博徒列伝 | ロロモ文庫

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昭和初期。刑務所に服役中の若松に面会する川田とのぶ子。「これが親父さんの遺言状だ。ここに書いてある通り、親父さんは大木戸一家の二代目を兄弟に継がせる気だったんだ」「兄弟。俺は出所まで二年はかかる。形だけ襲名しても実際に仕切るのは兄弟だ。これにも俺がダメならあんたが跡目になるよう書いてある。兄弟が二代目を継いでくれないか」

「とんでもねえ。大木戸一家を支えてきたのは、あんたの力だぜ」「俺の取り柄といえば喧嘩だけだ。それが証拠にこのザマだ。お嬢さん、二代目を継げる男は川田以外いねえんです」「……」「兄弟、俺はあんたの下で鉄砲玉でもなんでもなるぜ。立派な大木戸の二代目になってくれ。お嬢さん、兄弟が二代目継いだら早く祝言あげて、いい姐さんになってくださいよ」

それから三年。金光とその弟の次郎が率いる全員人殺しの前科を持つ監獄一家が、大木戸一家で若松が親分を務める若勇組の仕切る浅井建設の工事の縄張りを狙って、えげつない嫌がらせを繰り返していた。喧嘩を買う態度をとる若松にどうして俺に相談しないと言う川田。

「お前は事を荒立てていけねえ。たかが愚連隊と言っても話がでかくなるかもしれねえぞ」「……」「なあ、若松、俺とお前は確かに昔は兄弟分だった。が、俺が二代目継いだ時、きちんと親子の盃に直したはずだ」「え、ええ」「それにしちゃあ、お前の最近してることは、ちょいとやり過ぎじゃねえか」「……」

「なんでも喧嘩で片をつけようってのは、お前の立場ならいいが、大木戸の金看板背負ってる俺の立場だとそうはいかねえんだ」あの人は二代目になっていろいろ気苦労が多いんです、と若松に言うのぶ子。「ああは言っても、頼りにしてるのはあなただけなんです。よろしくお願いしますね」「わかってます」

監獄一家の嫌がらせは続き、怒った若松一家の輝と伊太八は次郎を生け捕りにする。そんな折り、関東で勢力を誇る甲田組の甲田が川田に話があると言ってくる。甲田の指定する料亭に行った川田と若松はそこに金光がいるのを見る。金光は俺の身内なんだという甲田は、川田とサシで話したいと言う。甲田は若松の相手を人斬りで有名な流れ者の三次に託す。

金光には手を焼いているが盃をやった手前ほうっておくわけにはいかない、と川田に言う甲田。「どうだろう。浅井建設の下請けをあいつらにやらせてくれなか。その代償と言っちゃなんだが、俺は今後お前さんと兄弟分の付き合いをさせてもらうつもりだ」「それは願ってもない話だが、若松の言い分を聞かないと」「若松か。大木戸一家は喧嘩屋で持っているって話だが、そのとおりらしいな」「……」「これからの渡世人は喧嘩一本で食えるもんじゃねえ。付き合いの上手下手だ」

緊迫した雰囲気を醸し出す若松と三次であったが、そこに喧嘩芸者として名高い勝弥が入ってくる。そっちも喧嘩屋さんだぜ、と若松を勝弥に紹介する三次。「お前さんとはいい勝負になりそうだ」「大木戸一家の喧嘩屋さん。喧嘩が忙しくって、男やもめなんですって」「姐さんも喧嘩の仲裁ばかりしてると、行かず後家になるぜ」行かずやもめはここにもいるんだがなあ、と呟く三次。

次郎を自由にして、金光たちに浅井建設の下請けをやらせることで話がついた、と若松に言う川田。「それじゃ奴らの言いなりになったのか」「そうじゃねえ。その代わり、甲田を俺と兄弟つきあいすると言った」「あいつらの絵図は読めてる。先々芝浦は東京の表玄関になる。その時の利権を得たいために、甲田は監獄一家を使って楔を打ちに来てるんですぜ」「どうしろと言うんだ。甲田一家を向こうに回して喧嘩でもやろうってのか」

「力で来る奴には力で押し返すしかねえんだ」「喧嘩をすると若い者だって命を捨てなきゃならねえんだ。折角向こうから兄弟つきあいしてえと言っているんだ。今度の騒ぎを治めるには甲田と手を握るのが近道だ」「この渡世で一度なめられたら終わりってことは、あんただってよく知ってるだろう」「俺はなめられたわけじゃねえ。大木戸の金看板背負ってるのは俺なんだ」

これから関東を治めるには大木戸のシマはどうしても手に入れなきゃならねえ、と金光と次郎に言う甲田。「だが俺が顔を出すことができないから、お前たちを使ったんだ。もうドジは踏むなよ」「へえ、わかりやした」若松に一目ぼれした勝弥は、若勇組に乗り込んで女房気取りで掃除をする。お姐さん、親分にホの字ですね、という伊太八の尻を蹴りあげる勝弥。

監獄一家は浅井建設の下請けを始めるが、ピンハネの限りをつくし、人夫いじめをする。怒った人夫の一人が大暴れするが、それは会津の小桜という有名な侠客であった。お前さんほどの遊び人がなぜ浅井建設で働いているんだと小桜に聞く若松。「わけがあるんじゃねえか」

世話になった兄貴を家に引き取って面倒みていたが、兄貴の具合が悪くなり療養所に入れることになったと言う小桜。「しかし、俺には金がなかったんです。見かねて女房のおくみが俺の男を立てるために、身を売って女郎になったんです」「そうだったのか」「ええ、てめえに愛想がつきて、これを機会に足を洗って、一日も早く女房を迎えに行こうと」「やくざが足を洗えるのはよっぽどうまい潮時がねえとダメだ。今のおめえさんならできる。出過ぎたことのようだが、おかみさんの借金は俺にまかせてくれねえか」

小桜の借金を返すため甲田組の賭場に伊太八を引き連れていく若松。そこに勝弥を連れて三次が入ってくる。勝弥にこの勝負は絶対親分は負けられないんですよ、と囁く伊太八。博奕の腕に一日の長がある三次は、若松を窮地に追い込むが、最後にわざと若松に勝ちを譲る。三次にありがとうと微笑む勝弥。若松は小桜に渡すようにと儲けた金を伊太八に渡す。

若松に熊手を買ってもらって浮かれる勝弥は、熊手を振り回して甲田一家と兄弟分の富士上一家のガン鉄の頭にぶつけてしまう。それがきっかけで若松とガン鉄は喧嘩になってしまい、ガン鉄に瀕死の重傷を負わせた若松は留置所送りとなる。警察署長は手をうて、と富士上と若松を会わせる。一目見て、お互いに男と男であることを感じあう若松と富士上。

若松が釈放されると金光に伝える甲田。「あいつは今夜は丸腰だ。こんな機会はまたとないぞ」釈放された若松と対峙する富士上。「若松。サツの仲立ちで和解したとなっちゃ、渡世仲間の笑いものだ。今日はお前が丸腰だから我慢するが、このケリは必ずつけるぜ」「当たり前だ。いつでも来い」

若松を出迎えに来た伊太八とともに帰路につくが、監獄一家に襲われ、その結果、伊太八は命を落とす。川田に甲田と手を切ってくれと頼む若松。「そして俺の手で監獄一家を叩き潰す。そうすりゃ甲田も諦めるはずだ」「なんべん言ったらわかるんだ。喧嘩で血を見るのは若いもんだ。お前が甲田と富士上に詫びを入れれば、事は収まるんだ」

「どうしてもわかってくれなきゃ、俺は自分の手で金光を叩くぜ。伊太八の落とし前もつけてやらなくちゃならないからな」「俺は承知しねえ」「二代目。大木戸一家はあんただけのものじゃねえぜ」「なんだと。てめえは喧嘩屋とおだてられていい気になりやがって。相手は関東一の甲田だ。なんで分別できねえんだ」

「何を分別しろと言うんだ。相手が誰であろうと筋を通すのが任侠道だろう」「お前はもともと俺がのぶ子と一緒になって二代目を継いだことが不満なんだろう」「情けねえことを言うんじゃねえ」「今はお前のような浅はかなやり方は通用しねえんだ」「何を意気地のないことを」

「意気地がねえとはなんだ。わかった。やりたきゃ勝手にやれ。その代わりお前は破門だ。この場でお前を破門にしてやる」そいつはあんまりだ、と言う大木戸組の代貸の政吉。「考え直してください」「お前が口出しすんじゃねえ」立ち去る川田。伯父貴、すまん、と首をたれる政吉。「代貸のあっしが到らないばっかりに」

甲田に若松ともめた話は知ってるな、と聞く富士上。「俺は俺なりにあいつとケリをつけるつもりでいた。だが昨夜は奴は丸腰だから手を出さなかった。それを金光が襲って、あそこの若い衆が一人殺されたと言うじゃないか」「……」「若松は俺が金光を躍らせて小汚い手を打ったと思ってるに違いねえ。それでは俺の顔に泥を塗られたも同然だ。ここは兄弟に金光にきっちり話をつけてもらいてえんだ」「いいか、喧嘩を売ってるのは若松なんだ。俺は大木戸の二代目と盃を交わす腹でいるんだ。金光もその縁で浅井建設の下請けをしている。それを喧嘩屋の若松がごねて、無茶苦茶にしてるんだ」

「その話は俺も聞いているが、そんな綺麗な話じゃないようだぜ」「妙な言い回しをされては困るが、現に大木戸の二代目も困って、若松を破門にするそうだ」「破門?」「そうだ。なあ兄弟。一つ金光に腕貸して、喧嘩屋を始末してくれんか」「俺は金光みたいな野郎のために名前貸すのもごめんこうむるぜ。兄弟、いい加減あんな愚連隊上がりと手を切らないと、俺もお前さんとの付き合いを考えねえといけなくなるぜ」「……」

伊太八の墓の前で、輝たちに今日かぎりで俺のところを出て行ってくれと頼む若松。「水臭いこと言わないでください。俺たちは盃貰った時からずっと一緒です。第一、金光をあのまま放っておくんですかい」「……」そこに現れる富士上は前のしこりは水に流してくれと若松に頼む。

「金光みたいな野郎がでしゃばった真似をして、俺も腹の中が煮えくり返っているんだ。実は今日来たのは金光のことだ。甲田が金光を大木戸組から手を引かせるって言ったんだ」「金光が手を引く?」「これは俺のメンツにかけても、二度とあいつらに汚い真似をさせないと約束する」「富士上の。ありがとう。恩に着るぜ」「大木戸の二代目が破門状を流すそうだな。このことは時期を見て、俺が二代目に話す。俺に任せてくれ」「すまねえ」

大木戸のシマから監獄一家はいなくなるが、若松は破門になる。ぶらりと現れた小桜にかみさんに会えたかと聞く若松。「おかげさまで。親分さんも大変だったそうで」「俺も裸一貫になってしまってな。今じゃ飯屋の二階を間借りしてるんだ」おくみは肺炎で死にました、と若松に伝える小桜。「お前さんは綺麗な世渡りで生きていくんだ。こんなことで負けちゃダメだぜ」「ええ。バカはバカなりにこれから生きていくつもりですよ」

三次に長い間御贔屓にしていただいてありがとうございました、と言う勝弥。「わたし、芸者をやめるんです」「やめる?そうか、とうとうあいつに盗られちまったか。おいら、お前さんが幸せになってくれればいいんだ。喧嘩屋によろしく言ってくれ」

川田と甲田は兄弟分の盃を交わすが、甲田は大木戸の縄張りは俺と盃交わしている大野木に任せてくれと言い出す。「金光もいないし、若松もいないから人手不足だろう」「兄貴。そんな心配いらねえよ」「大木戸。俺がそうしろと言ってるんだ。兄貴分の俺に逆らうのか」「兄貴。兄弟の盃と引き換えに、大木戸の縄張りを渡せって言うのかい」「そうだ。お前のような男は頼りにならねえ。俺が仕切ってやる」激怒した川田はこの盃はなかったことにしてくれ、と盃を叩き割って席を立つ。金光を呼べ、と大野木に囁く甲田。

夜道を金光兄弟に襲われる川田。「お前は破門した若松にばらされる。その敵討ちに俺たちが若松を始末。どうだい。泣けるようないい話じゃねえか」若松のいる飯屋に監獄一家が襲撃し、若松は襲撃を交わすが、小桜は命を落とす。瀕死の状態で屋敷に運ばれた川田を、手を握ってくれと若松に手を差し出す。「二代目。何も言うんじゃねえ。わかってるよ」「大木戸を頼んだぜ」絶命する川田。

すくと立ち上がる政吉を呼び止める若松。「伯父貴。見逃してください」「待たねえか」「口惜しいんですよ。俺は」「俺も口惜しい。でも一番悔しかったのは川田だろう。川田は大木戸の金看板守るためにどれだけ辛抱してきたか。そのことはお前が一番よく知ってるはずじゃねえか」「でもこのままじゃ」「甲田と金光は俺が殺る」「頼みます。男にしてやってください」「政吉。お前が行ったら後はどうなるんだ。お前が大木戸の三代目を立派に継いでこそ、川田は成仏できるんだぞ」「伯父貴」

川田の見舞いに現れた富士上は、殺ったのは甲田と金光だ、と若松に言う。「これを受け取ってくれ」斬った小指を差し出す富士上。「若松。甲田は俺が叩き斬る。俺の取る道はそれしかねえ」「骨身に染みるほど嬉しい。だが、それをお前さんにやらせたら、渡世の仁義が立たないんだ」「よし、わかった。お前さんの邪魔はしないよ」勝弥は若松に「待ってろと言って」と頼むが、若松は何も答えず、輝たちを引き連れて白装束で、甲田の元に殴り込みに向かう。

監獄一家を血祭りにあげる若松たち。富士上は甲田の助っ人に駆けつける大野木一家の前に立ちふさがる。「お前さんたちをここを通すわけにはいかねえ。ここを通すと渡世の義理が通らなくなるんだ」三次は若松と対峙する。「親を守るのは子の務めだ。喧嘩屋。お互いに嫌な渡世だな」

三次の腹にドスを突き刺した若松は、渾身の力で甲田を叩き斬る。三次を抱き起す若松。「しっかりするんだ」「喧嘩屋。俺は今度生まれる時は兄弟分になりてえ」「何を言ってるんだ。俺たちはたった今兄弟分だ」「嬉しいこと言ってくれるねえ」「死ぬんじゃねえ。死ぬんじゃねえぞ」三次を抱えて歩く若松の前に血まみれで現れる富士上。「若松」「富士上」