さ・しで始まる海野十三小説ベスト10 | ロロモ文庫

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1897年12月26日に生まれた海野十三は早稲田大学理工科で電気工学を専攻し、逓信省電務局電気試験所に勤務しながら、機関紙などに短編探偵小説を発表し、1928年に雑誌「新青年」から依頼を受け、「電気風呂の怪死事件」を発表して本格的文壇デビューして数多くの小説を著し、今では日本SFの始祖の一人と呼ばれる存在となっており、ロロモもサラリーマン時代にノートパソコンで彼の小説を青空文庫で勤務中に読むのを密かな楽しみとしていたわけです。

10位は<昭和五十二年の夏は、たいへん暑かった。ことに七月二十四日から一週間の暑さときたら、まったく話にならないほどの暑さだった。涼しいはずの信州や上越の山国地方においてさえ、夜は雨戸をあけていないと、ねむられないほどの暑くるしさだった。東京なんかでは、とても暑くて地上に出ていられなくて、都民はほとんどみな地下街に下りて、その一週間をくらしたほどだった>の書き出しで始まる「三十年後の東京」

9位は<銀座の舗道から、足を踏みはずしてタッタ百メートルばかり行くと、そこに吃驚するほどの見窄らしい門があった。「おお、此処だ」と辻永がステッキを揚げて、後からついてくる私に注意を与えた。「ム」まるで地酒を作る田舎家についている形ばかりの門と選ぶところがなかった>の書き出しで始まる「地獄街道」
8位は<まさか、その日、この大事件の第一ページであるとは春木少年は知らなかった。あとからいろいろ思い出してみると、その日は、運命の大きな力が、春木清をぐんぐんそこへひっぱりこんだとも思われる。ふしぎな偶然の出来事が、ふしぎにいくつも重なって起ったような感じだが、それもみんな、清少年の運命であったにちがいないのだ>の書き出しで始まる「少年探偵長」
7位は< その朝、帆村荘六が食事をすませて、廊下づたいに同じ棟にある探偵事務所の居間へ足を踏み入れたとき、彼を待っていたように、机上の電話のベルが鳴った。 彼は左手の指にはさんでいた紙巻煙草を右手の方へ持ちかえて、受話器をとりあげた>の書き出しで始まる「地獄の使者」
6位は<浅草寺の十二時の鐘の音を聞いたのはもう半時前の事、春の夜はたけて甘く悩しく睡っていた。ただ一つ濃い闇を四角に仕切ってポカッと起きているのは、厚い煉瓦塀をくりぬいた変電所の窓で、内部には瓦斯タンクの群像のような油入変圧器が、ウウウーンと単調な音を立てていた>の書き出しで始まる「白蛇の死」

5位は<理学士帆村荘六は、築地の夜を散歩するのがことに好きだった。その夜も、彼はただ一人で、冷い秋雨にそぼ濡れながら、明石町の河岸から新富町の濠端へ向けてブラブラ歩いていた。暗い雨空を見あげると、天国の塔のように高いサンタマリア病院の白亜ビルがクッキリと暗闇に聳ええたっているのが見えた>の書き出しで始まる「人造人間事件」

4位は<このものがたりは、ソ連の有名な港町ウラジオ市にはじまる。そのウラジオの街を、山の方にのぼってゆくと、誰でもすぐ目につくだろうが、白い大きな壁と、そのうえに青くさびた丸い屋根をいただき、尖った塔が灰色の空をつきさすように聳えているりっぱな建物がある>の書き出しで始まる「人造人間エフ氏」
3位は<帝都二百万の市民の心臓を、一瞬にして掴んでしまったという評判のある、この「射撃手」事件が、突如として新聞の三面記事の王座にのぼった其の日のこと、東京××新聞の若手記者風間八十児君が、此の事件に関係ありと唯今目をつけている五人の人物を歴訪して巧みに取ってきたメッセージを、その懐中手帳から鳥渡失敬して並べてみる>の書き出しで始まる「省線電車の射撃手」

2位は<太陽の下では、地球が黄昏れていた。 その黄昏れゆく地帯の直下にある彼の国では、ちょうど十八時のタイム・シグナルがおごそかに百万人の住民の心臓をゆすぶりはじめた。「ほう、十八時だ」「十八時の音楽浴だ」「さあ誰も皆、遅れないように早く座席についた!」>の書き出しで始まる「十八時の音楽浴」

1位は<あの一見奇妙に見える新聞広告を出したのは、なにを隠そう、この妾なのである。「尋ネ人……サワ蟹ノ棲メル川沿イニ庭アリテ紫ノ立葵咲ク。其ノ寮ノ太キ格子ヲ距テテ訪ネ来ル手ハ、黄八丈ノ着物ニ鹿ノ子絞リノ広帯ヲ締メ、オ河童ニ三ツノ紅キ『リボン』ヲ附ク、今ヨリ約十八年ノ昔ナリ。名乗リ出デヨ吾ガ双生児ノ同胞。(姓名在社××××)」 これをお読みになればお分りのとおり、妾はいま血肉をわけたはらからを探しているのである>の書き出しで始まる「三人の双生児」となるわけです。