代に使うのがオチだ。今日から分け前は我々が七分、お前が三分ということにする」「聞いてあきれるわ。トルコ風呂でも行って目の垢洗うてこい」「今にソ連が攻めてくるぞ。その時我々は銃で戦うんだ。我々はその銃を買わねばならん」動乱屋の手下になった村田やヤリやケイマは動乱屋に従うと言う。うちはおりるで、と言う花子。「どっか新規で始めるわ。覚えとき」

花子は信に頼んで、村田の採血施設を滅茶苦茶にし、村田をバラック街から追い出す。花子に滅茶苦茶にされた採血施設を色眼鏡に見せる動乱屋。「ここで非公認の血液銀行をしてたんです。重要な資金網の一つだったのに」「なるほど。ここに文無しのルンペンどもを集めてたわけか。なに、私の仕事を忠実に手伝えば、こんなインチキ銀行の百倍はわけないよ」「それで戸籍を買ってどうなさるんですか」「秘密やど。亡命してきよる第三国人に日本人の戸籍を売るんや」

花子は色仕掛けで医師の坂口を仲間に誘い込み、信と組んで血を売るビジネスを始める。ヤスに用心しろと信に言う花子。「大浜に身売りする気やで」武はアベックの男子生徒が恋人を犯されたショックで自殺したことを新聞記事で知る。

ええ男がしけた顔して、と武に話しかける花子。「死んだんや。あの時の男が」「公園のか」「俺は人殺しや」「自分の女が強姦されて死んだんか。そんなふやけた男は生きても死んでも一緒や。うちが男やったらやった男を叩き殺してやるわ。誰が自殺なんかするかい」「俺はどっか行くわ。信栄会には戻らんで」「どこ行くんや。どこ行っても焼き入れられるんがオチや」

武はのぶ子に金を渡す。「これでうどんでも食べ。お前、稼ぎが悪いからロクに食べさせてもらっとらんのやろ」「そや」「はよう逃げ」「あかんわ」「ヤスさんと逃げたらどうや」「なんでヤスさんと逃げなあかんのや」「なんや、そんな気がしたんや」バタ助は動乱屋と色眼鏡に戸籍を二万円で売る。戸籍が売ったことがあんたの口からばれたら、あんたは生きてられんで、とバタ助を脅す色眼鏡。

花子は血を売った金を前借りに来た大男と飯屋に言う。そこでバタ助が飲んだくれていた。わいは北海道行くで、と騒ぐバタ助。「わいはもう人間やないんや。宇宙人や。宇宙人間や」ほうか、と答えるちか。「ならもう帰ってくるなよ」仮にもお前の父ちゃんやないか、とちかに言う寄せ平。「もっと丁寧な言葉使わなあかんよ」

お前、ちかとやりおったな、と言うバタ助に、サービスやないかと答える寄せ平。「勤労奉仕よ」寄せ平に挑みかかるバタ助につまらんことするな、と言う動乱屋。「お前、北海道行くんやろ。そこで真面目に働いたらそのうち戦争が起こる。世の中が変わる」嘘つけ、と毒づく花子。「戦争なんか起こるかいな」

世の中変わらへんよ、と言う寄せ平に、変わるわい、と怒鳴るケイマ。「戦争起こらんとわいらどないにもならんやないか」わいは北海道行くど、と怒鳴るバタ助。「今日はワイの送別会や。ルンペンども、今日はわいがおごっちゃる。わいについてこい」

信は人集めするのが俺たちで、血取るのが医者で、花子は何もしてないから、稼ぎの二割だけ花子にやると言う。「二割で多いくらいや。それに坂口さんも本気になってやってくださるから三割はやらんといかんな。それであと五割が信栄や」それが嫌ならあんた自前でやれや、と花子に言う坂口。「色仕掛けでな」花子に俺と一緒に寝ろという信。「だったら少しは考えてもええで」「わしかてもういっぺんお願いしたい心境やな」

花子と喧嘩別れしたマサに話す信。「そうするとあいつヤスたぶらかして、大浜組にこっちのドヤ教えるかもしれんな」「ヤスのやつ、のぶ子が病気になって、妙にそわそわしだした。それにしても、またドヤ替えやな」武はヤスとのぶ子に一緒に逃げろと言う。二人は逃げ出すが、すぐに見つかり、ヤスは頭をかち割られて死ぬ。道端に投げ出されたヤスの死体から金目のものを奪い取る寄せ平。

バタ助は首を吊って死ぬ。ほんまにろくでなしや、稼ぎは全部飲んで、うちの面当てに死によって、と毒づくちか。俺の言うことをきかんと、みなソ連に攻められて首吊って死ぬぞとルンペンたちに言う動乱屋。バタ助はいい人やったと泣く大男。「俺に金くれたんや」その金はうちの金やと大男につかみかかるちか。新入りの女たちに信栄会にいっぺん入ったら絶対抜けれへんぞ、と言うマサ。「あいつがええ見本や」あざだらけの顔で、そうやで、と言うのぶ子。

動乱屋は寄せ松の子分たちに、早く寄せ松と手を切って戦争に備えろと説得する。お前、信栄会イヤになったんとちゃうか、と武に聞く信。「そうでもないで。信さんはいろいろ気使って大変やし。そやけど、ヤスは殺さんでもよかった思うわ」「しょうがないんや。ほっといたら俺が大浜組にばらされるだけや。ちょっとでも動くのやめたら、それでおしまいや」「ほんなら、信さんコマみたいなもんやな」「なんや、それ」「止まったら終わりや」

ケイマは花子になんで食ってるんやと聞かれ、三国人のために戸籍買うとるんや、と口を滑らす。動乱屋に例の商売始めるかと持ちかける花子。「あの血液銀行はお前のために無茶苦茶や。それに村田の奴、姿を消しおった」「うち、村田見つけたんや。立ちんぼしとるとこ知ってるんや」「なら、またお前と組んでやるか」

血を売りはじめて、またわいらの時代やと喜ぶ村田であったが、信栄会がいちゃもんをつけにくる。動揺する村田に、攻撃は最良の防御やと言う動乱屋。「誰が攻撃するんや」「ふん。みんな弱そうやな」うちが大浜組に頼んでくるという花子。

花子は公園で武と会う。そこに女がやってくる。「あの女や」武と花子は女に家に帰ろうと言うが、女はナイフで武を刺そうとする。花子は女を崖下に突き飛ばして武と逃げる。「あんたともいよいよお別れや」「なんで別れなならんの」「あんたと会うてるとろくでもないことがない気がする」「なんでえな」「死んだヤスのことだってそうや」「あんた、うちに文句があるんか」「文句はないわな。いややな、あの女の顔がちらちらしよる」「言わんといて」

安ホテルで抱き合う花子と武。「帰るわ。信に文句言われるさかい」「今。ドヤはどこやねえん」「双葉通りや」大男の戸籍を買った動乱屋と色眼鏡は大男に九州の炭鉱に行ってこいと命令する。

武は辰に一緒に信栄会をやめないかと持ちかける。「なんで、やめなあかんのや。どうやって飯食うんや」「……」「ほな、勝手にやめ。そのかわりお前とは縁切るで」「一緒にやめよう」「あほ」「一緒にやめよう」「しつこいな」ナイフを振り回す辰。そのナイフを奪って辰を刺してしまう武。

辰を殺してしまったことを花子に言う武。「誰も見てなかったら何もなかったと同じや。あんたさえ黙ってれば平気や」「辰は小学校から一緒やったんや」「あほ。死んだ奴は死んだ奴や。用はないわ。武、今頃信栄会に大浜組は殴り込みかけとるんやで。信栄会は潰れてしまうんやで」「あんたがドヤ教えたんか」

花子を殴る武。「どこ行くんや」「信さんに会いに行く」「無茶や。殺されてしまうで。そんなことでこの世の中生きられるかい」「花やんみたいせえ言うんか」「……」「それだって大したことないやないか」「殺られてしまうよりマシや」「同じこっちゃ」

信は大浜組の殴り込みを受けて、俺以外は全員やられたと武に言う。「畜生。どいつがドヤばらしよったんや」花子を見つける信。「あいつや。あいつがドヤばらしよったんや」逃げる花子を追う信に追いすがる武。「信さん、やめてくれ」「お前、花子と寝たんやろ」「……」「ドヤばらしたのもお前やな」線路の上で武を撃つ信。信の足にしがみつく武。二人の上を列車が通過する。即死する二人。

飯屋で酒を飲む花子。俺は明日東京に出るという動乱屋。「生意気な学生どもをどやしつけてやる。世の中変わるぞ」動乱屋にほんまに世の中は変わるんかと聞く花子。「どないに変わるんや」「お前みたいなズベ公に何がわかるんや」「言え。言うたれ」「昔の大日本帝国みたいに」「昔やの、大日本帝国やの、うちにわかるかい。どないに変わるんや。もっとマシになるんか。ここにおるルンペン野郎はみなおらんようになるんか。どや」

そこに大男が入ってくる。なんで帰ってきたという動乱屋と色眼鏡に、やっぱり帰ってきた、もらった金はもうないと答える大男。「なんや、動乱屋。何の金や」動乱屋と色眼鏡は人買いやと言う花子。「文無し野郎からはした金で戸籍を買いよるんや。それを三国人に高う売りつけてピンハネするんや」ほんなら俺は誰や、とうめく大男。「動乱屋。バタ助のも買うたんやろ」「わかった。それでバタ助は首吊ったんや」

動乱屋と色眼鏡は飯屋を逃げ出そうとするが、ルンペンたちに追われる。それがきっかけになってバラック街で暴動が発生する。「やったれ。やったれ。みんなぶち壊せ」あたりは収拾のつかぬ騒ぎになり、ルンペンたちは殴り合いをし、バラック街に火がつけられる。「やれ、やれ、やらんかい」「何してけつかる。何もかもおしまいや」畜生、と言う動乱屋。「手榴弾やぞ。みんなくたばれ」手榴弾は爆発し、バラック街は炎上する。

全てが終わり、終戦の時とそっくりや、という村田。花子は村田の手を引いて歩き始める。「そやな。商売、商売」