日本の周天功、それは主に小周天と大周天の模倣でしたが、この"とんでも100年"のお話をしたついでに、本当の周天派がどんな苦労をしたか、一つ、エピソードを紹介しておきます。


中国の金・元の時代です。宋が衰退して、北方から朝鮮族やモンゴル民族に侵略されてしまいます。皆さんご存じのチンギス・ハーンです。(日本では俗にジンギスカンといいますね。)


チンギス・ハーンは周天派の能力が気に入ったようで、この流派を好遇します。中でも邱長春を側近にまでしています。まあ、獰猛な皇帝ですから、武術でも引けを取ると殺されてしまう相手です。


チンギス・ハーンは現在のアラビア半島の近くまで侵略を続けますが、インドまで到達した時に、中国から邱長春を呼び寄せます。邱長春は中国からインドまで数十人の弟子を連れて、旅をしなければならなくなりました。

中国からインドというと、三蔵法師(玄奘)の西遊記が思い出されますが、邱長春もこの旅で新しい"西遊記"を執筆して、中国の古典に残すことになります。三蔵法師と邱長春の二つの西遊記があって、どちらも日本語訳があります。


インドに到着すると、邱長春はその特殊な能力を試されることになります。チンギス・ハーンはインドの密教の高僧に邱長春を試させます。わざわざ、そのために邱長春をインドまで呼び寄せたのです。インドの高僧は、邱長春が本物の能力を持っていることを認めます。


じゃあ、次は、邱長春の番です。

虐殺を繰り返しながら侵略をつづけるチンギス・ハーンに、殺人を止めるように進言します。チンギス・ハーンも邱長春を試したのですから、逃げるわけにはいきません。

チンギス・ハーンは"止殺令"という法令を発布して、いかなる殺人も禁止してしまいます。

まあ、何度も歴史ドラマになっていますから、DVDでもご覧ください。


こうして、周天派が現在中国の最大の道教教団になっていきます。世界遺産になっている北京の白雲観(道教寺院)は、邱長春のために建てられた道教寺院(道観といいます)です。白雲というのは、周天派の秘密を指します。