福本伸行「賭博黙示録カイジ・限定ジャンケン編(10)」 | ロロモ文庫

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背理

怒鳴る船井。「この自分のカードを相手に知られているかもしれないという疑惑で、互いに互いを牽制しあって動けないというのはアホやぞ。もういい加減断ち切ろうやないか。この金縛り状況」「しかし」「俺には妙案がある。一度ゼロに戻すんや。一度みんなのカードを集め、シャッフルし配りなおす。こうすれば自分のカードを知られているもくそもない。最初と同じまっさらな状態に戻るんやからな」

古畑は船井の提案をつぶそうとカイジに言うが、目立ちたくない、とカイジは否定する。高田という男が配りなおしに反対する。「何勝手な熱吹いてんだ」「ククク。あんたの手持ちカードは4、5枚ってところか。あんた自分の危機について考えんと。時間切れで手持ちカードを使いきれんという場合を考えろちゅうこっちゃ」「……」

「みんなもよう聞け。この限定ジャンケンで何が最悪言うて、このカード残しほど最悪な事態はないんや。あの時計がゼロを示して、もしカードを持っていたら星を三つ四つ持っていても、その星は問答無用で没収され、別室行きや。しかしカードを使い切っておけば、星二つでも生き残る可能性はある。この限定ジャンケンには星の売買タイムという救済措置があるんや」

船井はグラサンの男がグー、キャップの男がチョキ、長髪の男がパーを持っていることを知っているという。「何を言う」「ボケ。知らぬは本人ばかりとはこのこと。お前らにカードを売ったあの加藤ちゅう男は、カードと情報を売りさばくことで金を得て、その金で星を仕入れて生き残ろうという男」「う」「このままじゃ、おどれらエサやんけ。そうやって手をこまねいていれば、何か問題が解決するんかい。だから来い。俺の2枚とおどれらのカードが混ざりあわせば、もう誰が何を持っとるかわからなくなる」

7人が船井に同調。またも船井に煮え湯を飲まされるのか、と唇をかむカイジ。船井は勝負はこの中だけでやればいい、と言う。その言葉を聞いてカイジら3人を除いた男たちが全員船井に同調する。仕方なく立ち上がるカイジ。「待て」「なんや」「俺たちも加わる」「ククク。随分遅い決断やが、まあええやろ。来る者は拒まずや。入んな。カイジ」

 

水泡

カイジたちは手持ちのカード69枚を船井に渡す。船井は電光掲示板とカードの枚数をチェックしはじめるが、首をひねる。「グー38、パー37、これはええんや。これは電光掲示板と同じ数。しかしチョキがたりん。電光掲示板は15なのに、実際は12。3枚足りん」「じゃあ、この局面でまだ偽っているヤツがいるのか」「いや。このチョキ3枚の持ち主は俺たちの中にはおらんよ。おそらく向こうの中にいる」星売買を待つ男たちを指差す船井。

「どんな戦略か知らんが、この土壇場まで輪に加わらず、チョキを3枚抱えているヤツ。Xが」しかしほっとけば問題ない、という船井。「俺たちは俺たちの中で勝負するつもりだった。そう考えればなんの問題もない」

カードは全員がシャッフルし、船井に戻される。床にカードをばらまいてシャッフルしなおす船井。カイジはまだ勝算があると呼んでいた。(この配りなおしの後、すばやく69枚のグーチョキパーをチェックできれば、何を出せば一番確率が高いかを俺たちだけが知ることができる)

カードをシャッフルした船井は全員に配りなおす。「全員に配り終わった時点で、即勝負再開とする。ええな」「俺がまず2枚。高田さんが5枚。そっちが3枚。そして最後。カイジさんが69枚。これでしまい」船井はカードを投げ捨てる。「ああっ」「さあ、勝負再開や。行くで」「船井。貴様」「悪いが急ぐんや。闘う相手がなくなってしまうんでな」「貴様」

 

弱肉

船井が投げ捨てたカードをあわててかき集めるカイジたち。その間に勝負が行なわれ、配りなおし直後13人いたカード余り者は7人に。カイジは一分後カードの確認を終わる。「グー32、チョキ3、パー34。カードは全部で69枚。間違いない」電光掲示板はグー34、チョキ8、パー34をしめす。(パーが尽きたんだ。Xのカードを覗けば、今このフロアーにあるのはグー2枚にチョキ2枚。戦いさせすれば、悪くても2勝2分。うまくいけば4連勝もある)

フロアーに残っているのは、船井、高田、メガネ、角刈りの男であった。船井はメガネに勝負を申し込むが、それを邪魔するようにカイジはメガネに勝負を申し込む。しかし船井が邪魔する。「買占め派と戦って、どないしよう言うんや。俺たちのカードは見透かされてるんで。そんなんと闘ってどないするんや。まるで自殺行為。負けに行くようなもんやないけ」「う」がっくりするカイジ。(これで完全に破綻。可能性ゼロ。買占め戦略)

 

暴露

ボロボロ涙を流すカイジ。嘲る船井。「買い占め戦略なんて泥の船。沈むが当たり前や」頭に来たカイジは船井に殴りかかる。「汚いまねばかりしやがって」「勝負に汚いもくそもない言うとるやろ。うざいわ。だいたい人が交渉しているときに、あとからのこのこ出てきて、人のえ、相手にちょっかい出したりするからこう言う目にあう」

船井の言葉に反応するカイジ。「何が、え、だ」「あーん」「人の相手にちょっかい出すなって言う時、おまえ、人のえ、と言ってから言いなおした。瞬間口走りそうになったんだ。人の獲物に手を出すな、と」

あわてる船井。「何をわけのわからんことを」「言った。人の獲物と言いそうになった。お前は確証があるんだ。メガネとの勝負に必勝する確証。お前は策を打った。さっきの配りなおしの時、自分が勝つようにカードを配ったんだ」「ふざけるな」

「そこのメガネ。あんたのカード、チョキだろう」「そんなこと」「隠しても一緒だ。俺たちの手元にパーが34枚ある。このフロアーでパーは1枚も流通していないんだ。船井がもし勝つ理由があるんだったら、必然的にあんたのカードはチョキになる」「う」メガネのカードはチョキだった。

その前に船井と闘った男はチョキを出して負けていた。「これが偶然か。お前が闘った、あるいは闘おうとしている相手は二人とも手持ちがチョキ。しかもカードが1枚しか持っていない。ここまで条件が重なりゃもう明らか。船井はさっきの配りなおしの時、グーとチョキに印をつけて配った」

メガネはカードに印があるのを見つける。いい加減にしろ、と怒鳴る船井。「引っかき傷くらいつくわい。おどれはカイジに誘導されてるんや。あれだけ入念にシャッフルしたんやぞ。あんなんで、どうやって俺のところにグー、目エ付けた相手にチョキなんてことができるんや。俺はマジシャンやないで」

いや、マジシャンだ、と答えるカイジ。「船井はリピーターだ。ゆえに船の勝負がこの限定ジャンケンということを知っていた。だから相当イカサマを練習してこの船に入っている。俺たち素人の目を煙に巻くことぐらいどうってことない。それに今考えるとあの配りなおし、十分疑わしい。イカサマの余地は十分あった」