■書評 いとうせいこう『想像ラジオ』 河出書房新社2013/3/2
- 想像ラジオ/河出書房新社

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いとうせいこうの久方ぶりの文学作品。
芥川賞候補作。(落選したけれど…)
いとうせいこうと言う人は、メディアが発達した現代で色々な活動をしているマルチタレントで、時々気になる作品にその名前を見出す。
『ノーライフキング』と『難解な絵本』が僕のお気に入り。(大昔の作品だけど…)
そのいとうせいこうの小説が芥川賞の候補作になったと聞いて、これは放っておけない。
物語の基本は、東日本大震災の津波に流され高い木の上に引っかかった死者が流す霊界通信『想像ラジオ』
霊界通信で語る事によってこの世への未練がなくなり、彼は成仏する。
僕自身は自分とあまり関わりが無かった者の死に対して、かなり鈍いので、いとうが何でこういう題材を選んだのかは良くわからない。
逆に霊界通信というこの物語の構造のあざとさ(そのアイデアはいかにもいとうせいこうらしいのだけど…)が、どうも物語を受け入れるのに障害になる…
■書評 絲山秋子『北緯14度』 講談社文庫2013/4/12
- 北緯14度 セネガルでの2ヵ月 (講談社文庫)/絲山 秋子

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絲山秋子がセネガルに出かけて2ヶ月滞在した紀行文。
紀行文と言いながら、そこは腐女子・絲山秋子
これはセネガルで無くても何所でも良かったのではないかと思わせる内容。
外国に行って、日本人である自分を外から眺めること。
人間を定義し直すこと。
例によって歯切れと気っ風の良い軽めの文章を楽しみながら、その文章の裏に隠された人間観察の鋭さと優しさが心地良い。
■書評 絲山秋子『ニート』 角川文庫2008/6/25
- ニート (角川文庫)/絲山 秋子

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絲山秋子の短編集。
表題が『ニート』となっているが、別にニートをテーマとして書いた短編ではない。と思う。
絲山秋子にとって、「ニート」は当たり前に其所らへんにある現象だったのだろう。
解説にも書かれている様に、おそらくテーマはヘタレなダメ男。
そのダメっぷりが簡潔に赤裸々に表現されていて、それだけだとバッサリ斬るみたいな内容になるのだろうけれど、そのダメ男に対する愛や、彼らに感じている語り手自身との類似性、そしてほんの少しの親近感。
(そのヘタレ具合は、絲山秋子の描く主人公の多くに共通するのだけど…)
人と人の関係性のの絶妙な距離感という表現で、絲山秋子の作品について各所で語られているけれど、おそらくそれは、著者によるホンの少しの親近感と優しさなのだろうと思う。
おそらく著者は、理性ではその優しさがイヤでイヤで仕方ないのだろうけれど、でもそれを捨てる事が出来ないでいる。