リーマンショックの効能を語る阪急百貨店トップ
東の伊勢丹に対して、西の阪急と言われる百貨店業界。
今日はその阪急百貨店(現在は株式会社 阪急阪神百貨店)会長から、百貨店業界の現状を伺った。
まず赤裸々に語られたことが、これまでのファッション関連商品(衣類等)への依存体質について。この分野は手っ取り早く多額の利益を上げるのに向いていたそうだ。
数値にして、2004年度では、ファッション関係の売上は全体の58%に対して、その利益はなんと全体の99%をも占めていたという。
つまり、消費者側にとってみれば、百貨店で買うという行為に、相当の利益を支払っていたということであり、百貨店側にとってみれば、まさにこの分野のおかげで企業として支えられてきていた、いわばいびつな構造であった。
しかも、ファッション関連商品は年齢とともに購入グレード(単価)も上がり、百貨店はそれらの層を見事、きっちりと捉えていたのである。
しかしご存じのように、百貨店業界は、今や構造不況の様相を呈している。その背景には、百貨店業界には大きな3つの変化の波が、じわりじわりと押し寄せてきていたことにある。
1つ目が消費動向の変化。
近年は、「H&M」「ユニクロ」等に代表されるファストファッションの台頭により、年齢が上がっても購買価格は上がらないという傾向が見られてきたが、ファッション品の高収益性から脱却できずに、そのまましがみついてしまっていたという。
2つ目に、インターネットの台頭。同氏も本格的な導入に遅れたと認めているが、百貨店業界のどの企業もまだ成功と呼べるには至っていない。
そして3つ目は、ライフスタイルの変化。
「モノ」を求める時代から、「暮らし」を求める時代に変わり、そして今の時代は、「生き方」、つまり「心の豊かさ」を求める時代に変わってきた。しかし百貨店業界は、高収益を効率よく生み出すことばかりを求めてきた。
これにリーマンショックがさらなる追い打ちをかけ、特に本年度の百貨店業界の決算予想数値は惨憺たる結果となってる。
しかし同会長はここで経営者らしい一言を発した。
「リーマンショックのおかげで、我々は目が覚ますことができた」
つまりリーマンショックがなければ、危うくこれまでの延長線上で経営戦略立ててしまうところだったということである。
経営者たる者は、時に大きなピンチであっても、プラス思考に転じることができる。今日はその一端を垣間見ることできたことに大きな価値があった。