たんと 19 | 尾川永次のブログ

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  酒本幸平のブログ  物語とは関連はありませんがスコットタントのデザインです。


             スコットタント 19

”カチャ、ブーン”
胸の辺りに在るタイマーの切れると、身体に電気が流れスコットタントは眼を覚ました。
しかし明るいはずの辺りは真っ暗で隙間からこぼれる僅かな光が分かる程度だった。
「あれ、何で暗いんだろう?」
スコットタントが頭に乗せている電球を光らせると暗い原因が直ぐに分かった。
周りを木の根が包み込む様に覆っていたからである。
「これは・・」
すると木の根が少しづつ地面の中に入り辺りの視界が開けると、遥か地平線に昇る太陽が
朝を告げていた。
スコットタントは振り向いて大きなガジュマルの木に挨拶をした。
「おはようございます」
「おはよう」
「木の根をありがとうございます」
「俺に出来るのはこのぐらいだからな」

スコットタントは辺りをキョロキョロと見渡すと大きな岩を見つけた。
「あそこがいいかな」
スコットタントは少し離れた大きな岩によじ登ると、電気を蓄える為に軽く手を開いて

太陽に向って
座った。
降り注ぐ太陽の光で身体に力が湧いてくるのが分る。

やがてバッグの中からチトとタキがはい出て来た。
「いやー、気持ちよく寝られましたな」
両手を広げ朝の空気を胸一杯に吸い込んだチキの横でタキは眠気眼で呟いた。
「腹へったー。ごはんはー」
「タキ、少しは我慢してくれよ、旅は長いんだからね。それよりこうして朝の空気を胸いっぱい
 に入れると気持ちがいいんだ」
「胸が膨れても腹はふくれない。じゃあ寝る・・」
タキは再びバッグにもぐりこんだ。
「まあこれの方が静かでいいかな。それより準備しないとね」
チキは木の実を袋から全部出すとより良い森を作る為に種を種類別に分け始めた。
「これは乾燥に強くて、これは寒さに強いと・・」

少しするとバッグの横に置いてあった壷からメイルが勢い良く飛び出した。
「おはよー。あれ、タントは?」
「あそこの岩の上に」
「ありがとー」
メイルはスコットタントの下へと飛んだ。
「タントおはよう」
「おはようメイル」
そう言うとスコットタントは立ち上がり岩を降り始めた。
「食事は終わりなの?」
「掘りに行くよ」
「もう?」
「チキ達の食料の事もあるし、長居は出来ないからね」
スコットタントは岩を降り昨日掘った穴へと歩いて行く。
「朝ご飯食べたら行くネー」
スコットタントは笑顔で振り向いた。
「メイルには魔法を使ってもらうんだから力を溜めといてね」
「分かった」
スコットタントの言葉通り、メイルは蜂蜜を食べると大きなガジュマルの木の枝で休むことにした。
森の精霊たるメイルは森の力で魔法を使う事が出来るのである。
メイルは大きなガジュマルの枝に座り木に寄り添うように身体を預けた。
「力一杯ちょうだいね」
「ああ、勿論だ」

大きなガジュマルの木の枝で心地よい風にうたたね寝をしていたメイルが眼を覚ました。
お陽様の位置からすると二時間程が過ぎたようだった。

メイルは下に居るチキに訊いた。
「あれ、タントは?」
「掘っているようですよ」
「あれからずーっと?」
「はい、私の観る限りでは上には上がって来てないかと」
その言葉でメイルの顔がみるみる緊張していく。
「大変!そんなに長く暗いとこで仕事してたら電気が無くなっちゃうよ!」
「え?」

唖然とするチキを残してメイルは急いでスコットタントが居る穴へ向った。

「タント!タント!聞こえる?返事して!」
メイルが穴の底に向って叫びながら下に降りると暗い穴の底でスコットタントが
狭い穴の底で力無く座り込んでいた。
「タント、大丈夫?」
僅かに残っていた電気でスコットタントが言った。
「メイル・・、ごめん・・電気が・・切れちゃっ・・」
「今、チキ呼んで来るからね」

メイルが急いで穴の上に上がるとチキとタキが心配そうな顔で穴を覗き込んでいた。
「あ、チキ。タントの電気が。早く助けないと!」
だがチキからは思いもよらぬ言葉が返って来た。
「無理ですね・・」

「え?」