ミュージシャンでプロになる方法 | バイク馬鹿 ロックベーシスト 西本圭介

バイク馬鹿 ロックベーシスト 西本圭介

テクニカルベーシストとしてベース・マガジンでも紹介 / ディープ・パープルのグレン・ヒューズ達と共にヨーロッパ11カ国を周り、また巨匠ビリー・シーンと共にKoRnのドラマー[レイ・ルジアー]のリズム隊として登場。

先日、若手ミュージシャンとプロになること、プロというと色々と考え方などが難しくなるので、簡単にいうと「飯を食う為のこと」を話す機会があった。

その中で僕が強調したことは、「音楽業界だからという特別な意識は捨てなさい」ということでした。
商売として別の職業を始めると思って、それを自分に当てはめてみてほしいとアドバイスしました。

例えば、僕がライブハウスを経営したことを想像してみてください。

僕はもともとライブハウス運営のプロではありませんでした。
ミュージシャンとサラリーマンの経験しかないので、本当に経営の素人。

ライブハウスで育ったタイプのミュージシャンではないので、そもそもライブハウスについてのアマチュア目線での予備知識も少ないレベルでした。

でも、今はライブハウスを経営しています。
まだまだ目標には届いていませんが、なんとか食えてはいます。

例えばライブハウスをやりたいとか、飲食店で飯を食いたい人は「ライブハウスで飯が食えるようになったら、プロとして必要な色々な準備をします。」というのは通りません。

目的が決まったら、場所を確保して改装工事や機材の購入や色々な申請や宣伝という物凄いお金を投資してスタートします。

そして開業した日からプロ意識を出して活動をしなければなりません。

アマチュアだという甘えは出せないのです。

では音楽でプロを目指すという人達がどれだけ、プロ意識でその為の準備や投資をしているでしょうか?

例えば、今やっているバンドで飯を食いたいとした場合に、そのバンドが商品としてお客様にお金を払ってもらえるものでなくてはなりませんし、仕事を取るツールも準備できていなくてはいけません。

仕事を取るためのお問い合わせ対応などもしっかりしておかなければなりません。

しかし、大抵プロ志向のバンドやアーティストに質問をするとホームページは一応あるけど、問い合わせの対応などはまともにしていない。

僕もいくつかのバンドにホームページからオファーをしたことがあるけど、返信が来ることはほぼありません(-"-)

これが普通の会社なら速攻で潰れます。

返信が来ない場合にそのバンドはメールチェックしているけど、興味ないから無視をされているのか、メールチェックをしていないのかわかりませんが、もしもそれが不動産屋だったり、ホームページ作成サービスの会社だったら、余程のチェーンメールや不特定多数に送られた広告メールではなければ、メール問い合わせを無視することは絶対にないでしょう。

お断りするなら、丁重にそういうメールを返信するはずです。

バンドはお仕事のお誘いをされたり、ブッキング依頼が来ることを受けるのが仕事なのですから、無理なら無理と返信しなければならないし、条件を提示したいならそういう返信をしなければなりません。

業界は狭いので、このライブハウスはえ~か、この人は無視しといてえ~かはありません。
業界でそういう噂や評判はまたたく間に広がります。

何も返信もしないというのは、プロを目指す以前の問題であり、社会人としてどうなのかと思うのです。

そういうバンドが音楽で飯を食える確率はかなり低いです。残念ながら.......

しかし音楽の世界ではそういうことは全く珍しくない光景です。

ホームページがあるだけマシかもしれないけど、運営出来ていないのなら、立ち上げないほうがむしろマシです。
更新されないページや問い合わせ対応出来ないホームページやフェイスブックは逆広報などでやらないほうがいいのです。

次に通常のライブ出演をプロモーションとして機能させられないプロ予備軍が多いこと。

そもそもプロを目指して集客出来ないのは、飲食店で全くお客様が来ないのと同じことなので、集客努力をしなければなりません。

チラシを作ったり、フェイスブックに投稿したり、練習スタジオに掲示してもらいに営業にいったり、自分達のワンマンライブを宣伝する為に対バンイベントに出演してチラシを巻いたり。

そもそも、音楽家としてのベーシックスキルは必要ですから、良い曲が書けない、楽器がまともに演奏出来ないのは問題ですけど、人には色々と好みもあるので、貴方がやっていることが万人から受けなくても、コアなファンに支持されていれば食うことは出来ます。

例えばラーメン店を始めるのに、誰が食べてもマズイラーメンを出すことはないでしょう。
かといって万人向けの必要もなくてコアなファンに支えられる味もあるはず。

ラーメンとして最低限食べられるというレベルはクリアーしていれば、まともな宣伝活動と経営をしていれば、やっていけるでしょう。

こうやって書くと音楽で飯を食べることは凄い高いハードルのように思われるけど、そうではありません。


僕の持論は通常の商売を始めるような段取りをしてれば、万人が最低限食える状態にはなると思っています。

貴方の町を見渡してください。
沢山の自営業の人達がいます。

潰れそうで潰れないラーメン店やお好み屋さん。

音楽で食うこと=武道館に出る。テレビに出ることではありません。

商売としての最低限をクリアーしていれば、その職業で食べられます。

ただ、物凄く儲かっているか、普通に生活出来るかの違いはあるでしょう。

ミュージシャンがプロを目指すということは、「運」「チャンス」などという不確定な要素ばかり語られますが、ある程度の商品としてのクオリティがあるのであれば、あとは宣伝や営業、受付対応などの仕事を取る為の仕事(営業)が重要になります。

仕事を取る活動、所謂「営業活動」をしなければ、仕事は来ませんし、そもそもチャンスや運ということを語るSTAGEにも立っていないということになります。

どんな良い商品でも宣伝しないと売れない。
これは過去の家電製品や車業界の競争の歴史でも明らかです。
性能がよければ売れる。それは間違っています。
宣伝しなければ売れない。

ミュージシャンとして飯を食うことと、自営業を始めることは同じことです。

商売をする為に必要な条件は一緒です。

商品があってそれをショーケースに並べて販売する。

商品であるアーティストのフェイスブックページに終始夢を壊すような愚痴ばかりではファンがつくはずもありません。
若い女性アーティストが彼氏とのおノロケエピソードばかり....(-"-)
男性客がつくでしょうか。

自分達がどういう商品かを理解して、その商品としてショーケースに並んでいるという意識。

僕自身はうちに来てくれるプロを目指しているアーティスト達にベストな方法でどうやってショーケースに並ぶかを教えることが出来ます。

ショーケースに並んだら、それを買ってもらえるように宣伝しなければならない。
その方法論やマーケティング戦略。

何に対して投資をしなければならないか、借金をしてでもやらなければならないこと。

そういうことを整理して考えていけば、音楽で飯を食うことは決して雲を掴むような事ではないし、錬金術でもありません。

そういうことを今後も若手としっかりと話しをして行ければと思う今日このごろです。