2022年GWに訪ねたイラクの旅を綴っています。以前、現地で書いた記事に写真と文書を大幅に追加しています。
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引き続き新アッシリアです。
コチラはニムルド宮殿を発掘中に発見された「ニムルドレンズ」と云われるものです。どうやら望遠鏡のガラスとして天文学的な目的で使用されいてたよう。先日、天体の動きを正確に把握していたと思われる図と楔文字の書かれたタブレットをご紹介しましたが、目視だけでなく、これも使っていたのですね。
世界で初めて望遠鏡を発明したとされるガリレオの3,500年前に、シャルマネセルは既に月の表面を観察し、冥王星の動きを捉えていたでしょうね。このガラスはロンドンの大英に展示されているものです。イラクはレプリカのみ。
見づらいですが、ニムルドで発見された石灰岩の壁の彫刻の断片です。彫刻には背中合わせに立っている 2 人の男性が描かれており、おそらく戦車を運転しています。
こちらもニムルドの石灰岩の人面有翼雄牛、ラマッス像です。
どうもカルフ城塞には多くの門があり、門の正面玄関に必ずこうやって配置され、宮殿全体と街を見守っていたようです。
人間の頭を持つ雄牛は知恵を象徴し、ワシの翼はスピードを象徴し、雄牛によって強さを象徴としていたよう。
こちらも、カルフ城塞の別の門に置かれていたラマッス像、楔形文字の碑文があります。
ニムルドのカルフ宮殿が長くなってしまいました。バグダッドのIraq National Museumに展示されている大物遺跡のほとんどはアッシリアの遺物で占められています。南メソポタミア、いわゆるシュメールやバビロニア遺跡は大英やルーブル、ペルガモンに並んでいます。
略奪強奪、密輸、戦利品、若しくはきちんと購入したのかも知れません。すべてにおいて定かではありませんが、それもある意味致し方ないというか、むしろそれで良かったと思える場面もあります。
アッシリア時代から時は現代まで進み、西暦2003年。
イラク戦争開戦前夜の混乱に紛れ、イラク国立博物館は何者かに荒らされ何と16,000点もの遺物が盗まれてしまったそう。発見されたいくつかの盗品は、ほとんどが英国にあったそうで、やはり西洋絡みの密売組織があるのだと改めて認識。
更に時の進むこと2014年半ば。
北イラクを占領したイスラム過激派組織のISILは、シャルマネセル三世の遺したニムルド遺跡(カルフ要塞)を重機で潰し始めました。
2016年11月、イラク軍はニムルド遺跡をISILから奪回するも、宮殿は半壊した壁のみとなり、門を守るラマッス像は粉砕されて破片が一帯に飛び散り、大ジッグラトに至っては平らにならされ跡形もなくなっていたそうです。カルフ要塞の遺構の実に90%が完全に破壊されていました。
治安の不安定な国は、人だけでなく遺跡や遺物もリスクが高いのですよね。そう考えると、きちっと管理された西欧の美術館の方が格段に安全です。(私は腑に落ちないのですが。。爆)
ニムルド遺跡の破壊について、シリアの考古学者が「モンゴル帝国による中東の破壊を彷彿とさせる」と仰っていました。
今も昔も創造者あれば破壊者あり。こういった愚かな振る舞いが連綿と続いていくのが人間社会であり、それも歴史の一つなのですよね。
遺跡はもちろん、今の世界情勢を鑑みるに、人は歴史にこそ学ぶべき生き物だとつくづく思います。
つまり、人は歴史に学ばない。
ドイツのヘーゲルさんの唱えた、「歴史から学べるたった一つのことは、人間が歴史から何も学ばないということ」は、実に言い得て妙と思う今日このごろですわ。
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