こんにちは、暑中お見舞い申し上げます。
前回からの続きです。
● 悪性リンパ腫の広がりを確かめる
Q.リンパ腫のタイプが分かった後はどうなるのでしょうか?
A.次は病気の広がりを見る検査をします。
これは体のどこに何カ所、何個あるのかを見ます。
「病気の広がりを見る検査」
・ 血液検査、CTスキャン、骨髄検査、胃内視鏡、PET検査(ガリウムシンチ)
病気のタイプや治療を急ぐ度合いによって、受ける検査は変わってくる。
担当の医師が必要なものを判断する。
Q.血液は全身を巡っているのでどこにあってもおかしくないということですね?
A.そういうことから全身を調べる検査をします。
Q.これは外科手術で治すということは難しいのでしょうか?
A.そこが悪性リンパ腫の特徴の一つです。
外科手術をして終わりと言うことはありません。
悪性リンパ腫は、血液の細胞から起こる病気なので体中どこにでもできる可能性があります。胃がんの様に早期であれば一箇所に止まる病気と違い、診断時から体内に複数の病変がある場合が考えられます。
(腫瘍を一ヶ所取ったとしてもそれ以外の場所に別の腫瘍が出来ている可能性がある)
手術はあくまでも診断の為に行われ、治療は薬物治療が中心になります。
「悪性リンパ腫の治療方法」
○ 薬物療法(化学療法)
○ 放射線治療
○ 造血幹細胞移植
Q.多く使われるのはどれでしょうか?
A.最も多いタイプ、「びまん性大細胞B細胞性リンパ腫」では、薬物療法を用います。
Q.どのような薬物を使うのでしょうか?
A.「R-CHOP療法」の治療スケジュール
5種類の薬剤を3週間に1度のペースで使用する治療法
薬剤の種類 0 1 2 3 4 5
リツキシマブ ◎
ドキリルビシン ◎
ビンクリスチン ◎
シクロフォスファシド ◎
プレドニゾロン ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
上記の内、下の4つの抗がん剤を使って40年前からCHOP療法として行って来ました。
10年前からリツキシマブを用いた「R-CHOP療法」が行われる様になった。
それによって、治療成績が改善されてきました。
Q.リツキシマブとはどういう薬なんですか?
A.これは分子標的薬といわれる薬の一種です。
B細胞性の悪性リンパ腫を構成する「CD-20」という分子に結合し、他の細胞には悪影響を与えない薬。
Q.小さい小さい分子に作用して、その他の正常細胞には影響を及ぼさずにやっつけると言うことでしょうか?
A.そうです。B細胞リンパ腫はこれによって改善してきているのです。
「リツキシマブの作用」
Q.悪性リンパ腫にどのように作用するのか?
A.実際には点滴によって体の中を廻ってがん細胞に張り付いてそれによって効果を与える治療法です。
Q.分子標的薬が出て来てガンの治療法が変わってきた例も多いですね?
A.悪性リンパ腫の場合は、このリツキシマブが代表的な分子標的薬です。
Q.これはかなり費用がかかるのでしょうか?
A.R-CHOP療法の費用
1回につき、20~30万円。
高いですが日本では高額医療制度があって、1ヶ月の治療費の自己負担額が高額となった場合に一定の金額を超えた部分が払い戻しされます。保険の範囲でカバーされます。
「薬物療法の種類」
Q.他の薬物療法を使えると言うことはあるのでしょうか?
A.「薬物療法の種類」
リツキシマブ単独療法:B細胞性低悪性度リンパ腫
CHOP療法 :T細胞性リンパ腫
ABVD療法 :ホジキンリンパ腫
Q.良く効く薬といえども副作用とは無縁ではないということでしょうか?
A.薬物療法による副作用
◇ 抗がん剤による吐き気、脱毛
◇ 白血球が減ることによる感染症 など
他の治療法について教えてください。
● 放射線療法
Q.放射線治療はどういった場合に適用されますか?
A.がんが一ヶ所に止まって限局している場合、
薬物治療後一ヶ所に病変が残ってしまった場合
● 造血幹細胞移植
正常な血液を作り出す造血幹細胞を移植する治療法
○ 自家移植
大量化学療法後に自分自身の正常な造血幹細胞を体内に入れ直す方法。
○ 同種移植
他人(兄弟か血液バンクドナー)の造血幹細胞を移植する方法
Q.どちらが多く用いられていますか?
A.悪性リンパ腫の場合は、自家移植が多く用いられています。
「自家移植の手順」
1. 造血幹細胞を採取して凍結しておく。
2. 大量化学療法を行う。
3. 凍結してあった造血幹細胞を溶かして点滴で入れる。
但し、大量化学療法を行う為、副作用がある為、再発した患者さんや再発する可能性の高い患者さんを除いて一部の患者さんに適用されます。
Q.最後に血液がんの治療についてメッセージをお願いします。
A.悪性リンパ腫は、リンパ球という全身を廻る細胞がガン化して起こる病気です。
そのことからしばしば病変が全身のアチコチに出ることがあります。
そのような時に自分の病気は末期なのかも知れないとがっかりされることがあるかも知れません。
ただ悪性リンパ腫の治療は、薬物療法で全身に対して行われる治療なので,今は新しい良い薬が出ていますからも自信を持って治療を受けられることをおすすめします。
と結んでいます。
<ヒデちゃんのコメント>
血液がんは、現場に立ち会っていませんので特別にはありません。
ただ、分子標的治療薬で成果を上げられている症例が沢山出て来ていますので、大切なのはキャンサーボードのような施設を選び、医者を選ぶことが大切であると思います。
<完>