おみずなんかのんでません | 302号室のヘビとトカゲとヤモリたち

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レオパ、フトアゴ、アオジタ、ノギハラバシリスク、コーンスネーク、ニホンヒキガエルたちとの楽しい生活

 ちょっと前の記事にも書いたことですが、よし子は水を飲む姿を見せません。うちに来て9年8ヶ月にもなるのに、よし子が水を飲んでいるところをぼくは一度も見たことがありません。
 生き物である以上、水を飲まないはずがありません。現によし子は毎回とてもみずみずしいフンをするので、しっかり水を飲んでいるはずなのです。
 それなのに、よし子が水を飲むところをぼくが見たことがないのは、これはもうよし子は水を飲む姿を見せたくない、見られないようにしているとしか思えません。いったいなぜだ? 恥ずかしいのか?
 そんなミステリアスなよし子ですが、今日はちょっとばかり油断したのかもしれません。
 
 昼間、なんとなくケージを覗くと、
 

 んんー? 水入れに顎をのせている。
 ……はっ! よ、よし子、もしかして今、水を飲んでいたんじゃないのか!?
 

「のんでません」

 でも、水入れに顎をのせていたじゃないか。水を飲んで、味わっていたところなんじゃないのか?

 

「のんでません。おみずなんかのみません」
 本当か? でもよし子、いま、水を――
 

「のんでません。のんでませんったらのんでません」
 

 本当か? 本当に本当か? 飲んでいるところを見られたと思って、慌てて水入れから離れていってるんじゃないのか?
 

「おみずなんかのみません」
 

 ふーむ……怪しい。水を飲んでたっぽいのだが……。飲んでないと言うのなら、飲んでなかったのか……。

 でも妙に姿勢を正しているところが、却って怪しい……。