昨晩、ベッドに入ってから眠りにつくまでに聴こえていた雨音は、朝の日差しとスズメの鳴き声にかき消された。
カーテンを開けて、見上げる空のつづら折りの分厚い雲は、夏の訪れをわたしに告げている。にょきにょきと遠くの地面から立ち上っている入道雲。それがゆうべの大雨を齎(もたら)したのだろう。
けれどもその大きくて黒い雲は、暗い内にゆっくりと青空に登って行ったとみえ、日の出と共にわたしを見下ろしてる。昨日の雲は真っ黒で雨を降らせる悪い人だったけど、今では綿菓子のようにフワフワと優しい人。そういう空。
青空の下にぽっかりと浮かんでのんびりとわたしを見守る、青空の大きな入道雲。
***
良い朝だ。
庭に面したわたしの部屋の窓を開ける。草のにおい、夏のにおい。遠くから聞こえるラジオ体操第一の音楽。
そう、今日は夏休みの初日。当時１２歳(小学生：コレ、思い出バナシです)であったわたしは、寝坊してラジオ体操をサボってしまった！これじゃあスタンプが貰えない！
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寝ぼけ眼を擦りながら、パジャマ姿のまま外に出る。遊び仲間の男の子たちがやってきて、カブトムシとかクワガタを採りに行こうという。わたししか知らない、ひみつのクワガタ虫の穴がある。カブトムシとかヒラタクワガタとかいっぱいいる樹液の穴だ。きっと彼らはその場所を知りたいのだ。絶対に教えてやるもんか！
男の子たちを追い返し、わたしはひとりニヒヒと笑う。
空も宝石、雲も宝石。クワガタ虫だって宝石。セミの鳴き声。
なによりも、子供の頃の夏休みが宝石だ。
そう、ここは宝石の国。
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