【CAUTION!】
今回の内容は、海外サッカー好きの人しか楽しめません。
7月27日、かねてより噂されていた大型トレードがついに成立した。
FCバルセロナとインターミラノ(以下、インテル)の間におけるものだ。
トレードの具体的な内容とは下記の通り。
・バルセロナ ⇒ チームに所属するFWのサミュエル・エトーをトレードに出し、それ加えて移籍金4600万ユーロ
(約62億3500万円)を支払い、さらにアレキサンドル・フレブを期限付きで移籍させる。
・インテル ⇒ チームに所属するFWのズラタン・イブラヒモビッチをトレードに出す。
※ 画像掲載の選手がイブラヒモビッチ。
バルセロナはエトーに対して、昨シーズン開幕前に就任したジョゼップ・グラディオラ監督が「チームに必要ない選手」と
明言しており、昨シーズンは結局残留することになったものの、紆余曲折を経て今回移籍が実現したものだ。
とはいえ、昨シーズンのエトーは 【 ピチチ 】(リーガ・エスパニョーラの得点王)にこそ手が届かなかったものの、
他の選手との連携も良く、数多くの得点を決めた。
チャンピオンズ・リーグ決勝での、先制ゴールもエトーによって生まれたものだ。
また、最前線から敵チームボール保持者にチェイシングするなど、プレスを効果的に働かせる献身的な働きを見せ、
守備での貢献度も高かった。
グラディオラ監督はどうしてそのようなエトーを「チームに必要のない選手」と切り捨てたのか理由を明確に
表明していないが、私見ではチームの規律の問題のように思われる。
グラディオラ監督は非常に規律を重んじる監督だ。
しかし、エトーは度々問題となる行為を起こすなど、トラブルメーカーでもある。
例えチームに欠かせない戦力であっても、規律に反した行為をうやむやに済ませる事でチームの統率がとれなくなるのは、グラディオラ監督にとっては信条に反するものだったのだろう。
スター選手を多数抱えるチーム(ビッククラブ)を率いる難しさは並大抵のものではない。
というのも、スター選手は少なからずエゴイストである側面を持っており、一般の選手より個性的な存在な為だ。
それが必ずしも悪いものであると断じる事は出来ないが、自分の好き勝手にプレーするようになっては組織的な戦術が
機能しなくなり、その上、他のチームメイトの反感をかってチームに不和がもたらされるかもしれない。
チーム戦術として、その選手が監督から「自分の判断で自由にプレーするように」との指示を受けていれば、
話はまた違ってくるのだが。
しかしながら、組織的戦術が整備された近代のフットボールにおいては個々の役割がより明確になっている為、
スター選手を多数擁するクラブにおいては、個々の役割を果たした上での自由な裁量が与えられるものとなっている。
いくら天賦の才をもった選手と言えども、まずは監督の指示の下にプレーしてチームの一員としての役割を果たす事が
肝要であり、チーム戦術を機能させた上で、その並外れた能力を発揮させる必要性に迫られている。
とはいえ、個人の能力が試合を決定づける事も少なからずあるのだが、毎試合それを期待していてはコンスタントな
勝ち星を得られない不安定なチームとなるだろうし、特定の選手に依存し過ぎるのは他のスター選手の能力を
活かしきれないものとなる。
よって、チームの規律が大切となってくるのだ。
ちなみに、今シーズン、ブンデスリーガを制し、マイスターシャーレ(優勝皿)を獲得したチームである
『 ヴォルフスブルク 』 を率いたフェリックス・マガト監督は選手に厳格な態度で接する事で知られている。
マガト監督の有名な発言に 「高いクオリティーは苦しみから得られる」 というものがあるほどだ。
※ 左記画像が、【 マイスターシャーレ 】 であり、元サッカー選手の
奥寺康彦さんは 『 1.FCケルン』 の一員としてマイスターシャーレ
獲得に多大な寄与をした。
グラディオラ監督とは異なり、前監督のフランク・ライカールトは温和で
寛容な態度で選手と接していた。
その代わり、助監督のヘンク・テン・カーテが鬼軍曹役となって選手を
叱咤激励し、時には相談役にもなってチームの結束を裏で支えてきた。
そのテン・カーテがチームを去った後、ライカールト監督は当時チームに
所属していたブラジル代表のロナウジーニョを始めとして、次第に選手の行動を制御出来なくなっていった。
その結果として選手間の和が乱れ、チームが瓦解するに至ったのだ。
片や、グラディオラ監督はスター選手に対しても厳格な規律を選手に課し、「勝って兜の緒を締める」事を選手に
要求して手綱を引き締める事を行っている。
そうした厳しさをもつ反面、選手と積極的に話し合いモチベーションを高めるよう対話を試みたり、怪我をしがちなメッシの食生活にまで気を配ってフィジカルコンディションを万全に保とうとしたり、チーム全体に細やかな配慮を行っている。
自身がバルセロナのスター選手であっただけに、バルセロナというビッグクラブを率いる術を心得ていて、前任者の轍を踏む事のない監督であると言えるのかもしれない。
さて、バルセロニスタの僕としては、“ イブラヒモビッチの加入がチームにどのような影響を及ぼすのか ” について、
自分なりの考察をしてみたい。
イブラヒモビッチの特長として挙げられるのは、フィジカルが強く、周りの選手を活かす術を心得ており、ゴールを奪う
能力(決定力)が非常に高いということだ。
まず、フィジカルの強い選手が3トップの中央にいる事は非常に心強い。
楔となってボールを受けるポストプレー役がこなせ、ボールをキープする事も出来る。
そこから、チャンスがあれば自らゴールを狙いにいってもいいし、自分に相手の選手をひきつけてフリーになった味方の選手にボールを供給する事も出来る。
昨季のバルセロナは、DFにフィジカルの強い選手を揃え、自陣を多くの人数で固めた強豪チームを相手に
守りを固められると手詰まりになるような場面も見受けられた。
バルセロナには、相手ゴール前での空中戦に競り勝てる選手がいなかった事も要因の一つだ。
しかし、フィジカルの強いイブラヒモビッチが居れば相手DFに当たり負けをせず、ポストプレーをこなせるし、
昨季のバルセロナに欠けていた高さをも持ち合わせている。
また、イブラヒモビッチ自身のゴールを奪う能力が傑出しているため、独力でゴールを狙う事も出来る。
昨シーズン、セリエA得点王の実績はそれを雄弁に物語るものだ。
イブラヒモビッチの決定力を恐れたDFが、ゴール前でボールキープしたイブラヒモビッチへ多数寄ってきたならば、
そこでフリースペースに走りこんできたメッシ、アンリ、イニエスタ、シャビ等のゴール決定力の高い選手へのパスを
供給するチャンスとなる。
そして、イブラヒモビッチはそうした味方を活かす術を心得ているのだ。
それは、昨シーズン所属のインテルにおいてチーム最多となる7アシストを記録している事実が証明しているだろう。
更に言及すれば、イブラヒモビッチはいかなるタイプの選手との共存も可能であるといわれており、チームへスムーズに
溶け込む事が期待出来よう。
総括すると、イブラヒモビッチの加入は攻撃陣の潜在能力をより引き出してチームの得点奪取能力を増大させると共に、
攻撃におけるバリエーションの幅を拡げて厚みをもたせる事で相手チームが敷く守備的戦術への対応能力が増し、
昨季より安定した勝ち星を上げられるチームになるものと考えられる。
移籍による記者会見に臨んだイブラヒモビッチは、「バルセロナへの移籍しか考えていなかった」と語っている。
それが嘘か誠か、はたまたリップサービスかはわからないが、イブラヒモビッチのモチベーションの高さが伺える一言であるように感じられる。
また、独力で局面を打開して決定的なパスをゴール前に供給出来るメッシやアンリ、ボールキープ力と状況判断力、
パス供給能力に優れた中盤の要であるイニエスタ、シャビといったチームメイトの存在はとても心強いものだろう。
自分の能力を十全に発揮出来るパートナーを得て、イブラヒモビッチ自身が選手としての能力をより一層開花させる事になるかもしれない。
正に、相思相愛の移籍だったのではなかろうか。
これで、リーガ・エスパニョーラの開幕がより一層楽しみとなった。
バルセロナの宿敵である 『 レアル・マドリード 』 は、今オフに常軌を逸した桁外れの高額資金を費やし、
バロンドールを受賞した非常に能力の高いスター選手2人と、将来有望なFWを1人獲得した。
かつて、“ ギャラクティコ(銀河系) ” と呼ばれたチームを復活させようという算段だ。
元々能力が高いスター選手を揃えている上に、更に優れた選手が加わったのだから、スターティングラインナップだけを見れば、恐るべき陣容である。
しかしながら、選手を育成して辛抱強く使い続ける事なく、資金に物を言わせてチームを強化しているレアルを、
「美しく勝利する」というチームの哲学や美学、選手育成強化を貫いたバルセロナが、昨シーズン同様に
レアルの本拠地であるサンチャゴ・ベルナベウで快勝して、勝利の凱歌をあげるのを楽しみにしている。