怒れ!力道山 | ロロモ文庫

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赤い恐竜と呼ばれるハンス・メッガーと試合をすることになり新聞記者の取材を受ける力道山。「アメリカでハンスと試合をしたときの結果は?」「わしの負けだ」「しかし、それは力さんがプロレス成りたてのころの話だ。今度は大丈夫でしょう」「いや、やってみないとわかりませんよ」

彦島市の市会議員で興行もやっている赤岩が、是非彦島市で試合をしてくれと力道山に頼む。「私は民友党の大橋代議士と懇意にしているものです。そして私は市民のために体育館を作りました。そのこけらおとしに是非あなたに」「私は大相撲時代、大橋先生に大変お世話になりました。その先生のお口添えとあれば何としてもご期待に応えたいのですが、もうすぐ試合が」「しかし、まだ試合まで二週間あります。たった一日ぐらいいいじゃないですか」

力道山のもとに貫一少年が現われ、一度友達の晃に会ってくれと頼む。「晃ちゃんが小児麻痺で歩けないんだ。それで一度も力さんを見たことがないんだ」貫一とともに晃の家に行く力道山は、歩けない晃を見て胸を痛める。貫一に晃はまったく歩けないのかと聞く力道山。「少しは前は歩けたんだ。でも表の通りでトラックにはねられそうになって、姉貴の悦ちゃんが歩いちゃいけないって言ってるんだ」

翌日、力道山は付け人の阿部を連れてまた晃の家に行き、晃にプレゼントを渡す。「晃ちゃん、今度はおじさんの試合を見に来てくれるかい」「うん。通りのラジオ屋まで行けるとテレビ見れるんだけどな」「元気を出すんだな。病気に負けちゃダメ。どんなつらいことでも勝とうとしなきゃ。晃ちゃん、まず立って歩こうとしてごらん。前にはできたんだから」

力道山は晃を歩かせようとするが、それを見て驚く晃の姉の悦子。「何てことするの。あなたは何よ」「わしは力道山です」「そんなこと聞いてるんじゃないわ。あなたはこの子の何だっていうの。何の権利があって無理に立たそうとするの」「そのう」「あなたにこの子の何がわかるんです。面白半分になぶり者にしないでちょうだい」「……」「あなたにはわからないでしょう。小児麻痺の弟を持った人の気持ちなんか」「いや、だからこうして見舞いの品を持って」「こんなもの持って帰ってください。私たち貧乏人はお金持ちの道楽の施しを受けたくないの」

力道山は晃の様子を見てこいと阿部に命令する。記者の秋山とともに晃の家に行く阿部であったが、もう来ないでと言ったでしょうと悦子に叱られる。「いえ、先生が晃ちゃんの様子を見てこいと」「先生って力道山?あんなゴジラも雪男も顔負けって男に小児麻痺がどんな病気かわかるって言うの」

あなたにはみなわかるのかと悦子に聞く秋山。「わかるつもりよ。あの子が三歳の時に小児麻痺になって以来、私が母親代わりであの子の面倒を見てきたんだから」「それならなぜ晃ちゃんの立ちたいという気持ちを抑えるのよ」「……」

そうだよと秋山に助勢する阿部。「あんたは晃ちゃんの立ちたいという気持ちがわからないんだ。わしらはただ見舞いに来ただけなんだぜ。晃ちゃんがなかなか立てないのは病気のせいばかりじゃないんだぞ。わかってんのか」僕は立って歩けるようになりたいんだと悦子に訴える晃。反省する悦子。

彦浜市に行き、宴席に出席する力道山は大橋と会う。「先生はいつこっちに」「数日前だ。国会も解散になるんで、選挙区詣でって奴だ」一杯どうだという赤岩に明日の試合があるのでと断る力道山。「そんなに四角張るな。明日の試合と言ったって、だいたいプロレスってものはスポーツじゃなくてショーでしょうが」それを聞いて顔色を変える力道山。「わしはプロレスをスポーツと思ってやってるんです」

赤岩を許してくれと力道山に頼む大橋。「この男は悪い男じゃない。今度の興行だって、この土地の身体障害児童の施設のための慈善興業にしようと言うわけなんだ」「そうですか」「非常に結構なことなので、わしも口添えしたんだ」「よくわかりました」宿舎に帰る途中で数人の男から乱暴を受ける老人を助ける力道山。

翌朝、砂浜でトレーニングする力道山のところに康子という娘を連れて現れるカメラマンの房子。昨日は父を助けていただいてありがとうとございましたと力道山に礼を言う康子。「お父さんって」「昨日、力さん、ギャングからご老人を助けたでしょう。この人、私の友達でお父さんは愛光学園って身体障害児のための施設をやってるの。ねえ、あんた、愛光学園と赤岩の関係を知らないの」「知らないよ」

説明する房子。「愛光学園は戦前米川さんが作った身体障害児のための学校なの。ところがこういう施設に対する国家の予算なんて雀の涙で、米川さんも最近は相当経営が苦しいの。そこに赤岩が目をつけたの。潰れそうな施設を食い物にしてあくどいことをやってるそうなのよ。昨夜米川さんを襲ったのも赤岩が襲ったギャングじゃないかと思うの」

「赤岩ってそんな奴なのか。道理で虫の好かないことを言うと思ったよ」「身体障害児童の施設のための慈善興業だって言って、学校のほうには一言も言ってないのよ」愛光学園にテレビを寄付する力道山。康子は力道山から晃の話を聞いて、晃を是非引き取りたいと申し出る。

彦浜市での興行を終えた力道山はハンスと試合をするが、時間切れ引き分けとなり、再戦が大阪で行われることとなる。大橋はその試合の興行を赤岩に任せるように力道山に電話する。「でもあの人好きじゃないんですよ」「まあそう言うな。よろしく頼むよ」

力道山は晃が松葉づえで歩くのを見て相好を崩す。「晃ちゃん、よくやったぞ」「力さん。一所懸命やれば何でもできるね」「そうだとも」ありがとうございましたと力道山に感謝する悦子に、晃を愛光学園に入れたいと申し出る力道山。ますます感謝する悦子。

康子は愛光学園の窮状を力道山に訴える。「すると赤岩や大橋先生は貧乏人の子供は入学させるなと言ってるんですか」「それでは父の理念と全く違うことになりますが、今度、市と国の方針ということで学園に対する補助金が削られることになりました。それで予算委員の大橋先生にお会いしようと思うのですが、なかなか会ってくださらないのです」会わないはずよと言う房子。「あなたたちを困らせて、経営を投げ出させるつもりなんだわ」

力道山は大橋に会いに行くが、同情だけでは解決のできない事柄もあると言われてしまう。「愛光学園の問題は中央の政治につながっておる。単純な問題ではない」「しかし、先生」「餅は餅屋だ。政治のことは我々にまかしておけ。それともお前は今度の選挙で立候補するつもりか。お前が立候補したら当選するかもしれんな。ははは」「先生、ご冗談でなく、真面目に聞いてほしいんです」「馬鹿者。真面目に聞け?それがわしに対する言葉か。貴様は少し思い上がってるぞ。レスラーならレスラーらしくレスリングだけに打ちこんでいればいいんだ」

房子は大変なことがわかったと力道山に言う。「赤岩と大橋は愛光学園に渡す補助金をピンハネしてたのよ」「なんだって」「それがばれそうになって、大橋は選挙を控えて大わらわなの。この間の慈善興業も大橋の人気取りとピンハネの穴埋めのためだし、愛光学園を市の管轄にしようとしているのもピンハネを誤魔化すためなの。大阪の興行を買って出たのも、そのピンハネの穴埋めのためなの」

力道山は大阪の試合で自分が買ったら興行収入は全部よこせと赤岩に交渉する。「そんな無茶な」「無茶な話じゃないよ。わしはその収入を愛光学園に全部やるだけの話だ」「しかし、試合は必ずあんたが勝つとは決まってないよ。あんたが負けた時はどうするんだ」「一文もいらんよ。それでいいだろう」

このままではわしの政治的生命は終わるかもしれないと赤岩に言う大橋。「どんなことをしてもいい。今度の試合は絶対に力を負けさせるんだぞ。補助金の穴さえ埋めれば後はどうにでもなる」ニセ電話で横浜のクラブに呼び出された力道山はギャングたちに襲われて左腕を負傷するが、ギャングたちを見事にボコボコにする。

大阪で行われたハンスとの一戦で苦戦しながらも見事に勝利する力道山。警察に逮捕される大橋と赤岩。力道山は満面の笑みを浮かべて、晃や貫一たちを一緒にオープンカーに乗り込み、沿道のファンに手を振って答えるのであった。