2022年GWに訪ねたイラクの旅を綴っています。現地で書いたものに写真と文章を大幅に追加しています。


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スークを見終わりましたので、イスラム教アリー・シーアの聖地ナジャフの寺院へ入ってみたいと思います。


 

靴とカメラを預け、更にもう一度のチェックポイント。三回目のチェックポイントを抜けました。




ここには、正統カリフ時代の第四代カリフ、そして、シーアにとって最も重要な初代イマームであるアリーの霊廟があります。

 

 

 

 



◆正統カリフ時代
第一代カリフ:アブー・バクル(632年 - 634年)
第二代カリフ:ウマル(634年 - 644年)
第三代カリフ:ウスマーン(644年 - 656年)
第四代カリフ:アリー(656年 - 661年)

◆十二イマーム派
第一代イマーム:アリー(ナジャフ)
第二代イマーム:ハサン
第三代イマーム:フサイン(カルバラー)
第四代イマーム:アリー・ザイヌルアービディーン
第五代イマーム:ムハンマド・バーキル
第六代イマーム:ジャアファル・サーディク
第七代イマーム:ムーサー・カーズィム
第八代イマーム:アリー・リダー
第九代イマーム:ムハンマド・タキー
第十代イマーム:アリー・ハーディ(サーマッラー)
第十一代イマーム:ハサン・アスカリ(サーマッラー)
第十二代イマーム:ムハンマド・ムンタザル - 隠れイマーム






 

アリーの存在こそがイスラム教にのちのシーア、スンニを生む契機となります。それはそれはアリーを信奉するシーア・ムスリムにとって重要な聖地で、なんと年間2千万人の巡礼者が訪れるそうですよ。

 

 

 

 

 

 

 

先述のとおり、宗派関係なくすべてのイスラム教徒に共通の聖地はサウジのメッカ、メディナ、イスラエルのエルサレムですが、アリー・シーアにとってはそこに昨日のカルバラー、ここナジャフが加わります。ここは三大聖地と同じくらい重要な聖域です。

 


今日、初めてご覧頂いた方にご説明いたしますと、イスラム教は大きくスンニとシーアに分かれます。世界のイスラム教徒の9割がスンニで、1割弱がアリーと云われています。イラクではスンニ:シーアが6:4だそう。10年前の統計なので変わってきてるかも知れません。何かの記事で半々だとも見ました。

 

 

 

 

 

 

 

派閥によりお祈り回数や方法がちょっとだけ違いますが、両者の決定的な違いは「長」をどう決めるかです。スンニは投票で決めるのに対し、シーアはムハンマドの血統です。








スンニとシーアは、個人レベルでは仲良いです。というか、その違いをあまり気にしていませんが、国レベルになると感情は変わってきます。サウジvsイランなどは、スンニvsシーアの典型的な構図とよく語られますよね。







近年ですとシリア内戦は米英の牽引したサウジvsイランの代理戦争ですし、イエメンもそう。とにかくいがみあってるように見えます。

 

 

 

 

 

 

しかし、ここ数ヶ月で世界のパワーバランスは中東やその周辺、BRICsを中心に変化し、欧米離れは顕著です。まさかまさかのサウジとイラン、サウジとイエメンの仲直りは歴史的な快挙です。あまり日本では報道されていないように見えますが。相変わらず欧米に追従するだけの日本は、もはや世界の蚊帳の外。お金を欲しいときだけタカられる世界のATM以外に存在感はありません。






スンニとアリーの違いは長の選出方法で投票か血統か。と上述しましたが、イラクではフセイン元大統領がシーアを快く思わず、迫害するような場面もありました。

 

 

 

 

 

 

 

シーアは血統を重んじますので、イラクの選挙で選ばれたフセインを後目にアリーを信奉します。フセインはどうひっくり返ってもアリーにはなれませんので、快くはなかったでしょう。日本で例えると、一般人はメチャクチャ頑張って努力して総理大臣や大企業の社長になることはできますが、天皇にだけはどうやったってなれない。血筋ですから。







イランのように国民のほとんどがアリー信奉者ですと当然の選出ですが、イラクのように半々ですと正当に国民投票で選ばれた大統領は面白くない。そして排他的感情が起こる。宗教の宗派や宗教そのものは、それだけで戦争を起こします。

 

 

 

 

 

 

もし、アリーがムハンマドの娘と結婚していなければ後世これほど隔絶的な派閥は生まれず、死ななくていい命は沢山あったと思います。しかし、それも歴史ですよね。







イスラム教は偶像崇拝を固く禁止しているのですが、アリーシーアは聖地のモスクにイマームの霊廟があったり、殉教王子フサインのポスターが街中に貼られていたりなどあからさまなので、スンニや原理主義から見るとミーハーに映るらしく、あまり良く思われていない。

 

 

 

 

 

 

なので、アリー聖地であるカルバラーやここナジャフは、よくテロや放火が起きていた時期もあったのですよ。最近は聞きませんけどね。なのでカルバラーはじめサマラ、ここナジャフは聖地に入域するだけでも空港並みに厳しいチェックがあるのですね。


 

ちょっと長くなりましたので、続きは次回に!