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「春だよ、眼を覚まして。春だよ、早く起きて。おいしいお水を沢山あげるよ。
出ておいでお日様が微笑んでいるよ。ヨナムナム・ド・イルギナム。ムルバナム・
ヤル・イルギナム。若葉よ出でよ、花をさかせ。ヨナムナム・ド・イルギナム。
ムルバナム・ヤル・イルギナム」
メイルは蒔かれた種の向って春のお日様の様な笑顔で微笑み掛けた。
するとその中の一つの種に被せた土がもこもこと盛り上がったがそこで止まった。
「ん?」
全員が盛り上がった土に顔を寄せると、少しの間を置いて中からポンと弾ける様に
青々とした若葉が顔を出した。
「出たー!」
一斉に声が上がる中、メイルが尚も魔法を続けると、もこもこ、もこもこ、
そこいらじゅうで若葉が顔を出す。
「さー出ろ。もっと出ろ。じゃんじゃん出ろ」
チキとタキが種の周りを儀式の様な踊りで練り歩く。
やがて全ての芽が出揃うとメイルは腰が砕けるようにしゃがみ込んだ。
何気なく行っている様に見える発芽の魔法だが、実は沢山の気力と体力を使うのです。
「ふー」
深呼吸しているメイルをスコットタントがそっと持ち上げた。
「タント・・」
メイルはスコット・タントの両手の中で軽く立てた指に身体を預けて横になっている。
「メイル、ごくろうさま。がんばったね」
「みんながんばったよね」
すると大きなガジュマルの木が二人に言った。
「森の妖精メイルよ、本当にありがとう。少しでも気力が戻るように私のうろの中で
休んでおくれ」
「ありがとう・・」
そう言い終えるとメイルは身体を横に向けそっと眼を閉じると既に眠りについたのか
動かなくなった。
「よっぽど疲れたのでしょうな」
側に来ていたチキがスコット・タントの肩までよじ登りうろで寝ているメイルを覗き込んだ。
「そうだね」
スコット・タントは大きなガジュマルの木に出来たうろの中に安らかな寝顔で眠りに
付いているメイルをそっと寝かせた。
「でもまあ寝ていていくれると静かで・・」
「し」
スコット・タントは人差し指を口に当て耳を澄ました。うろからメイルの小さな寝息が
聞こえて来る。
二人が眼を合わせて微笑を浮かべる横をオレンジに染まる空を写した小さな小川が
芽吹いたばかりの若葉の横を静かに流れていた。