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 10月1日に口座開設の申請手続きが始まった少額投資非課税度(NISA)は、
初日だけで申し込みが358万件を突破しました!

 NISAとは、「株や投資信託などの運用益や配当金を一定額非課税にする制度」のことで、NISAの口座で取引をすることにより、税金面で大きなメリットが受けられることが特徴です。

 正式にサービスが開始されるのは、2014年の1月からで、投資金額が100万円以内であれば、株式投資や投資信託にかかる値上がり益や配当金が非課税となります。

 NISAの制度が導入されたことにより、個人で投資を始めてみようと考える人たち(個人投資家)が、今後少しずつ増えていくと思われます。

 NISAの制度では、購入した株式や投資信託を売却した場合には、その金額分だけ非課税枠が減少してしまうため、投資家の間において、株式や投資信託を長期に渡って保有する傾向が強まることが予想されます。


以下は、日経新聞より

「貯蓄から投資、NISAは手段の一つ」
2013/10/24 2:00

 日本の株式市場をより活性化するには、市場参加者たちはそれぞれどのような課題を解決すべきなのか。日本証券業協会の稲野和利会長に聞いた。

 ――10月1日に口座開設の申請手続きが始まった少額投資非課税制度(日本版ISA=NISA)は、初日だけで申し込みが358万件に達しました。
 「予想以上に順調な滑り出しという印象です。政府は2020年に25兆円というNISAの残高目標を掲げていますが、その目標は前倒しで達成できるのではないでしょうか」

 「ただ重要なのは各個人がNISA口座を通じて何をどのように実現していくのかということです。金融機関側はその目標に合致した金融商品やアドバイスをきちんと提供していく必要があります」

 「日証協は制度の恒久化など制度改善を要望しています。民間できちんと実績を出すことで世の中にこの制度は必要だという認識を広げ、恒久化につなげていくというのがこれからのあるべき道筋だと思います」

 ――証券界は過去に何度も「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げましたが、結局は失敗の繰り返しでした。

 「何度も『貯蓄から投資へ』という言葉が証券界で語らてきたのは事実です。私が所属していた野村証券でも『いまに個人金融資産が雪崩をうつようにこちらの世界へ移ってくるだろう』という言葉を何度も聞きました。証券界の人間は劇的な変化を期待しがちですが、雪崩をうつように入って来たものは雪崩をうつように出ていくことも多いのです」

 「私はこうした大きなテーマは、劇的に達成されることはないと思います。瞬時に目的が達成されることはないということを認識したうえで、証券界は地道に着々とやっていくことが重要です。その努力の積み重ねの結果として、あるときに気がついたらそうなっていたというのが本来の姿でしょう。過去はそういう地道で息の長い取り組みが業界に欠けていたのかもしれません」

 ――今回のNISAは、過去とはどう違うのでしょうか。

 「今回は第1に、NISAという誰でも手軽に使える器ができたという意義が大きい。次に証券界の状況認識の違いです。これまでは60歳代以上の金融資産の大半を保有する中高年層を有力顧客にしてきました。だが、これからこの層が投資から引退していく局面に入っていき、そうした状況への危機感が業界に共有されている点もこれまでとは違います」

 「そして最後に、投資環境が過去とは異なります。久々に日本経済や日本の株式市場に対する期待が強まっているタイミングに制度が導入される意味は大きいと思います。もちろんこうした過去との違いを生かせるのかどうかは我々の努力次第ですが」

 ――個人投資家の間で依然短期売買が主流を占めている現状を変えていくことはできるのでしょうか。

 「日本は個人投資家全体の層が薄いため短期売買の個人の投資行動が目立つのだと認識しています。より多くの個人を呼び込んで投資家の裾野を拡大するしかありません。そのためにはNISAが一つの解決策ですし、損益通算範囲の拡大や現在3年間の損失繰越期間の延長など金融所得課税のあり方も考えていく必要があります」

 「より長期的には金融リテラシーを普及する必要があります。初等・中等教育の段階からちゃんとした金融経済教育のプログラムを学習指導要領に組み込むべきです。うえんな道のようですが、国民がきちんと投資のことを理解して判断力を身につけたうえで、誰でも参加してチャンスを得られるという環境を整備しなければいけません。現在はその土台が不足しており、多くの人は投資をしようにも知識が不足しているという状況でしょう」

 ――証券界も個人投資家育成のためにやるべきことは多いのではないでしょうか。

 「もちろん個人投資家が入りやすい市場をつくるのは我々の責務です。そのために市場の透明性と公正性を高めるということになりますが、きちんとした業界の自主規制ルールは必要ですし、反社会的勢力を排除するという取り組みも続けていかなければなりません」

 「それに今でも高齢者を中心に驚くほど多くの人たちが投資詐欺にだまされる現実があり、注意喚起は続けていく必要があります。さらに投資の器を整備するという意味では、NISAだけでなく、非課税枠の拡大や対象会社の拡大を通じて確定拠出年金の使い勝手を高めていく努力も必要でしょう」

 ――投資対象である上場企業にも課題はありませんか。

 「日本企業のコーポレートガバナンス(企業統治)が万全であるかというと、決してそうではないと思います。今年6月の株主総会の議決権行使の結果を見ると、社外取締役を導入していない企業の取締役選任議案に対する反対票が増えている。社外取締役を導入してガバナンスを担保することは、外国人に限らず投資家からの明確な企業への要請です。上場企業は独立した社外取締役を置くべきだと思います」

 「受託者責任を果たすために機関投資家が企業に持続的な成長を促していく『日本版スチュワードシップ・コード』の整備に関する議論も政府で始まりました。そのためには投資先企業と機関投資家が積極的に対話していくことが極めて重要です。昔に比べると株主総会にかかる議案数が著しく減少しているという事情もあり、株主総会での議決権行使だけでは不十分です。1年365日で1日だけの株主総会だけでなく、残りの364日の間に企業と機関投資家の間で様々な会話や議論がどれだけ成立するのかが一段と重要になってきていると思います」

 ――機関投資家の側にも努力の余地がありそうですね。

 「コーポレートガバナンスの分野に関して言えば、最大の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がもっと積極的に動くべきでしょう。もちろんGPIFは公的年金を運用しているので個別企業の議決権行使には関与せず、運用会社に実際の判断を委ねています。ただGPIFが正しい姿だと考える日本企業のコーポレートガバナンスの原則を策定・公表するぐらいのことは可能ですし、やるべきでしょう」

 ――海外に比べると、国内機関投資家には運用のプロがいないという批判も多いのですが。

 「よく言われるように日本にプロの運用者が本当にいないかというと、そういうことはないと思います。しかし人数が十分いるのかというと、どうでしょうか……」

 「プロの運用者の出現確率をいかに高めるのかというのが運用会社側の大きな課題です。運用者が運用に専念できる環境を作るためにいろんな工夫をするだけでなく、組織としてその持続可能性を高める努力が必要です」

 「運用はときには無期限で続く長期にわたる取り組みで、組織として持続性を担保する必要があります。1人だけ華々しいスター運用者が生まれればそれで終わりという話ではなく、そういう運用者を綿々と生み出し続ける運用会社のビジョンや方法論が問われています」

 「運用者をきちんと競争させることも非常に重要なことです。社内の競争もそうだし、外部の競争もそうです。かつてに比べると少しはましにはなりましたが、日本の投資信託市場ではファンドの比較情報がまだ充実しておらず、投資家にもあまり活用されていないと感じます」

 「ファンドの手数料の安さだけに着目した情報が世間にはあふれていますが、そんなものは本当の比較情報ではありません。きちんとしたファンドの比較情報が投資家に十分活用された結果、運用成績が相対的に優れたファンドにきちんとお金が集まり、持続的にそのファンドの残高が拡大するという好循環がプロの運用者が育っていくためにも必要です」

 ――なぜその好循環がなかなか生まれないのでしょうか。

 「販売会社の強いニーズもあって日本の投信は新商品重視の販売戦略がとられがちで、いいファンドが必ずしも残高増加につながっていません。新商品重視の販売を否定するわけではありませんが、長い時間をかけてトラックレコードを蓄積した自他共に認める優れたファンドがたくさんあります。そういうところにもっと光が当たるようにしていかなければなりません」

(聞き手は川崎健)