不調に南くんの理不尽な八つ当たり的行動について記した書面を提出し、口頭注意をするように依頼し似たような事例が再度発生した時はパワハラ委員会に書類を提出し他部門にも情報を開示も辞さないと釘を刺した。翌日、アタシは休みだったのだが、当たった看護師へ南くんは直接謝罪。
謝罪を受けた看護師は広い気持ちで赦してくれた。



『Nさん、先生が直接、ゴメンねって謝られました。【君に対しての言葉じゃなくて、夜勤看護師への苛立ちだったんだけどそれをぶつけて悪かった】ってって。何か気持ちが落ち着きました』


聞いた瞬間、アタシは『イェーイッ!やったねーーっ!!』とガッツポーズを取り雄叫びをあげた。



あのさ、人生経験のまだ少い二十前後のウブ毛の生えた若造の八つ当たりとは違うんだ。(ま、八つ当たりに年齢の是非なないが)
苛立つのを止めろとは言わないが、言うなら当事者か管理者だ。
あと、理不尽なことを立場的に弱者に対してするんじゃない。

ま、アタシが書類を提出して翌日に謝罪した迅速さは評価する。
不調にしても南くんにしても。ただそれはアタシみたいな厄介な爆弾の芯管は安全対策のために早めに処理しなきゃという気持ちじゃないのかねと意地悪なことも思っているのだが

何にしても早く対処して、言われた看護師が気持ちやモチベーションの波が落ちついたのは良かったの一言。


すると、その話を聞いた夜勤だった医師がアタシの棟に来た時に『すみません、何か大変なことになってしまって。私がルーチンが足らないって夜勤の看護師に言えば良かったんですよね。。。すみません。。。』と実に申し訳なさそうに肩を落とした。


アタシは慌てて『先生は全く悪くないですよ。謝ることなんか一つもない。あの夜亡くなるであろう入居者と家族に出来る限りの検査や説明を夜遅くしてくださった。通常はあんなに丁寧な対応は出来ないですよ』と首を振った。


『最初、入居した段階とあの夜の段階は状態に大差はないとアタシは思っています。酸素飽和度が下がれば採血をするというルーチンは確かにありますが、あの利用者にあの夜、それが必要かと言えば不要とアタシは考えています。


その状態を入居の時に家族に説明したのは南くんなんです。であれば、そこは必要とあれば何故必要なのか、その結果で治療が変わるのかを説明せんといかんとアタシは思います』


『まぁ、あの状態では、、、そうですよね。。。』


『ルーチンは治療や検査にヌケがないようにするためには確かに必要な物ですが、それがその利用者に必要かは我々も考えてせにゃならん。随時酸素飽和度が下がる不安定な終末期の人間に治療の選択もない状態でしなきゃならん検査ではありませんよ

後、一番いかんかったのは、その苛立ちを当事者でない1スタッフに言ったことです。出来ていないと当事者に言えばそれは【指導】になる。だけど当事者でない人間に言うのはただの【愚痴】でしかない。管理者はスタッフに【愚痴】を言ったらいかん。仮に言うなら同じ管理者にです。言い返せない人間に言うのは人としてナシです』


『先生、一生懸命あの夜対応してくれたのに、嫌な思いをさせて申し訳ありません』アタシは医師に頭を下げた。


その数日後、南くんと会った時、バツが悪そうに『Nさん、何かゴメンね。アレは彼女に言ったんじゃなくて夜勤の看護師にだったんだけどね、、、。何人かの夜勤の看護師の中にキチンとルーチンをしていない人がいて、それに対してもちょっと思っていたからさ、、、』


ん?オメェ、だからしょうがないよねってアタシに言ってんの??

アタシは



と表情をサッと変え『言うなら当事者か、アタシだよ、先生。あと、あの日のルーチンはあの状態なら要らんやろ』とイラッと眉間にシワを寄せた。


あのさ、迅速に謝罪したのは認めるがそれに砂をかけるようなことをするんじゃないよ💢

ただあの日から少し利用者に対しての関わり方がアタシが働き出した頃の彼に戻りつつあるのは確か。
アタシが入職した当初、『ここに入職してくれてありがとう。助かります』と頭を下げて誰よりも一生懸命、誰よりもハードワークをこなしていたのは南くんだ。


南くん、アタシはその姿に感銘を受けて今も君と働いているんだ。


くれぐれも、初心忘るべからずだよ。