たんと18 | 尾川永次のブログ

尾川永次のブログ

小説、ポエム、旅日記などなど徒然なるままに行きたいと思っています

      スコットタント18

スコットタントが大きなガジュマルの木の側で焚き火の準備を始める中、メイルは木の
根元の置いてあったディバッグから蜂蜜の入った壷と木の実の袋を取り出していた。

「まだ明るいが掘らないのか?」
大きなガジュマルの木がメイルに訊いた。
「うん。タントは太陽の光が無いと動けなくなっちゃうから穴の中にずーっとは居られないんだ」
「そうか、私と同じだな」
「メイルー、蜂蜜と木の実の袋は?」タントがメイルに歩寄りながら言った。
「今出してるー」

すると大きなガジュマルの木がタントに訊いた。
「タント、一つ訊いていいか?」
「はい」
「お前はあんな穴を掘ることが出来る力を持っているのにさっきは何で逃げ出す事に
 使わなかったんだ?」
「貴方に僕達を傷つけるつもりは無かったし、これは穴を掘ったり畑を耕したりする道具で
 誰かを傷つける為に有るわけではないですから」
「そうか」
「上手く行けば明日には水が出るかもしれません」
「そうなるといいな」
「祈っててくださいね」
「タントこれ」
メイルは木の実の袋を外に放り投げると直ぐにバッグに入り今度は自分と同じ位の大きさの
蜂蜜が入った壷を抱えて出てきた。
「重ーい。早く持ってー」
メイルはスコットタントに助けを求めた。
「はいはい」
「ありがと」
スコットタントが袋と壷を持つとメイルはスコットタントの肩に乗った。

そして歩き出そうとしたスコットタントに大きなガジュマルの木が言った。
「タント」
スコットタントが足を止めて振り向いた。
「はい?」
「俺の、俺の願いを聞いてくれるか?」
「はい、何ですか?」
「もし、明日水が出なくても旅立ってくれ、それが俺の願いだ」
「分かりました。それでは僕のお願いも聞いていただけますか?」
「何だ?」
「水が出るまで此処に居させてください」
「だが、水が出なかったら旅が続けられなくなるぞ」
スコットタントは笑顔で答えた。
「大丈夫ですよ。絶対に水は出ますから」

焚き火へと歩き出したスコットタントの肩に座っていたメイルが振り向いて言った。
「明日ねー」
少しの間を置いて大きなガジュマルの木が答えた。
「そうだな、明日」

・・明日か・・。大きなガジュマルの木はその言葉を考えていた。
明日と言う言葉を何年聞いていなかっただろう。
明日と言う言葉を何年考えていなかっただろう。
帰って来ない昨日の事ばかり考えていた・・。
大きなガジュマルの木は笑顔で小さく呟いた。
「明日な・・」

その夜、大きなガジュマルの木の側でスコットタント達が小さな火を囲んでいた。
その火は大きなガジュマルの木を暖めるほどの大きさでは無かったが、大きな
ガジュマルの木の心を温めるには十分な大きさだった。