2018年3月に訪ねたパキスタンの旅を綴っています。以前、簡易に書いたものに写真を大幅に足して加筆しています。
今日は、そこに行けばどんな夢も叶う何処かにあるユートピアへ向かいます。笑
ホテルを出てタクシーを捕まえるのですが、あまりにも遠い遥かな世界(?笑)らしく、どのタクシーに聞いても断られる。泣
こりゃアカン。
ホテルに戻ってレセプションに相談すると、自由で素晴らしいユートピア(シツコイ)へ行ってくれるタクシーを探すため、何件か電話をしてくれました。そして、一人捕まったようで、すぐに着くとのこと。
そして迎えに来たタクシーはボロボロ。ドライバーは英語を全く話さない。それは良いとしても、このドライバー、なーんか嫌な感じ。
これだったら自分で探すわ。と、せっかく来てもらったにも関わらず断り、自分で探すことに。
しかしやっぱり他は断られ続け、なーんか嫌なんだけど、このタクシーにしないと時間だけが過ぎていくので、すごすごと乗り込みました。
このとき、レセプションの人に「ここを周りたい」と4箇所の遺跡を告げ、通訳してもらっていました。いくらかも確認して出発。
結局、イヤーな予感は当たり、後ほどトラブルになります。
イスラマバードから車で一時間(結構近い。笑)、ガンダーラ王国の主要都市だったタキシラに到着ました。この周辺は一体が世界遺産になっています。
子供の頃、西遊記というテレビドラマを観ていまして、ゴダイゴの歌うガンダーラへ私もいつか行きたいと思っていました。
まさかあの御一行様たちが何年もかけて向かった自由な愛の国へ行けるとは!
先ずはガンダーラ美術を多く展示しているタキシラ美術館へ。
ここは、タキシラで発掘されたガンダーラ王国の出土品を展示しています。
ガンダーラは、テレビドラマの西遊記で、一行が目指した「天竺」への入り口でもあります。
私の時代の西遊記は、オープニングもエンディングもゴダイゴというグループが歌っていました。
彼らの歌う「ガンダーラ」という曲に、「They say it was in INDIA」と歌われてますが、当時の古代インドは現在の北インド、パキスタン、アフガンに跨がる一帯のことを言い、古代ガンダーラ王国は現在のパキスタンからアフガンに位置していました。
ここに展示されているガンダーラ美術は、つい10年前までイスラム原理主義グループのタリバンに狙われており、美術館にある全ての遺跡や遺物を安全な場所に移すことが真剣に話し合われてたようですよ。
現に、パキスタン北部の山中にあったガンダーラ美術は破壊されました。ここは、そうこうしているうちにタリバンが一掃されアフガンへ逃げていったので、移動を免れましたよ。
西遊記で彼らが目指していた、果てしなく遠いガンダーラのストゥーパが、何か宇宙と交信しそうな勢いです。笑
ガンダーラ文化の特長はヘレニズム。古代オリエントとアレクサンドロスの率いるギリシャ美術との融合が起こり、新たな文化が生まれました。仏陀がどこか西洋の顔をしてますよね。これらのヘレニズムの仏像はその後、日本にまで到達しますよ。
それを伝えたのは『玄奘』。ドラマや小説西遊記はフィクションですが、あのモデルとなった人物は実際に存在しています。
玄奘は仏教の経典を得るために、中国から何年もかけて、当時100を超えた道中の国々を訪問しながらインド(天竺)へ向かいました。
ガンダーラは、中国からヒマラヤ北部のシルクロードを伝いインド(天竺)へ入る玄関口です。
玄奘はインド(天竺)訪問後、経典以外に様々な仏像を中国へ持ち帰ります。その中には、ここガンダーラのヘレニズム仏陀もありましたよ。
玄奘は帰国後、持ち帰った仏教の経典をサンスクリット語から漢文へと、生涯に渡る翻訳に取り組みます。その仏教経典はその後に日本へ渡り、同時にガンダーラのヘレニズム仏像も日本へ輸入されています。
こちらの仏陀の首は、元々、首だけしかないものではありません。全て、モンゴル帝国に切り落とされたものです。あいつらめ!(詳しくは先に書いたトルクメニスタンの記事で!)
かなり大きなストゥーパ(仏塔)があります。
タキシラのガンダーラ美術については、まとめ記事でかなり詳しく書きましたので、もしご興味ございましたらこちらも読まれてみてください。
今回、タキシラを訪ねて思ったのは、、、
「ガンダーラ、あまり大事にされてないな。」
観光客を呼べるので運営はしますが、興味はない。という感をヒシヒシと受けました。トルクメニスタンほどではないですが、遺跡はほっぽらかし。
当時インドで発祥した仏教は瞬く間に広まり、日本に至るまでの近隣他国に多大な影響を及ぼしました。しかし、何故か地元では根付かず、インドはイスラム教やヒンドゥ教が多勢となっていきます。
パキスタンの正式名称は、「パキスタン・イスラム共和国」という通り、イスラム教を国教とする国です。インドと分離した今となっては仏教に縁もゆかりもない。
パキスタンにいる仏教徒もほんの僅かです。
そもそも、「この国はインドから分離建国された」という歴史を知っている人が少ない。というか、歴史を学んでいない。
この先も、いくつかの遺跡を巡りますが、驚くエピソードがあります。日本人の私達のほうが、あなた方の国の歴史について多く知っているようだ。と思えますので、それはまた後ほどの記事で。
なので、過去の仏教遺跡にピンと来てない。はっきり言ってどうでもいい感満載。もうちょっと丁寧に保存方法など考えてくれよ。あと道標。看板や、簡単でいいので説明文を立ててくれ(切なる願い)。
ところで、上述したタクシーの話。イスラマバードからタキシラまで来たのはいいのですが、途中からどうやら、私の遺跡見学にかかる時間が長過ぎるとムカついていたよう。
私が遺跡にいる人と話をしたり、詳しそうな人に説明を聞いたりしていると、外で待っているはずのドライバーが、早く行こうと迎えに来るのですよ。
おいおいおい。
ちょっと邪魔しないでもらえるかな。
ガンダーラ王国の遺跡をどれだけ楽しみに来たと思ってるんだ。
子供の頃から憧れていたんだぞ。
何で、あんたのペースに合わせなきゃならんのだ。と。
待つのもあんたの仕事だろ。と。
度々喧嘩になりました。言葉が通じないのに。笑
終いには「早く帰りたい」みたいな感じになり、
「帰れば?私、別のタクシー拾うから」
そして最後はお金で揉め、ホント気分悪かった。
見た瞬間から嫌な予感はしていたので、やっぱりそういう勘所は大事にしなきゃアカンなと、つくづく反省しましたよ。
ムカついて帰したはいいものの、イスラマバードであれだけ遠方タクシーが捕まらなかったので、ど田舎のタキシラからは更になさそう。
案の定、ぜんっぜん居ない。てかタクシーどころか、ろくに車が走ってない。。
途方に暮れました。
とりあえず先程の美術館まで歩いて行き、そこのスタッフに相談しようと戻ったところ、、、
たっまたま欧米人を乗せてきたタクシーが入ってきた。そしてどうも、その乗客を出待ちする雰囲気はない。
すぐに駆け寄って、「もしかしてイスラマバードへ戻る?」と聞くと、
「帰るよ!」
若い兄さんで、英語堪能で親切で、あぁ、ラッキー。
イスラマバードまで無事戻りました。
しかしそこでハプニング。
思いのほかキャッシュの減りが早い。店はもちろん、タクシーや遺跡、美術館の入場もキャッシュオンリーのため、空港でおろしたキャッシュは底をつきそうだ。特に遺跡や美術館は外国人価格で安くない。
時間もあるので今のうちパキスタンルピーを追加しようと思い、「どこかのATMに寄ってもらってもいい?」と銀行へ。
しかし、私の持っているクレカはどれも使用不可。クレカを入れた瞬間にエラーメッセージ。
「おろせないのだけど、何で?」と別の銀行へ行ってもらいATM試すも、そこもNG。
彼が、「国際クレジットカードなら、絶対ここは大丈夫」という銀行へ連れて行ってもらい、ATMへクレカを刺したら次画面へ進んだ。
よし、ここならイケる。そして、パスワードと金額を入力したら、今度は、、、
クレカ食われた!!
??
窓口ヘ行くようにとメッセージ。。
「クレジットカードを入れたら出てこなくなった」と伝えると、取り出しますので身分証明書の提示をお願いします。と。
なるほど。
パスポート持ってきてない。泣
あぁ。。もう。。
タクシーの彼に言ってホテルまで送ってもらい、パスポートを持ってまた銀行へ。
余談ですが、パスポート持って窓口の順番待ちをしてたところ、同じく順番待ちの男性が、どこからどう見てもアル・カ◯ーダ。笑
「何しに来たんだろ?」「軍資金の高額引き出しか?」「アルカイーダ?タリバン?どっち?」
「てか、何でこの気温でその分厚いブルゾン?(私は相変わらず半T)」「これから寒い北の山中で実射訓練か?」「銃刀は車の中か?(銀行入口は金属探知機あり)」「まさか住宅ローンの借入相談じゃないよね?」
↑
色々考えてたら1人でウケてしまった。失礼ですよね。彼は多分、ごくごく普通の一般市民です。
私の番号が呼ばれパスポートを見せ、クレカは返してくれたのですが、何で食われたのか原因がわからないので、リトライに躊躇する。
外で待ってくれている車まで戻り、彼にその旨を告げると「いくらおろすの?」と聞かれたので、「○○ルピーだよ」と伝えたら、、
「パキスタンのATMは引き出しの上限が決まってるんだ。」「そんな大金は引き出せない。」「だからさっき食われちゃったんだよ。」
一緒にATM前まで行き、
「ほら、ここに上限○○ルピーって書いてあるだろ?」
。。。
私は子供か。笑
彼のおかげで無事、お金を引き出せました。
ホテルまで送ってもらいサヨナラ!
いい人だったな。
あ、しまった。連絡先と名前を聞くの忘れた。SNS交換すれば良かったと後悔。別の話に夢中になってた。
そして、また昨日の店でマトンカレー。
ここで一人ポツポツと食べていたところ、突然、、、
瞬きの度にバッサバサと風が巻き起こりそうな付け睫毛に超濃メイク、ロングヘアにボディコン、20㎝くらい高さがあると思われるハイヒールを履いた背の高い女装男性が私の目の前にドカッと座りました。
「どこから来たの?」
店員はじめ客、そして外にいた人までが入り口から私たちを覗き込んで見ている。
私は一瞬怯んだものの、ここで動揺しては日本が廃る。
「日本から来ました。日本人です。」
と、ニッコリ笑顔で返答し、少し話をしました。
そしてここで初めて、パキスタン女性(ムスリム女性)は一人でレストランやカフェへは入らないということを知りました。
彼(彼女)は店の外から私を発見し、珍しい顔がいると思ったのですって。
そして色々と他愛ない話をしたあと、何も頼まず彼は颯爽と出て行った。
多様性を認めないイスラム教の国が多い中、パキスタンはトランスジェンダーのニュースキャスターや女性のパイロットが活躍し、サウジやイランなら死刑となる同性愛も罪にならないなど先進的です。
わざわざ店の中にまで入ってきて話しかけてくれたことがなんだか嬉しかったし、ジェンダーを超えて強く生きているように見えた彼に何かホッとした。
さあ、明日はフライト。歴史深い大都市へ向かいます。
西遊記や玄奘について詳しく書いています。
遥かに遠い愛の国ガンダーラ