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真新しい屋台が動き出すと積まれたどんぶりが僅かに音をたてた。
分かっていたことだがスープにガスボンベ、水などを積んだ屋台は相当な
重さになる。
しかし、大変だと分かっていてもこの重たさが謙三には心地良かった。
それは春子が二人で引きたいと望んだ重さだからだ。
躰全体に力を込め一歩づつ前に進むごとに屋台のスピードが上がっていく。
すると二十メートル程進んだ所で謙三の口元が僅かに緩み笑みがこぼれた。
誰かが屋台の後ろから押してくれているような感覚が伝わって来たからだ。
勿論現実は慣性だと分かっている。
重く不安定なものをリヤカーなどで引くとこの様に感じることがあると。
それでも春子にがんばれと後押しされているようで嬉しかったのだ。
「しっかり押してくれよ」
後ろに春子が居るかの様に謙三はほんの少し顔を横に向け小さな声で呟いた。