ぼく、ロンです。






先の月曜日のことだったでしょうか

ぼくはお空からふわりふわりと
白いものが舞い降りてくるのを見ました。

「雪」というものだそうです。






それは次第に横なぐりの激しさを増していき

と、そこへ

と傘を握りしめた
雪の降りかかったコートを着たママが
帰ってきました。


夜ごはんに温かい汁ものを作ろうと
仕事帰りにお買い物をしてきたらしいのですが

葱という野菜は
うまくお買い物袋におさまらず
(実際、道に落ちている野菜No.1は葱だと、ママは言う)

ママはいつも葱は手に持って
持ち帰ります。



その夜
ママは横なぐりの雪の中
赤くなった手に葱を握りしめ


『汚れつちまつた悲しみに
汚れつちまつた悲しみに』


と心の中で呟きながら
帰ってきたそうです。



『汚れつちまつた悲しみに』の後は

『今日も小雪の降りかかる』

と続くからなのだそうです。






この詩の一部分をママは誦じています。

それは


『汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく

汚れつちまつた悲しみは
倦怠のうちに死を夢む』


という部分で

高校生のときにこの詩を読んだママは

「絶望と無気力ってこういうことか」

と衝撃を受けたのだそうです。



ぼくははっきり言って

雪の中葱を握りしめて帰ってくるのも

高校生にして絶望と無気力について考えているのも

ほんとにどうかと思います。








さて

本日仕事休みの午前中

ぼくとママは、まったりちゅう。






ママは

『中原中也詩集』を読み返しています。



『中原中也詩集』

大岡昇平編

彌生書房