たんと 20 | 尾川永次のブログ

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小説、ポエム、旅日記などなど徒然なるままに行きたいと思っています

     スコットタント 20

思いも寄らないチキの言葉にメイルは自分の耳を疑った。

「チキ、今なんていったの?」
「助けられないと言ったんですよ」
「何でそんなこと言うの。やってみなきゃ分かんないでしょ!」
「此処には我々しか居ないと言う事ですよ。もし、ロープが有ったとしても
 我々の小さな身体でどうやってタントを引き上げるんです?」

それはメイルにも分かっていた事だった。メイルの眼に見る見る涙が溢れた。
「そんなの駄目だよ。チキ何とかして、お願い・・」
「色々考えて見たんですが助ける方法が思いつかないんですよ」

絶望と言う名の空気がメイル達に重く、重く圧し掛かる中、二人の耳には
スコットタントに向って呼びかけるタキの声が響いていた。

やがて俯いていたメイルが何かを思いついたらしく顔を上げると力強い声で言った。
「そうだ!鏡だ!鏡でタントに光を当てれば」
そう言うと同時にメイルは魔法で身体を手鏡に変えた。
「チキ、これでタントに光を当てて」
だがそれを観たチキは眼をつぶり頭をゆっくりと振った。
「私も考えましたが、その大きさでは動けるほどの電気を溜める事は不可能でしょう。
 この穴の深さでは太陽が上がったらタントには当てらないんですよ。そしてタントに
 直接太陽の光が当るのは一年の内で数日、しかも十数分なんです」

元の姿に戻ったメイルは座りこんだまま泣き続けた。
「タントを助けるんだよー」
チキは泣きじゃくるメイルを見ながら呟いた。
「私達もいつまで生きられるんだろうか・・」

その時だった。絶望に立ち尽くしていたチキの耳に大きな音が聞こえてきた。

「え?」

振り向くと大きなガジュマルの木が何本もの根っこを地面に突き立て動こうとしていたのだ。

「待ってろ。今俺が助けるからな!」大きなガジュマルの木が大声で叫んだ。
「ほんとなの?」
その声に立ち上がったメイルの顔が喜びに満ち溢れて行く。
「ガジュマルさん、ありがとう!」
メイルは木の枝に飛び乗ると大きなガジュマルの木を抱きしめた。

やがて何かが切れる音が地下を伝わってチキの身体まで響いて来た。
その瞬間、チキは全てを理解したと同時に叫んでいた。

「駄目だ!メイル、止めさせるんだ!タキも手伝え!」