福本伸行「賭博黙示録カイジ・人間競馬・高層綱渡り編(1)」 | ロロモ文庫

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嫌疑

カイジはコンビニでバイトをしなから生計をたてていた。(どういうわけなんだ。あれから四ヶ月たつのに、債権者からの取立てがない。もっとも取り立てが来てもどうにもならない。なんせ借金629万だ。時給900円じゃ、年18%の金利からして払えねえ)窓拭きをするカイジを怒鳴りつける店長。「こら、手が動いてないぞ。タラタラするな。ボケが」協調性のないカイジは他のバイトから孤立していた。

バイトが終わって帰ろうとするカイジを呼び止める店長。「ちょっと待て」「なんですか」「この本棚にはさんであった封筒知らないか」「いえ」「10万はいっていたんだ」カイジをにらむ店長。「悪いが、カバン見せてくれないか」「え。何ですか。俺が盗んだというんですか」「そうは言わないが、念のためだ。お前が一番怪しいんだから」見に覚えのないカイジはクククと笑う。「そういうことなら、見せなきゃいかんでしょうね。しかし、ただじゃ見せない。ギャンブルだ」

「え」「カバンをあけ、身体検査をして、もし金が出てきたら100万を店長にあげます。もし出てこなかったら、逆に俺に10万ください」「う」「それくらい人を疑うってことは重い。この程度のリスクが当たり前」「そういうことか。お前隠したな」「え」「この店のどこかに。だからそんな馬鹿な話をふっかける。そうだろう、カイジ。この盗人め」頭にきたカイジは店長を殴ろうとするが、バイト仲間の佐原が止める。佐原はとりあえず今日のところは帰ってくれとカイジに頼む。しぶしぶ店を出るカイジ。

そこに佐原が追いかけてくる。「いや。ひどい話っすね。あの店長、俺まで疑って。あんまり頭にきたからスパッとやめました」「やめた?」「ええ。多分、あの店長の勘違い。どこかにうっかり置いたのを自分で忘れたんですよ」「そうか。やめたか」「ええ」「ってことは、お前か」「は?」

「店長の金、盗んだのお前だろ。この紛失劇が店長も思い違いじゃない。店長には確信があったんだ。金は確かになくなった。となると、金を盗んだのはお前だけ」しゃあない、とつぶやいた佐原はカイジのバックから金の入った封筒を抜き出す。「あ」「ククク。どうしようかと思いましたよ。カイジさんがカバンから金が出たら100万なんて言い出した時は」「う」「もっとも、あの店長にはそんな度胸がありませんがね」「貴様」

 

使者

佐原はスナックにカイジを連れて行く。「勘弁してくださいよ。あんな奴は金を盗まれて当たり前すよ」「そうじゃねえ。俺が怒っているのは俺を運び屋にしたことだ」佐原はカイジはどこか違うと言う。「匂いが違います。危険というかアウトローというか、もっとはっきり言うと大金の匂いがするっていうか」「おいおい。何寝言ぬかす。俺みたいな素寒貧捕まえて」「それはわかっています。カイジさんには金はない。俺が言いたいのは大金の匂い。ヤバイけどおいしい話。非合法だけど一発当てると大金ゴソっみたいな話をカイジさんは知っているんじゃないですか」

笑うカイジ。「おまえなあ」「でも追われてるんでしょう」「え」「この店でカイジさんが選んだ席は入り口が見通せる席です。そして誰か人が入ってくるごとに瞬間目が入り口に泳ぐ。カイジさんは誰かに追われてるんだ。話してくださいよ、そのヤバイ話」「考えすぎだ、アホ」カイジは一人で帰ろうとするが、佐原はしつこくカイジのあとをついていく。

そこへ遠藤がやってくる。(あれは俺をエスポワールへ引き込んだきっかけの男)カイジは遠藤を無視して通り過ぎようとするが、遠藤は声をかける。「待てよ。お前にとって実にいい話を持って来たのだから」「なに」「一晩で、お前の借金がチャラになる」

 

忸怩

カイジのアパートにやってくる遠藤と佐原。来週の土曜日にパーティーがある、と話し掛ける遠藤。「その参加者を60人ばかり募っている。もちろんギャンブルだ。うまく凌げば一晩で2000万」「おい、いい加減にしろ。誰がそんな手に」遠藤に向って土下座する佐原。「お願いします。僕をそのパーティーに参加させてください。長い間こういうチャンスを待っていたのです」馬鹿と叫ぶカイジ。「これはお前が考えているような話じゃないんだ」

わかってる、と返事する佐原。「すべったら大変だってことでしょう。でも、俺、わかってきちゃったんだね。俺みたいなプーが浮かび上がろうとしたら、どこかで一発当てるしかない。でなきゃあ風穴なんかあくもんか。これは突破口なんだよ」「佐原。その気持ちわからねえかねえが、やめろ。こんな胡散臭い男の言うことを真に受けてどうする。これはチャンスじゃねえ。待て。お前にふさわしい本当のチャンスがあと少しで必ず来る」

冷笑する遠藤。「なんだ。その「待つ」というのは。一体何をいつまで待つんだ。こんな薄汚いアパートで貧しいバイトをして何を待つんだ」「ぐ」「船を降りた時点であったお前の借金は629万。この金をどうやって返すつもりだ」「働くさ」「わかってないな。計算したことあるのか、お前。時給900円のコンビニで一日9時間、月26日働いて、月給が21万600円。このうち返済に回せるのがいいとこ10万。完済するのには197ヶ月。つまり16年5ヶ月だ。返済が終わるのはお前が40近くなって頃」「くっ」

カイジの腕を握り締める遠藤。「この手は何のためについている。リスクを恐れ動かないというのは年金と預金が頼りの老人のすることだぜ。しかし若者は掴みにいかなきゃダメだ。カイジ。何を躊躇する。掴め。組んだ腕をほどき掴むんだ」

 

結集

遠藤の残したメモを見つめるカイジ。「時、7月13日。午後9時。場所・京葉新都心、スターサイドホテル」

カイジは約束の時間に京葉新都心にやってくる。京葉新都心。この人工的な都市はバブルの頃、大騒ぎして開発し、大仰な建物だけが残り、人の姿はまばらであった。その京葉新都心の東の端、目の前がすぐ海という突端にそのホテルはあった。カイジたちを待つこのホテルはまだオープン前。ホールへの入り口は閉ざされていて、地下に案内される。地下駐車場へ。そしてさらに地下へ。

地下三階に、今回のパーティーに参加する若者が集められていた。その中にカイジが救った中年男の石田もいた。石田は二人で協力して戦おうとカイジに言う。その石田の胸倉をつかむカイジ。「味方なんていねえんだよ。おっさんと俺は他人。いや、それ以上。敵なんだ。覚えておけ。二度となれなれしい口をきくな」

その様子を見てクククと笑う佐原。「聞こえたろ。お前も敵だ」「カイジさん。安心してください。実は俺も同じことを考えていたんです」「え」「おそらくこの中からただ一人が2000万。となりゃあ、全員が敵。そうですよね、カイジさん」「……」