女賭博師 さいころ化粧 | ロロモ文庫

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三田村組と風間組の甲州の賭博一切の興行権を巡る争いは、代人による壺振り勝負と決せられることとなった。三田村組の代人疾風の辰と風間組の代人緋桜のお秋は息詰まる熱戦を展開するが、勝負の途中で、木壺の半次が辰はイカサマをしていると申し立てる。「あっっしも壺振りの端くれ、こんな大勝負でのイカサマは見逃すわけにはまいりません」辰の壺の中のサイコロはイカサマ賽であると示す半次。この落とし前はどうつける、と凄む風間に、不調法はお詫びします、と咽喉をかっ裂いて自決する辰。

クラブ歌手をしている辰の娘の銀子に、辰が死んだことを告げる三田村組の六助。わしがついてながら、と詫びる三田村に、父のせいで大事な縄張りを失ってすいません、と詫び返す銀子。「いいんだ。辰を死なせるくらいなら、縄張りは風間にあっさりくれてやったほうがよかったんだ」

なんてこった、と呻く六助。「こんな時に政吉兄いがいてくれたら」六助を叱咤する三田村。「辰が破門した男をわしがあてにしたと思うのか」三田村は辰がイカサマするとは考えられないと言う。「お秋と待ったをかけた男がグルになったとしか思えないが、イカサマのカラクリの暴きようがねえ。辰は賭場で死ぬのは男の花道と言っていたが、イカサマ呼ばわりで死ぬなんて」呟く銀子。「お父さんの仇はきっととってあげるわ」

今年は四年に一度の野狐半次の供養盆が開催される年にあたっていたが、美濃の大親分の新庄は全国の親分が集まる供養盆を取り仕切る三田村は大変だろうと呟く。「じゃあ、今年も三田村が」「そりゃそうだろう。あれだけの盆を仕切るのは力じゃねえ。器量というか徳だ。そうなると甲州じゃ三田村しかあるめえ」それを聞いて苦い顔をする風間。

銀子はお秋が壺振りする賭場に必ず現れるようになる。お秋はなぜ私の後をつけると銀子に聞く。「私、壺振りになりたいんです」「壺振り?物好きだねえ。どうしてまた。まあいいや。言いたくなければ聞かないから」お秋は銀子を中盆にして、一緒に全国を旅する。お秋の隣でお秋の壺振りぶりを観察する銀子は、お秋から壺振りの特訓を受ける。銀子が壺を振る前から、銀子の出そうとするサイコロの目を言い当てるお秋。「どうして」「サイコロを振ろうとするお前さんの目でわかるんだよ」

新庄の賭場で壺振りをするお秋に、青たんのお由がサシの勝負を申し込む。お秋は銀子に勝負させると言う。冗談じゃない、と気色ばむお由。「私はお秋さんと勝負したいんだ。こんな駆け出しのひよっこなんか」「お黙り。私だって自分の代人で立てるんだ。銀子が負ければ私の負けの覚悟で言ってるんだ」銀子とお由の勝負が始まり、劣勢になったお由はイカサマをするが、銀子はそれを見抜き、お秋は、お由の手の甲にドスを突き刺す。

銀子にまだイカサマには疎いようだね、というお秋。「え」「せっかくお由のイカサマ暴いたのにって顔してるけど、あの勝負、お前さん隙だらけだったよ」「……」「私の座っていた位置から、お前さんの札は丸見えだ」「でもまさかお秋さんが」「そのまさかがいけないんだ。命を張って勝負をするときは自分以外のどんな人間も信じちゃいけない。たとえ親でも恋人でも。あんたと私が仇同士でないと誰が言いきれる」「……」「ははは。因果な商売だ」

美濃に現れた半次は新庄の賭場で壺を振らせてくれと申し出るが、新庄に断られる。「あんたは壺振りを禁じられてるそうじゃないか。それにうちの賭場はお秋さんと契約している」「そうですかい。木壺の半次もなめられたもんだ。お秋さん、甲州の借りはいつか返さしてもらいますぜ」

半次に尋ねたいことがあるという銀子。「私はお秋さんのところで修行している銀子と申します。さっき言っていた甲州の盆とは何のことでしょう」「なに、風間と三田村が縄張かけての大勝負をしたとき、俺が待ったをかけてやったのよ」「あなたが」「驚くことはねえ。賭場をかまけて壺は振れねえが、イカサマ暴きは大手を振ってできるのよ。ははは。姉さんが一人前になった時、木壺の半次さんの腕を見せてやるぜ」

三田村組に乗り込んだ風間組の幹部の寺沢は、病身で老齢の三田村では供養盆は仕切れないでしょうよ、と冷笑する。刑務所を出所した政吉が三田村の見舞いに現れる。「辰の墓参りに行ったかい」「いえ、あっしは破門の身でして」「辰は心を鬼にして破門にしたんだ。お前が刺した陸中の内藤は風間と兄弟分の間柄。ただでさえうちと仲の悪い風間と揉める材料を作ってはいけないと」「わかっております」「辰もお前の波紋を解くまでは生きていたかったろうよ」「相手は緋桜のお秋と聞きましたが」「イカサマを指摘したのは別の野郎だったよ」「お秋はどこに」「美濃の新庄の盆にいると聞いた」

新庄の盆に現れた政吉を見て、驚きの表情を浮かべる銀子とお秋。お嬢さんが中盆を務めているとは、と銀子に言う政吉。「あのお秋はお父さんの仇ですぜ」「知ってます。私がお秋さんと一緒にいるのは腕を磨いて、お父さんに仇を討つため」「そいつはいけねえ。師匠の仇はあっしが討ちます」

「あなたは破門されてるのよ」「お嬢さん。あっしにはお秋を許せねえわけがほかにもあるんです」「でもお秋さんはいい人だわ。仇だ仇だと思いながら、これが本当の師匠ならいいなと」「お嬢さん、壺振りになるのは甘いもんじゃねえ」「政吉さん。私はもう心に決めているんです」二人の会話を聞いて蒼ざめるお秋。

風間は野狐半次の血筋を引く元ヤクザの前川に供養盆を仕切らせてくれと頼むが、前川は三田村にやらせると断る。お秋は風間の賭場で壺振りをするために銀子を連れて、甲州に現れる。三田村の見舞いに行く銀子は、風間が供養盆を狙っていると話す。「知っているのかい」「私、今風間組に身を寄せているんです」「なに」

「私はお秋さんの弟子になって、お父さんの仇をとる機会をうかがっているんです」六助は三田村に内緒で壺振りをやってくれと銀子に頼む。「風間に知れたら大変なことになるわ」「それは大丈夫です。ごく内輪の盆だし。実は親分の薬代にも事欠く始末で。その上、供養盆を開くとなるとどうしても金がいりやす」

仕方なく、銀子は壺振りをするが、寺沢たちに乗り込まれる。「三田村組が賭場を開くのはご法度と知ってるだろう」この落とし前はどうしてくれると凄む寺沢に、左手の小指を斬りおとして渡す三田村。こんな爺いの指などいらねえ、と寺沢に怒鳴る風間。「これじゃ折角の段取りが水の泡だ」銀子を殴って蹴るなどの暴行を命じる風間は、お秋にお前の弟子は三田村の犬とはどういうことだと凄む。「この子は疾風の辰の忘れ形見なんです。この子が狙っているのは私なんですよ」「なに」

お秋の計らいで、甲州を出ることを条件に命を救われる銀子は、何故辰の娘と知りながら助けてくれたんです、とお秋に聞く。「仇と狙われながら旅をするのも面白いからさ。それに私と勝負したいという根性が私に似てないこともないんでね。つまりお前さんを気に入ったわけさ」「私も親の仇と思いながら、そのうち得難い師匠だと思うようになりました」

「大工や左官じゃあるまいし、師匠なんてあってたまるかい。でも今のお前さんじゃまだ私に勝てないよ」「わかってます。でも私も名人と言われた疾風の辰の娘です。いつかはきっと勝負します。今度の供養盆までにはきっとここに戻ってきます」「それじゃあてにしないで待っていることするよ」

前川は三田村に正式に供養盆を取り仕切ることを頼む。そのことを電話で知った風間は壺振りが政吉を務めることを聞き出し、寺沢に政吉を消せと命令する。「壺振りがいないと盆は開けねえ」

政吉を小料理屋に呼び出すお秋。「ムショを出たことは知ってたけど、いきなり賭場で勝負をかけられるとは思わなかったね」「……」「暗くなったら街を出るんだね。見つかったら殺されるよ」「余計なお世話だ。お前は師匠の仇だ。それだけじゃねえ。お前の甘い口車に乗って俺は人を刺してムショ入りしたんだ」「それは違う」「言い訳するな。あの頃お前は陸中内藤の壺振り。俺はその喧嘩相手だった波島の壺振りだった」「信じておくれよ。誤解だよ。私はあの晩のことは忘れはしないよ。あの晩だけは私は壺振りじゃない。女だったんだ」

俺はとうに忘れたと言う政吉。「覚えているのは甘い夢の中で内藤の奴らに襲われて、無我夢中で二人を刺したこと。奴らが来るのを前もってお前が知っていたということだ」「違う」「お前は身体を賭けて、俺の命を狙わせたんだ。大勝負に負けた腹いせによ」「私は勝負のことなんか忘れた。壺振りじゃなかった。女だった」「ムショの五年は長かったぜ」「……」小料理屋を出て行く政吉。「いずれ勝負のケリはつけようぜ。達者でな」しかし店を出た政吉はすぐに襲われて身体中を刺されて絶命する。

三田村は供養盆の壺振りはもう銀子しかないと言う。「腕はともかく疾風の辰の娘なら親分衆も納得するだろう」お秋は壺振りをやらせてくれと三田村に申し出る。お前は風間の壺振りじゃないか、という六助に、確かにそうですけどお銀ちゃんは私の可愛い弟子ですと答えるお秋。

「みすみすあの子を危ない目に会わせるわけにはいきません。それに死んだ政吉さんは」聞いたよ、と言う三田村。「あいつは息を引き取る前に一言言い残したいと。緋桜のお秋は俺のたった一人の女だったとな」ひどいと泣くお秋。「どうして生きている時にたった一言それを」

旅館で壺振りの特訓をする銀子は旅館荒らしのコソ泥女を匿う。それはお由だった。「こりゃひどい因縁だ。壺振りが壺を振れなくなるとこのザマだ」「……」「どうしたんだい。あ秋と別れたのかい。どうせあのお秋も長いことないさ。供養盆の壺振りだと威張ったところで風間に盾ついたんじゃタダじゃすまない」「あの、お秋さんが供養盆に」「なんだ、知らなかったのかい。殺された政吉の代わりにと、三田村に寝返ったってね」

お秋は供養盆の前の二の酉盆の壺振りをする。しかし半次はお秋はイカサマをしていると申し立て、お秋の壺の中のサイコロはイカサマ賽であると示す。風間や寺沢から折檻を受けるお秋。「あんな老いぼれに寝返りやがって。ちっとはこたえたか」「お前さんたち、半次とグルだったんだね」うるせえと怒鳴る半次。「いくらイカサマでも暴かれなきゃ文句あるめえ。手前の未熟さを棚にあげやがって」

自決しようとする三田村を、旅から帰ってきた銀子が制する。「親分が自決すればイカサマを認めたことになり、風間の思うつぼ。ここは私にまかせてください」虫の息のお秋が三田村組に投げ込まれる。「お秋さん」「緋桜のお秋も落ちぶれたもんだ。イカサマ師呼ばわりされてこのザマだよ」「私のお父さんの時と」「同じだよ。お銀ちゃん。とうとうお前との勝負も果たせなかった。許しておくれ。これで政吉さんのところへ行けます」力尽きて死ぬお秋。

銀子は半次の手口を見抜いたと三田村に言う。「壺の中の賽はまともな賽なのに、待ったをかけ、前もって手に持っていたイカサマ賽とすり替えていたんです」「そんな簡単なことがどうして」「半次は賭場出入り禁止になっているほどのイカサマ師。その指の動きは比べる者のないほどの早業と聞きます」

六助は半次の手口を見破ったと風間に報告する。問題ないですと風間に言う半次。「銀子は私のイカサマを見破ろうとするけど、こちらはあんなひよっこに見破られるような腕じゃありませんや」これで風間組の準幹部になれるんですね、という六助に、寝言を言うなと一喝し、子分に半殺しにさせる寺沢。「世の中そんなに甘くねえ。こっちに寝返った奴はまたどっちに寝返るかわからねえからな」

半次の謹慎を解けたことを祝う賭場が開催され、銀子は半次とのサシの勝負を申し込む。新庄を立会人に対決する二人。形勢不利となった半次は堂々とイカサマをして挽回していく。考え込む銀子。(どうして私にもわかるイカサマを。そうか、これは罠だ。私に待ったをかけさせ、壺に入っているイカサマ賽を素早く戻して、本物とすり替え、私を陥れる計画だ。半次の手が壺からあと10センチ離れないと、待ったをかけることができない。どうすれば)

銀子はわざと壺にサイコロを入れ損ねて、半次に拾わせる。その隙に銀子はイカサマ賽の入った壺を新庄の前に滑らせ、壺の中を点検してくれと頼む。壺の中の賽がイカサマ賽であることを確認する新庄。このイカサマ賽は何だ、と新庄に一喝され、風間の旦那に頼まれて、と言い訳する半次。やかましいと半次を突き飛ばす風間。醜く言い争う二人を、うるさいと一喝する新庄。

「風間。これだけの花会でお前が雇った壺振りがイカサマを働いた。これは腕一本へし折られたぐらいでは済まないのはヤクザのしきたりだ」屈辱に震える風間。父とお秋の仇をとって泣く銀子に、新庄は今夜は泣いて、供養盆には立派な壺さばきを見せてくれと励ますのであった。