たんと21 | 尾川永次のブログ

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小説、ポエム、旅日記などなど徒然なるままに行きたいと思っています

      スコットタント21

大きなガジュマルの木まで走り寄るとチキはその小さな身体で大きなガジュマルの木
を止めようとした。

「何で止めるの、チキ。タントを助けるんだよ!」

「彼は自分の命を掛けようとしてるんだ!」

「え、どういうことなの?」

大きなガジュマルの木が叫んだ。
「そこをどくんだ!」

「駄目です。とにかく、とにかく一旦止まって下さい!」
チキとタキは身を呈して大きなガジュマルの木を止めた。
「はあ、はあ・・」

腰が抜けてしゃがみ込んだチキとタキのところにメイルが来た。
「どういう事なのチキ?」

「か、彼が今まで生きて来られたのはとてつもなく長い根を地中深く広範囲に伸ばして
 地中に存在する僅かな水を吸っていたからです。つまり彼が移動する為には地下に
 張った根を切る事になるんですよ」

「さっきの何かが切れる音がもしかして・・」

「そうです。張り巡らされた根が切れる音です。つまりタントの所まで移動したらその根が
 全て無くなって水を得る事が出来なくなってしまうんです。そうなったら数日で枯れて
 しまうでしょう」

「ほんとうなの、ガジュマルさん?」

「旅の途中にも関わらずお前達は森を生き返らせると言ってくれた。そのお前達の命と
 引き換えに生きていたいとは思わない。それに水が出なければ遅かれ早かれじきに
 枯れる。だったらタントを助けて水が出れば俺は駄目でも新しい森が出来るかもしれない」

チキは腕組みをして少しの間考えたがゆっくり頷くと大きなガジュマルの木を見た。
「あなたの言う事が正しいようですな。タントを助けて下さい。お願いします」

「チキ!いいのそれで?」
メイルが悲しみに溢れた顔をして言った。

「タントを助けなければ我々も先はないですからね」

「よし、行くぞ」
再び大きなガジュマルの木が根を突き立て身体を持ち上げると
大きな切断音と共に歩き出した。