作:雁屋哲 画:花咲アキラ「美味しんぼ(133)」 | ロロモ文庫

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不思議なからあげ

山岡に友人の和子が勤めている養護施設「子供の国」が立ち退き通告を受けていると訴える栗田。「施設は園長先生が私財をはたいて自力で始めたの。施設の建っている土地は借地で、期限が来たら、持ち主に明け渡すと文書で契約を交わしてあるけど、その期限は2年前に切れているの。前の持ち主からこの土地を買った会社が、それを裁判所に訴えて、子供の国は出ていかなければならなくなったの」「新しい持ち主は何という会社なの?」「洋東興産よ」「洋東興産と言えば、最近、銀座にホテルを新築したばかりだ。そんな大企業がそんな小さな施設の土地を取り上げなくても」

板山に頼んで、東銀座ホテル新築パーティーを開く洋東グループの盛口会長に紹介してもらう山岡。このホテルを始めるに当たって、料理部門を重視したと言う盛口。「今までホテルの料理と言うと、保守的であまり新鮮味がなかった。もっと自由な気持ちで食の世界を広げれば、日本の食文化はもっと豊かになると思うんです。それからすると中国人は素晴らしい。ほとんど全ての食材を受け入れる。例えばここに用意した料理です」

「これは何だ」「蛙の唐揚げです」「えっ、気持ち悪い」「それがいけない。あのアメリカ人でさえ、蛙は食べるんです。中国では田鶏と呼ばれていますが、私に言わせれば、鶏なんかより遥かに美味しい。淡泊で上品で、しかも奥行きの深い味です。これ以上の肉はほかに滅多にないと断言できます」

自慢する盛口にこれは田鶏でないと言い放つ山岡。「これはアメリカ原産のウシガエルです。中国では田鶏と言うのはこれではありません」「えっ」「ほら、腿の部分だけで7センチ以上あります。こんなに大きいのはウシガエルです。田鶏は日本のアカガエルやトノサマガエルによく似た形と大きさの蛙です。ウシガエルよりずっと小さい。田鶏はもっと複雑で玄妙かつ豊かな味です」

動揺する盛口。「確かに私が香港や広州で味わった田鶏とは違う。いやはや、君がいなかったらどんでもない間違いを犯すところだった」「とんでもない。俺こそ出過ぎたことを言って」「ありがとう。お礼を言うよ」「盛口さん、出過ぎついでに田鶏より美味しい唐揚げを俺の御馳走させてくれませんか」「なに」「その唐揚げが田鶏の唐揚げより美味しくなかったら、ここのホテルの下働きを死ぬまで勤めます」

岡星に盛口を連れて行く山岡。「はて、これは」「どうぞ」「旨い。しゃっきりして歯ごたえ。繊細で上品かつ淡泊な味。しかも旨味の要素はいくつも絡まりあって、豊潤にして玄妙きまわりない。これは確かに田鶴も及ばない。これは何だ。どうやら魚らしいが、少しも生臭くないのは、どうしたわけだ」

これはトラフグの頭だと言う山岡。「フグの頭を正中線から、左右に断ち割り、それをさらに四つに切ったものを唐揚げにしました」「ううむ。山岡君、君の勝ちだ。私はどうすればいい。言ってくれ」「では、ちょっとお願いが」

子供の国に行く栗田を迎える和子。「どういうわけか突然洋東興産が計画を変えて、この土地を寄付してくれたの。もうこれで心配なく子供たちの面倒を見ることが出来るわ」「よかったわね」「でもどうして急にこの土地を寄付してくれることになったのかしら」「唐揚げのせいよ」「え」