この空には、誰も知らない秘密が潜んでいる

 

本作は「ロンメルーゲームズ」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『デッドラインヒーローズRPG』の二次創作です。
(C)Takashi Osada / Rommel Games
(C)KADOKAWA

 

空に潜むモノ

PDF版はこちら⬇️

 

概要

「空に潜むモノ」は、プレイヤー3人用のシナリオです。想定されるプレイ時間は、キャラクター作成を除いて3〜4時間程度になります。

 本シナリオを遊ぶ場合、GMはデッドラインヒーローズの基本ルールブック(以下、R1と表記)に加えて、サプリメント「デッドラインヒーローズRPG 学園マッドネス」(以下、R2と表記)が必要になります。あらかじめご入手ください。

 

 

シナリオ・サーキット

 フェイズ 

イベント

概要
導入  空を見上げる少年   白川幸平と出会う
導入  散華  水野サラと別れる  
導入  調査依頼  ヒーロー達が集結する
展開  空の秘密  空に潜む秘密を追いかける
決戦  空から来たモノ  ウィンターステイシスの計画を食い止める
余韻  うたかたの邂逅  去っていった者達との邂逅を遂げる

 

エントリー

番号

 詳細

PC1  キミは個人的な理由で訪れた中部国際空港で、一人の少年と出会った。少年は、事故で爆散した旅客機に機長として搭乗していた父親の帰りを、ずっとずっと待っていた。(本エントリーでは、ヒーローが自分の正体を世間に対して隠していないことが好ましい)
PC2 ※テクノマンサー推奨

 キミはロックウェイブ島の科学者達と連携し、航空機事故の秘密を探っていた。その中で最もキミと親しい女性学者「水野サラ」が、調査のために飛び立った。……そして彼女は、二度と帰って来なかった。

PC3  キミは航空機メーカーの企業から調査を依頼され、例の空域へ向かうことになった。仲間である二人のヒーローを伴い、キミは空へ飛び立つ。

 

事前公開情報

リトライ  :2 □□

クエリー  :3 □□□

チャレンジ :2 □□

初期グリット:3 ■■■□□□□□□

PC人数    :3

推奨成長点 :0〜20点

 

○あらすじ

 謎の航空機事故が相次ぐ、死の空域。雲海よりなお航空に位置するその空域に、果たして何が潜むのか。ヴィラン組織「フォーセイクン・ファクトリー」……通称「ファクト」の第二派閥「ウィンターステイシス」の暗躍がチラつく中、ヒーロー達は事件の真相を追いかけることになる。
 事件を追いかける中で見えて来るのは、親子三代に渡る、とある家族の悲しい歴史。地上と空を結ぶドラマが紐解かれる時、ヒーローは空に潜むモノとの対決を迫られる。

 

※※※

導入フェイズ

イベント1[コンタクト]

登場:PC1
場所:中部国際空港

 

▶︎状況

 セントレアの愛称でも知られる、関西国際空港に次ぐ国内第2の海上国際空港。愛知県名古屋市の中心部から南へ約35km、常滑市の沖合約1.5kmの伊勢湾海上の人工島に位置し、24時間運用可能な長さ3,500mの滑走路を有している。そんな中部国際空港を、PC1は何らかの理由で訪れていた。
 空は生憎の雨で、飛行機を乗り降りする乗客達は、雨に濡れないよう苦心している様子が見える。そんな情景からふと視線をずらすと、ロビーのベランダから、傘もささずにジィッと空を見つめ続ける一人の少年がいた。隣にいる保護者らしき中年女性が、自分の傘に少年を入れてやっているが、少年は女性の方など見向きもせず、ただひたすらに空を見つめ続けていた。
 しばらくして少年がガックリと肩を落とすと、女性は少年の手を引いてPC1のいる方へ歩いてくる。すると女性は「あっ」と声を上げてPC1を見た。そして少年の手を引いて、早足で近寄ってくる。

「あのすみません、あなたPC1さんですよね。私、村松美樹子と申します。この子は甥っ子で……ほらコウちゃん、自己紹介しなさい」

 村松と名乗った女性に促され、少年が挨拶をする。少年の首には、銀のペンダントが鈍く光っていた。

「……白川幸平です」
「すみませんね。この子、色々あって今ちょっと元気がなくて。でも本当はPC1さんの大ファンなんですよ。コウちゃん、よかったわね。憧れのヒーローさんよ」
「……別に、いい」

 松村美希子と名乗った女性の紹介とは裏腹に、幸平少年の方はあまりPC1へ興味を示さない。それどころか、美希子の手を振り払って、再びベランダへ飛び出し空を見上げ始めた。

「大変失礼いたしました。申し訳ありません」
「……あの子、ああして来る日も来る日も父親を待っているんです。私の弟でもあるんですけど」
「弟は旅客機の機長でした。けれど弟は、先日の旅客機事故で……」
「原因は分かりません。飛行中に突如爆散したらしく。遺体も残らなかったと聞きます」
「弟の死は明らかです。けれど幸平は諦めきれずに……ああしていつも、ここでパパの帰りを待っているんです。それが不憫で……」

 涙を堪えきれず、美樹子はハンカチで目元を抑える。彼女の話はPC1もテレビの報道などで既に知っている。ここのところ、飛行機事故が立て続けに起こっているのだ。

 

▶︎解説

 白川幸平は8歳の幼い男の子だ。遺体のない父親の死を理解して受け入れるには、あまりにも幼すぎる。母親のいない彼にとって、父はたった一人の肉親であり、失い難い存在なのだ。彼の叔母である村松美樹子は、親のいなくなってしまった幸平を引き取っているが、幸平との関係はあまりうまくいっていない。彼女の夫や子どもも、空ばかり見ている幸平を気味悪がっており、幸平にとって幸せな環境とは言い難い状況である。

 

▶︎エンドチェック

①白川幸平と出会った。
②村松美樹子から幸平の事情を聞いた。

 

 

イベント2[散華]

登場:PC2
場所:ロックウェイブ島

 

▶︎状況1

 ロックウェイブ島。超人種研究を専門とする研究施設と、超人種の犯罪者を収監する牢獄という二つの側面を持つ”どこの国にも属さない”島である。このロックウェイブ島に召喚されたPC2は、昨今頻発する航空機事故の調査チームに加わって、一刻も早い事態究明に勤しんでいた。一連の事件が、超人種のパワーによってもたらされた人災である可能性を追求し、それが事実であればこれを食い止めなければならない。
 そして調査の結果、一つの事実が判明した。航空機事故が発生する空域をある程度絞り込むと、その空域内で異常な雲が発生していたのである。この雲は不規則に発生と霧散を繰り返している。何より異常なのは、この雲が内包する、電磁波としか形容のできない謎のエネルギーだ。
 雲の中に”ナニか”が潜んでいるかもしれない。そう考える、一人の女性学者がいた。水野サラ、30歳。ロックウェイブの研究員の中では、PC2にとって最も親しい人物だ。サラは少し変わった学者で、この星の空には未知の生命体が生息していると信じていた。彼女の仮説によれば、あの雲はその生物の巣である可能性が高いという。
 かくして彼女は、調査用に調達した小型飛行機に、電磁波を介して生命体とコミュニケーションをとるための装置を詰め込んで飛び立った。

 

▶︎解説1

 サラは日米ハーフの女性学者で、専門は気象学。ロックウェイブ島では比較的若手の学者であるが、その優秀さは折り紙付きである。客員研究員として招かれたPC2にとって、彼女はこのロックウェイブ島における最大の理解者であり友人、あるいは恋人であった。
 サラは空へ出発する際に、見送るPC2に「帰ったら忙しくなるわよ!」などと言って朗らかに笑う。彼女は明るく、非常に前向きな性格をしているのだ。
 なお、サラとPC2のエピソードは、のちのクエリーにおいても回想という形で語られることになる。

 

▶︎状況2

 ロックウェイブ島で、サラの機体をレーダーから見守るPC2たち。ところが雲にサラが接近すると、突如としてレーダー上から彼女の機体がロストしてしまった。雲が放つ、強力な電磁波によるものだ。サラからの通信も途絶し、残された者達は彼女の帰還を待つことしかできない。
 しばらくして、雲は消滅。だがサラの機体信号が復活することはなかった。彼女は、帰って来なかった。


▶︎解説2

 サラは雲の内部で成長していたUMA「グレムリン」に捕食されている。グレムリンは本来電離層に生息する極めて微小な生命体であったが、ウィンターステイシスによる電磁波照射を受けて凶暴化。低空に出現し、通りすがる航空機内の生命体を雲状に変身した状態で捕食していた。そうして地上の生命体の生態情報を取り込み、さらに生命体として進化を続けていた。

 

▶︎エンドチェック

①怪しい雲を発見した
②サラを見送った
③サラが空で消えた

 

 

イベント3[調査依頼]

登場:全員
場所:PC3の拠点

 

▶︎状況1

 特殊法人日本航空機設計なる組織からやって来たスーツの男は、名を夏木祥吾と名乗った。夏木の所属する特殊法人日本航空機設計といえば、近頃頻発する航空機事故のきっかけになった、二ヶ月前の試験飛行機爆発事故の犠牲になった試験機「レッドスワロー」の製造元である。

「我が日航設計は、二ヶ月にわたって事故の原因を探しましたが、事故当時、機体に異常はなかったというのが結論です。しかし各方面に調査を依頼したところ、機体の外に問題があった可能性が浮上しました」

 そう言うと、夏木はカバンから大きめの地図を取り出して広げた。
「四国沖の……そう、この空域です。ここでレッドスワローをきっかけに何機もの航空機が事故を起こしている。しかし正確には、突如レーダー上からロストし、後になって洋上に残骸が発見されているんです。事故の瞬間をとらえたデータは、今のところ存在しません。ですが……」
 次に夏木が取り出したのは、気象庁の発表した公文書である。この書類によると、数ヶ月前から四国沖で幾度となく、異常な電磁波を放出する雲らしき気象現象が、衛星から観測されているらしい。

「この異常気象が、飛行機事故を起こしている可能性は極めて高いと言えます。しかも気象庁の見解によりますと、この気象現象は自然発生する可能性は天文学的であり、それが頻発するとなれば、もはや何者かの関与を疑う余地はない、とのことでした」
「同じく調査を続けていたロックウェイブ島の研究チームも同様の気象現象を観測したらしいんですが……観測した研究員は、レッドスワローと同じ運命を辿ったそうです」
「私たち日航設計には、事故の原因を究明する責任があります。どうかお力をかしてはくださいませんか? PC3」

 

▶︎解説1

 夏木祥吾は二十代後半~三十代前半ぐらいの若い男性である。彼は特別仕事熱心というわけではないが、多数の死者を出しているこの一連の事件には、憤りや悔しさを感じている。PC3が彼の依頼を引き受けたら、描写は▶︎状況2へ移行する。

 

▶︎状況2

 夏木からの依頼を受けて、PC3は四国沖上空へ向かうことになる。だが空にはどんな危険が待っているかも分からない。最悪の場合、レッドスワローやロックウェイブ島の勇敢な研究員と同じ運命を辿ることになる。そこでPC3は、今回の調査に協力してくれるヒーロー仲間を招集することにした。

 

▶︎解説2

 ここでPC3は、PC1・PC2と合流をすることになる。合流の具体的な方法や状況については、プレイヤー同士の相談で自由に決めていい。

 

▶︎エンドチェック

①夏木から依頼を受けた
②PC達が合流を果たした

 

※※※

展開フェイズ

イベント4[コンタクト]

登場:全員
場所:九州沖上空

 

▶︎状況1

 問題の空域に挑むことになったヒーロー達。一体、空に何が待ち受けているというのだろうか……?

 

▶︎解説1

 チャレンジ・イベントだ。
 このイベントでヒーロー達は空に潜む脅威の一端に遭遇する。
 PCは自動的に全員登場する。PCがこのチャレンジを達成するためには、合計3回のチャレンジ判定に成功しなければならない。
 なお、以下の判定①~②をクリアしなければ判定③は発生しない。

 

▶︎チャレンジ判定

・判定①:交渉、科学、経済のいずれか
 飛行機を調達する

・判定②:知覚、隠密のいずれか
 問題の雲が次にどこへ現れるか予測する

成功:次の▶︎状況2、及び判定③に進んでよい

失敗:PCがこのチャレンジに成功しないまま展開フェイズを終了した場合、[浪費4]を受ける。なお失敗した状態でも次の▶︎状況2、及び判定③に進んでよい

 

▶︎状況2

 ヒーロー達は、問題の雲が出現すると予想された空域に到達した。計算が正しければ、そろそろ現れてもおかしくはない。
 ___やがて、答え合わせの時間が訪れた。レーダーがECM(電子戦妨害装置)の影響下にあるかの如く明滅を繰り返し始めたのだ。PC2の脳裏に、水野サラの笑顔が過ぎる。多くの命を吸い取った死の雲が、すぐそばにいるのだ。
 目視で周囲を確認していると、ついに問題の雲が上空に現れた。あの雲に、一体何があるというのか。調査のため、キミ達は高度を上げて雲に接近する。___だがその瞬間、雲の内部から、鋭い閃光を放つエネルギーのパルスがキミ達に襲い掛かった!

 

▶︎解説2

 引き続き、チャレンジ・イベントだ。
 この判定③に限り、雲海に潜む未来人バスカによるパワー【リセット】の妨害が1回だけ発生する。GMはバスカの名前は出さず、奇妙な現象が発生したというていでプレイヤーに説明してほしい。

 

▶︎チャレンジ判定

・判定3:操縦+10
 雲からの攻撃を回避する

成功:次のイベントに進んでもよい。

失敗:PCがこのチャレンジに成功しないまま展開フェイズを終了しても、特にペナルティは発生しない。

 

 

イベント5[空に夢を]

登場:全員→PC2
場所:九州沖上空→PC2の回想

 

▶︎状況1

 雲から放たれるパルスを回避して空域を脱出しようとするヒーロー達。ところがそれを遮るかのように、雲海を切り裂いて、流線型のフォルムをした飛行物体が現れる。ヒーロー達の乗るマシンよりもはるかに大きいそれは、アンテナのような突起から怪光線を発射! 避けるまもなく怪光線に飲み込まれ、ヒーロー達は意識を失った。

 

▶︎解説1

 この飛行物体は、未来人バスカが未来からもたらしたテクノロジーで建造したUFOである。

 

▶︎状況2

 意識を失ったPC2は、夢の中で過去の記憶を思い出していた。連続する航空機事故の真相を究明するべく、水野サラとともにロックウェイブ島で研究を続けていた頃の夢である。
 夕焼けの空を見上げながら、サラがPC2に語りかける。彼女の髪は潮風をはらみ、さらさらと流れるようにたなびいていた。

「私の恩師が言っていたんだ。”空想することは素敵なことなんだ”って。科学者として、空想にばかり耽ってしまうのはどうなんだろうって当時は思ったけれど……」
「今なら分かる気がするよ。この世界にはきっとまだまだ不思議がたくさんある。超人種の誕生、宇宙や異世界からの訪問者、それだけじゃない。見落としていた領域にも未知の何かがきっと存在する」
「空には何かがいる。それが人類にとっていいモノであっても、残念ながらそうではなかったモノであっても、私は素晴らしい出合いになると信じている。残念ながら、最初の出会いは事故という悲劇に終わってしまったけれど」
「___なんて、不謹慎すぎたかな?」

 サラの恩師は、かつて電離層に生息するとされる未確認生物の研究に打ち込んでいた。学会から遠ざけられ、異端として日陰に生きていた彼女の師匠は、志半ばにして10年前に命を落とした。彼の遺志と研究を継いで、サラは今日まで頑張ってきたのだ。
 PC2は彼女の思いに、どう答えたのだろうか?

▶︎解説2

 PC2のクエリー・イベントである。
 これはあくまでPC2とサラの過去であり、現在進行形の出来事ではない。したがってここでのやりとりがどんなモノであったにせよ、サラが空から帰ってこなかった結末が揺らぐことはないのだ。
  なおPC2とサラの関係が如何なるモノであったかは、自由に決めて良いものとする。

 

▶︎エンドチェック

①バスカのUFOに撃墜された
②サラとの会話を回想した
③グリットを1点得た。

 

 

イベント6[約束]

登場:PC1
場所:記者会見→白川家

 

▶︎状況1

「大丈夫ですか!? 大丈夫ですか!?」

 目を覚ましたPC1の目の前にいたのは、袖に金のラインが入った黒いスーツの男性だった。男性はPC1と同じく全身ずぶ濡れだ。
 男性に助け起こされて周囲を窺うと、そこはどこかの砂浜だった。周囲には地元民の人だかりができている。
 どうやらあのUFOに撃墜された後、PC1は海を漂流してこの砂浜に打ち上げられたらしい。

「私は白川誠司。見ての通り、旅客機のパイロットをしていた者です」

 ___白川誠司。中部国際空港で出会ったあの幸平少年と、同じ苗字のパイロット。生存を絶望視されていた彼が、まさか生きていたというのか。

 

▶︎解説1

 白川誠司は、自分が機長として搭乗していた飛行機が、唐突に出現した雲に飲み込まれたところまでしか記憶していない。PC1とほぼ同時にこの砂浜に流れ着き、少し早く目を覚ましたのだという。
 ……が、それは全て嘘である。彼の正体は、未来人バスカに命じられて白川誠司に擬態した、ウィンター・ステイシス所属の工作員だ。

 

状況2

 白川機長、奇跡の生還。PC1のお手柄。そうマスコミに囃し立てられながら、白川誠司とPC1はあの空から帰ってきた。誠司にとってたった一人の息子・幸平が涙ながらに出迎える。

「パパ! パパ!! やっと帰ってきてくれたんだね! ずっと待っていたんだよ!」
「ただいま幸平。いい子にしていたかい?」

その後、誠司の姉である美樹子の提案もあって、一同は白川の家に向かうことになった。
 今のPC1にできることは、あの空で生き別れになった二人の仲間の生存を信じて、再びあの雲とUFOに立ち向かうことだけだ。
 そんなPC1を、誠司は手助けできるかもしれないと口にする。

「私の父は、電離層に生息するとされる未確認生物の研究に没頭する変人でした。あの雲や、あなたの言うUFOと関係があるかどうかは分かりませんが、きっと父の遺産が道を示してくれます」
「とは言え僕は素人ですし、父の研究資料はあまりにも多い。どうか手がかりを探すのを手伝ってはいただけませんか」

 

▶︎解説2

 白川誠司の父親と、水野サラの恩師は同一人物である。誠司に成り済ました工作員の言葉に嘘はない。しかし当然ながら、本当のことを語っているわけでもない。
 彼の真の目的は、誠司の父が残した資料を手に入れることで、現在生物兵器として育成中のグレムリンを完璧なものにすることだ。

 

▶︎状況3

 その日の夜、PC1は村松美樹子に呼び出され、客まで相談を持ちかけられた。

「ねえPC1さん。幸平は喜んでいるけれど、弟は本当に弟なんでしょうか。飛行機が墜落して何日も経ってから、機長一人だけが生還だなんて、いくらなんでも信じられなくて」
「それに誠司は、研究にかまけてばかりの父を嫌っていました。だから父の研究になんてこれっぽっちも興味を持たなかったはずなんです。電離層がどうとか、私だって知りませんでした。なんだか嫌な予感がするわ……」

 彼女の言葉に言い知れぬ不安を感じたPC1は、幸平少年の寝室に向かう。そして寝室の扉を開くと、幸平少年の枕元に置かれた彼のペンダントを手に取り、中身を開いてほくそ笑む白川誠司がいた。

「フフフ、まさかペンダントに偽装して研究データを遺し、孫にプレゼントしていたとはな。これを使えば、グレムリンは完全な生物兵器として完成する。バスカ様も、御喜びになるだろう……ムッ、お前はPC1! もしや聞いていたな!」

 白川誠司は、昼間の誠実そうな顔つきからは信じられないような卑俗で悪辣な形相になると、PC1に挑みかかってきた。もちろんヒーローであるPC1の敵ではない。簡単に倒し、ペンダントを奪い返すことができる。
 だがその騒ぎの中、幸平が目を覚ましてしまう。

「やめて! やめてよPC1! パパをいじめるな!」

 幸平が庇ったために、誠司に成り済ました工作員は窓からまんまと逃げおおせてしまう。
 ともあれ、敵の正体はだんだん見えてきた。となれば、このペンダントは対抗手段になり得るだろう。幸平少年を説得して、ペンダントを譲ってもらおう。

 

▶︎解説3 

 PC3のクエリー・イベントである。
 このペンダントを譲ってもらうようPC1が説得RPを行うと、幸平は「パパと約束したんだ! このペンダントはおじいちゃんの形見だから大事にするんだよって! 誰にも渡したりしない!」と拒絶する。それでも辛抱強く説得を試みるなら、幸平は以下のように条件を出す。

「なら約束して。このペンダントと引き換えに、パパを連れ戻して。絶対だよ」

 幸平の出したこの条件を承諾するか否かは、PC1が自分で選択して結論を出すこと。

 

▶︎エンドチェック

①白川誠司(?)とともに生還した
②白川家を訪れた
③ペンダントを手に入れた
④グリットを1点得た

 

 

イベント7[バスカの計画]

登場:PC2、PC3
場所:バスカのUFO

 

▶︎状況

 PC2、PC3が目を覚ますと、そこは薄暗く狭い部屋の中だった。全面が白い金属の壁で覆われ、窓の一つもない。そんな中、まるでアイスクリームがどろりと溶けるようにして壁に一つ穴が開き、そこから未来人バスカが現れた。

「ようこそヒーロー諸君。気分はいかがかね?」
「ここは君たちを撃墜したUFOの中だよ。一人海に落としてしまったが、キミ達だけでも助けねばと思ってね」

 白々しい言葉を並べながら、バスカは邪悪な笑みを堪えきれないといった様子でいる。もし彼に目的を尋ねるなら、彼は待っていましたと言わんばかりに語り始める。

「___将来、人類はこの星の電離層に生息する生態系を発見することになる。だが彼らは、人類文明が待機中に放出したガスや電磁波の影響を受け、ほとんどが死滅している。知らぬ間に人類は、隣人を絶滅に追いやってしまうというわけさ」
「だから私は、この時代の彼らに、絶滅するより前の段階で逆襲のチャンスを与えてやろうと思ったわけさ。我がウィンターステイシスが開発した、『ゾートG物質』を投与し、群体である彼らをより高次の生命へ進化させる。『グレムリン計画』だよ」
「これまでの実験で、成長したグレムリンは電離層よりはるかに低空で生息できる段階まで進化することに成功した。諸君も見ただろう、あの雲を! 最終段階に到達した時、グレムリンはあの雲状の巣から解き放たれるのだ。より進化した生命体としてな!」
「さて、グレムリンは大食いでね。元々生息していた電離層では群の仲間同士、共食いをすることも珍しくなかった。我らも彼らを飼い慣らすにあたって餌が必要になってね……適当に近くを飛んでいた飛行機の乗員を、餌として提供させてもらった」
「おかげでグレムリンはすっかり人の味を覚えたよ。地上に彼を解き放てば、多くの人類が食われるだろう」
「私はこう見えて綺麗好きでね。増えすぎた人類がこの地球を汚してダメにしてしまう未来というものに、飽き飽きしているんだ。その未来を回避する手伝いを、グレムリンとともにしてあげようというわけなんだよ」
「さて、懇切丁寧に全て説明したわけだから、聞き分けの良い諸君はもう分かっただろう? 地球の未来のためにも、地上の人類は少々数を減らすべきだ。これ以上邪魔せず、ここで大人しくしていなさい」

 PC3はヒーローとして、なんと答える?

 

▶︎解説

 これはPC3のクエリー・イベントだ。
 未来人バスカの言葉は、あまりにも尊大だ。未来から来たというだけあってスケールこそ大きいが、彼にとって過去の世界である現代を生きる人間すべてを見下し、蔑ろにしている。

 

▶︎エンドチェック

①バスカからグレムリン計画の全容を聞いた
②バスカの問いかけに答えた
③グリットを1点得た。

 

 

イベント8[襲来]

登場:全員
場所:常滑市

 

▶︎状況1

 PC3がクエリーに答えた後、バスカの背後から長髪の女が現れる。和装に身を包んだ、鋭い刃のような女だ。PC達は、ひょっとするとこの女がロックウェイブ島から脱獄したフォーセイクン・ファクトリーのヴィラン「殺芽」であることを知っているかもしれない。

「バスカ、先ほど工作員から連絡がありましたよ。PC1が生き延びていたとか。しかも白川博士のデータを盗む作戦を邪魔されたらしいです」

「何ぃ、PC1が作戦の妨害を!? 度し難い馬鹿どもめ、なぜあいつが生きていたと早く報告しなかったのだ! ええい仕方があるまい。グレムリンを覚醒させろ! PC1が生還してしまっている以上、もはや白川博士の研究成果を手に入れる余裕はない!」

 短い手足をバタつかせ、バスカが部屋から出ていく。それからしばらくして、UFOは加速。浮遊をやめて、どこかへと急速に向かって行った。

 それからしばらく後、日本の愛知県、常滑市にUFOは襲来。その後をついて来るように、バチバチと放電を繰り返す暗い雲が現れる。UFOがその雲に怪光線を発射すると、雲ははじけ、内部から大量の怪物=グレムリンが飛び出した。様々な色や形質を持ったそれらは、群れとなって街の人々の捕食を開始した!

 

▶︎解説1

 チャレンジ・イベントだ。
 このイベントでヒーロー達は、再集結をはかり、同時にグレムリン達から市民を守ることになる。
 なおグレムリンは、つるりとした表面に一つ目を怪しくギョロつかせる、魚介類によく似た浮遊生物である。未来人バスカに投与された『ゾートG物質』の影響で、元々のそれより遥かに巨大化・凶暴化している。

 

▶︎チャレンジ判定

・判定①:運動、操縦、作戦のいずれか
 UFOから脱出する。なおPC1が成功した場合は、PC1がUFOから救出したことになる。

・判定②:心理、作戦、交渉
 市民を避難させる。

・判定③:追憶、化学
 白川博士の遺した研究記録からグレムリンへの対抗策を見出す。

成功:再集結したヒーロー達は、白川博士の遺したペンダントに封じられたデータを元に、グレムリンの元となった生物がある特定の電波に弱いことを突き止める。そのことをG6に連絡すれば、G6は即座に対グレムリン用の電波照射装置を準備してくれる。
 次のイベントに進んでもよい。

失敗:PCがこのチャレンジに成功しないまま展開フェイズを終了した場合、決戦でグレムリンが毎ラウンド3体、エリア4に出現するようになる。

 

※※※

決戦フェイズ

イベント9[空から来たモノ]

登場:全員
場所:常滑市

 

▶︎状況

※以下の状況は、全てのチャレンジに成功していることを前提とした内容である。GMはセッションの状況に応じて、適宜内容を改変して描写すること。

 ついにグレムリン達との対決だ。これ以上、常滑の市民を奴らの餌にくれてやるわけにはいかない。G6から派遣されてきた1等星以下のヒーロー達が、対グレムリン用の電波照射装置を配備してくれたおかげで、勝負は五分五分まで持込そうだ。
 ヒーロー達がいよいよ決戦に挑もうとしたその時、逃げ遅れた子どもの泣き声が戦場にこだまする。

「パパ~! パパどこなの~!」

 白川幸平くんだ! 父親を迎えに中部国際空港へ行く途中、グレムリンの襲撃に遭ったのだろう。
 だが最悪なことに、彼の泣き声を聞きつけたグレムリンの何匹かが、猛スピードで襲来。あわやこれまでかというピンチに陥るが……すんでのところで、幸平少年は何者かによって庇われ、休止に一生を得た。
 一体誰が、彼を助けてくれたのか。ヒーロー達からは、建物が倒壊した折に舞い上がった砂埃のせいでよく見えない。だが、その人影が導いてくれたおかげで、幸平少年は安全にこの戦場から離脱できたようだ。
 さぁ、もはや市民を巻き込む憂いはない。全力で戦うのみだ!

 

▶︎解説

 チャレンジ2に成功している場合、戦場の外側からG6の応援が電波を照射してくれている。そのためグレムリン達の数は、ヒーロー達が充分に対応できる程度まで落ち着いている。逆に、チャレンジ2に成功しないまま展開フェイズを終了していた場合、この決戦でグレムリンが毎ラウンド3体、エリア4に出現するようになる。


・勝利条件
 
敵を全滅させる。

 

・敗北条件
 PC全員が[戦闘不能]もしくはロストする。

 

・PC初期配置
 エリア1、または2

 

・NPC初期配置
 エリア3:グレムリン×3
 エリア4:未来人バスカ、殺芽、UFO×2

 

・NPC

 未来人バスカ:D1 p.191

 殺芽:D1 p.190

 グレムリン:クリプトスウォーム(D2 p.128)のデータを使用。パワー名称は・捕食者たちに変更。

 UFO:蒸気戦闘機ブルトンDr.Ⅱ(D2 p,129)のデータを使用。パワー名称は・怪光線に変更。

 

 

※※※

余韻フェイズ

余韻[うたかたの邂逅]

 決戦が終了すると、余韻フェイズが始まる。

・全滅した
 キミ達は戦いに敗れた。グレムリンによる人類の捕食活動はこれからも続く。人類は新たな脅威を前に、キミ達抜きで立ち向かわねばならない。

・勝利した
 未来人バスカは、計画の失敗をさとると、どこかへと姿を消してしまう。殺芽は殺し合いに夢中になるあまり、すっかり逃げ遅れてPCらに逮捕されてしまうだろう。とにかく悪の脅威が去り、常滑の街に再び平和が戻ってきた。

 折り重なるグレムリンの死体が、無数の極小生物の群れに分裂・放散し、空へ散っていく。そんな彼らを導くように、ロックウェイブ島の研究施設のロゴが刻まれた一機の航空機が空へ飛んでいく。PC2はその飛行機が、あの日飛んで行ったきり帰ってこなかった、彼女のそれであると気付けるだろう。

 そこへ、白川幸平が駆け寄ってくる。そしてPC1に「パパに会えたよ」と報告してくる。グレムリンに食べられかけた時、とっさに自分を庇ってくれたのはパパだったと。彼は語る。そしてパパは、また空へ還って行ったのだ、とも。

「___霊魂の正体はプラズマであると、獄中のDr.ドミニオンが言っていました。プラズマ状態の電離層に生息していた生物を進化させたものがグレムリンであるなら、彼らの持つプラズマエネルギーが、死者とのうたかたの邂逅をもたらしてくれたのかも……いえ、忘れてください」

 連行されていく殺芽がふと、思い出したかのようにヒーロー達に告げる。彼女の言葉の真偽は分からないが、科学が進歩したいつかの未来に、その答えは見つかるだろう。

 

「空に潜むモノ」 FIN.