こんにちは、
前回の血液のガン治療に関連する、鳥越俊太郎「医療の現場」のTV番組の情報です。
鳥越俊太郎「医療の現場」
『分子標的治療薬の実力』
ガン治療において,画期的な薬が開発されています。
これまで治療が困難だった患者を救う薬とは、「分子標的治療薬」という薬で、担当医師も,私もこの薬が出た時はこれほど効くとは思っていなかった。
「分子標的治療薬とは」
遺伝子異常のがん細胞のみをピンポイントに攻撃、正常な細胞に影響がなく副作用が少ない。
この薬の登場で投薬治療が可能になったのです。
「症例1.肺がん患者、鈴木秀美さん(56歳)の場合」
抗がん剤を7回やって、副作用が兎に角ひどかったんです。先ず脱毛から始まってとにかく苦しいんです。
分子標的治療薬をやって、全身に転移していたガンがほとんどなくなっている。
従来の抗がん剤とはぜんぜん違うなっていう感じですね。
普通の生活が出来るっていうのはすごく嬉しいです。
この分子標的治療薬に効果があるのは肺がんだけではないのです。
「症例2.神奈川県三浦市、藤井正男さん(65歳)の場合」
藤井さんは5年前ある医師から慢性骨髄性白血病と診断された。
がんですかと聞いたら、がんですと主治医に告げられた。
それから慢性骨髄性白血病との闘いが始まります。
医師にすすめられたのはこの病気に効果がある分子標的治療薬で投薬によるがんとの闘いが始まりました。
担当医:東京都立駒込病院 院長佐々木常雄医師
Q.現在許可されている分子標的治療薬はだいたい何種類ぐらいありますか?
A.今、実際に使えるのが21種類あります。
がんの部位 分子標的治療薬数
血液がん 10個
大腸ガン 3個
腎臓がん 3個
肺がん 3個
消化器間質腫瘍 2個
乳ガン 2個
肝臓がん 1個
今や抗がん剤を開発されるよりも分子標的治療薬がどんどん開発される時代になってきています。
Q.抗がん剤の開発よりメーカーは分子標的治療薬に移っている?
A.今は、臨床のレベルになる前の段階のものもたくさんある。
Q.最も適応のある血液のがん慢性骨髄性白血病とはどのようなものですか?
A.「慢性骨髄性白血病」
ガン化した白血球が増加することで免疫力が低下し、感染症などを引き起こす。
今までは3年位すると急激に低下して悪い状態になって多くの方が亡くなっていく病気です。
Q.白血病の場合は骨髄移植をすれば大丈夫とのことですが?それは有効ですか?
A.有効なんですが、慢性骨髄性白血病の場合は、骨髄移植は結構大変なんですが、飲み薬だけで非常によい結果が出るので「骨髄移植→投薬」に、第一選択肢は分子標的治療薬になってきました。
Q.慢性骨髄性白血病の原因は?
A.「慢性骨髄病白血病のメカニズム」
染色体の一部が入れ替わって、9番目のABLが22番のBCRのすぐ下に転座してくっついてしまって、BCR・ABLがんが発生する。
慢性骨髄性白血病はこの転座によって起こっているケースがほとんど。
Q.メカニズムの原因は分からないのですか?
A.まだ分からないのです。
「症例2.神奈川県三浦市在住 藤井正男さん(65歳)」
5年前に体にある異常が…
痩せてきました、79㎏から73㎏位までに体重が減りました。
友達に痩せているよ!チョットおかしいんじゃない?といわれて病院に行きました。
採血検査の結果、慢性骨髄性白血病と診断されました。
慢性骨巣生成白血病は、転座してガン化した白血球はみるみる増殖して免疫力が低下します。最終的には肺炎等の感染症を引き起こして死に至るのです。
白血球は本来正常な場合の白血球の数は3,000~5,000個、発症時藤井さんの白血球は150,000個と30倍も増えていました。
※ この病気で毎年450人位の人が命を落としています。
Q.かって不治の病と言われた個の病気にはどのような治療が行われるのですか?
A.早めに骨髄移植を行うというのがこの治療のスタンダードでした。
骨髄移植はかなり辛い治療ですし、危険を伴う治療です。
治療経過は
① 放射線・抗がん剤でがん細胞を消滅させる
② 健康な骨髄液をドナーから採取し、点滴で移植しガン化した白血球を作らない様にするのです。
しかし治療を行う上で高い壁があるのです。
◎ 人の白血球の型がピッタリ合ったドナーから移植しなければならないこと。
◎ それは兄弟ですと四分の一の確率、他人から見つけようとすると数百人から数万人に一人しか合わない。そして必ず見つかるとは限らない。
◎ さらに体力的な理由で骨髄移植の適用は60歳未満と決められています。
発症時60歳になっていた藤井さんは受けられなかった。
そこで主治医は慢性骨髄性白血病に効果のある分子標的治療薬をすすめた。
この薬は2001年に日本で認可され、保険適用が可能です。
Q.この薬のメカニズムを教えてください。
A.白血球にあるがん細胞はATP(体内にあるエネルギー酵素)と結合することで生存・増殖が可能です。
分子標的治療薬は、ATPが結合する前にそこに入り増殖を抑えるのです。
<ATP(Adenosine Triphos Phate>とは
体内のあらゆる場所に存在し、細胞が生きる為に必要なエネルギー酵素。
ATPの替わりに分子標的薬が入り込むとがん細胞にエネルギーが無くなるので増殖していけない。
毎朝、3錠服用。副作用もほとんどない為、体調も発症前とほとんど変わらないといいます。
働いていても疲れないし、異常なしだし、普通だね!
オレは慢性骨髄性白血病だよと言っても誰も信用してくれないね。
採血検査の為に月に一度通院している。
血液検査の結果は、大丈夫です。発症時に150,000個あった白血球は5,000個の正常値の範囲まで落ちている。
主治医は、
私も、この薬が出た時は,最初これ程効くとは思っていなかったそうです。
<慢性骨髄性白血病治療の変化>
最初から移植という様なことはなくなりました。ので
慢性骨髄性白血病治療はガラッと変わったといえます。
分子標的治療薬は白血病以外にも使用され、駒込病院では100人を超える患者に投薬治療を行っています。
骨髄移植をしていた時より、飲み薬だけですから非常に楽ですね。
Q.薬は飲み続けるのですか?
A.はい、飲み続けます。
問題は、今までの抗がん剤は細胞の核を殺してしまうので正常細胞まで殺してしまう。
分子標的治療薬は増殖を抑えるので殺してしまう訳ではないので本当に全部がん細胞が無くなるかはまだ分からないので、白血球が正常値の範囲になっても飲み続けています。
Q.飲み続けている間は増殖しない?
A.イヤ、薬に耐性といって薬物に対する抵抗力が出来るので効かなくなってくる場合もある。
但し、耐性のがん細胞にもまた新たな分子標的薬が開発されてきています。
<ヒデちゃんのコメント>
立花隆レポートでは永遠に続く連鎖であるとも報告されています。
Q.値段的には高いのですか?
A.そこが問題です。
何十万円も、月20万円ぐらい、保険適用で6万円ぐらい。
「高額療養費制度」
1ヶ月の医療費が高額となった場合、自己負担限度額を超えた部分が払い戻しされる。
※ 自己負担限度額は、年齢や収入によって異なる。
長い間続けなくてはならないのが問題です。
Q.慢性骨髄性白血病以外でもその他のがんで分子標的治療薬が使われていますか?
A.肺がんによく効くものもあり、悪性リンパ腫に効くものなどかなり色々ながんに使われる様になりました。
Q.具体的な事例は?
A.慢性骨髄性白血病に効く薬が消化管間質腫瘍(ジストGIST<胃や小腸などに発生するがん>)は、100%抗がん剤が効かなかったのですが分子標的治療薬で非常にコントロールされています。
肝臓に転移したガン(女性67歳)も2007年11月と2010年3月ではがんが小さくなっています。
Q.最後にこれだけはいっておきたいことは何かありますか?
A.分子標的治療薬が開発されてきて従来、薬物治療や化学療法はかなり副作用があるので敬遠されていましたが、分子標的薬がどんどん開発されているので特にお年寄りは、がんで亡くなる方が全体の三分の一位ですので、飲み薬でコントロールできるので是非治療を行って欲しい。
ガン治療の中心が外科から内科に移ると思っています。と結んでいます。
<ヒデちゃんのコメント>
主治医は、どうしても専門分野に片寄りがちです。本当に内科でがんを克服できますか?
情報が希望になることは大切なコトですが、思い込みになってしまうと選択肢を間違うのではないでしょうか?
慢性骨髄性白血病の方にはとても朗報だと思いますが、一言、急性骨髄性白血病での効果の有無も付け加えていただけたらもっと情報が役に立つと思います。
今年(平成22年)の2月に大切な方のご子息が25歳で10年間闘病の末、急性骨髄性白血病で亡くなりました。とても残念です。
<完>