アーナンダの憂鬱

アーナンダの憂鬱

おもしろき こともなき世を おもしろく




$ロメオのしょっぱい三日月 season2






アーナンダよ この世界は美しい 人生は甘美である
















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よく坐禅したらどうなるの?とか聞かれる事がある。
 私の師匠方の系譜から言うと

 坐禅してもなんにもならん!

とかすぐ言うんだけど、じゃあ何にもならんのになんでしてんの?って質問に対する明確な答えがある訳ではないし、あるのだろうけど、それはとても難解すぎて一般の初心者や自分の周りの人にはとてもわからないし不親切であるように思う。

だけど、うちの宗祖は常々

自己を習う。

と言ってきてるのだから、結局坐禅する事は、何にもならんじゃなくて自己を習うって事なんじゃないかと思う。
 その続きに「自己を忘るゝ」って言葉があるけど、それを言いはじめると終わらなくなるので今は言わないが、自分が3年間坐禅してて思った事は

坐禅は自己を整える

って事。
 例えばすんごい疲れた時に坐禅すると、自分の身体のどの部分に負荷がかかっているのかわかり、それを微妙な身体の動きで調整していき、そこの負荷を取り除いていったりする事ができる。
 だから、坐禅してから肩こりや背中が痛いだのという事はなくなった。
 他に精神的な変化?というのはよくわからないけど、それが坐禅のせいか何かわからないけど、ここ3年間であまり物事を考えなくなった気がするくらいかな。。。

 だから人に坐禅したらどうなるの?って聞かれたらいつも

身体と頭が楽になるよ。

そんだけ。

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でも坐禅しても疲れる時は疲れるし悩む時は悩む。人間だもの

最近は特に怒鳴られる事も、減ってきましたが(たまに痺れるほど怒鳴られるけど)
 自分で何が原因かを考えていたのですが、どうも自分には僧侶としての立ち居振る舞い=(威儀)ができていなかったという、私の事を知っている人からすれば何を今更。という言葉しかないと思いますが。。。

 じゃあ僧侶としての振る舞いってなに?
お袈裟の着方?足袋履いた時の歩き方?お茶の出し方?etc

 まあ、そのどれもなんだけど、結局は作法。
 この作法っていうのが厄介なところで寺では色々な場面で多種多様な作法があるんだけど、はじめはこれを面倒くせーなと思っていたのだけど、突き詰めて考えてみれば作法というのは相手があって初めて成立するものであって、要するに相手に対する気遣いなのだという事がわかった今日この頃。
 気遣い→相手に対する思いやり→相手の事を考える→自分の考えを捨て相手の身になって考える=無我

 即ちこれ佛法ってなわけなんだな〜って思うようになって行動し始めるとなんだか怒鳴られるのにビクビク(どんだけ)する事よりも、相手が今に何を欲しているのか?今自分がどう動く事でこの場面がもっともうまく成立するのか?という思考の転換でパッと道が開けてきた気がするのよ。

威儀即佛法

ようやくわかった

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 午後2時半、兵庫県の九谷という無人駅に到着。
そこからお寺までの距離はGoogleマップで見る限り車で約20分のところにあるらしい。
 しかし、この小高い山の上にある駅から見える光景には、小さな山に囲まれた狭い盆地の中に田園が広がっているだけで、どこにも道路らしい道も見当たらなければ人っ子ひとり見当たらない。
50リットル容量のバックパックを背負い、1day旅行用のショルダーバッグをキャリーに乗せて、とりあえず国道を探そうと駅の下へ通づる細い道を降りていきます。

数十分 、あてもなくキャリーを引きづりながら歩いていると犬を散歩している第1村人発見。
50代後半くらいのご婦人だろうか、私の姿を認識した瞬間、立ち止まり見るからに不審者を見る目つきで頭の先からつま先、万が一の為の助けを呼ぼうとしている為なのか周囲の確認もしている。

「あの・・・」
「ここで何をしているの?」
「駅から降りて来たんですけど、道に迷っているところです。」

あきらかに旅行者の格好をして駅から降りてきた者に、「何をしている」とはおかしな質問ですが、黒のハットに黒のフード黒いTシャツに黒いジーンズに黒のスニーカーの全身黒ずくめの男と田舎の小道で遭遇してしまえば致し方ない。

黒ずくめの怪し男に警戒をしつつご婦人は尋問をしてきます。
「何でここで降りたの?どこに行くつもり?」
「あの〜安泰寺というところに行きたいんですけど、ネットで見たらここで降りてタクシーを拾うといいと書かれていたので・・・」

「安泰寺」という言葉を聞いた瞬間、ご婦人の警戒心がやや薄れたようで。
「はぁ〜安泰寺に行きたいんか?」
「じゃったら、ここじゃなくてもう一つ向こうの浜坂いう駅で下りんと、ここにはバスもタクシーもないよ」
山陰地方の方言は、私の故郷広島弁に少し似ていて、その一見乱暴そうに思える言葉使いも、ほんのり親近感を感じる。
だけどどうしよう。たしかお寺には3時までにつかないといけないのに、今から浜坂という駅に行っていると3時には間に合わない。

「あのタクシーとかないですかね?」
「タクシー電話で呼んだら来てくれるけぇ電話してみんさい」
「すいません。私、携帯電話持ってないんですよ。今日からお寺なので解約してきたんで。。。」
「じゃったら、私がかけてあげるけえ家に戻って携帯電話とって来るから」

どうせお寺に行けば携帯電話も使えないだろうし、持っていても意味もない出家の身。思い切って解約をしてきた事を早速後悔しながら、
携帯電話を携帯していない、ご婦人を待つ事15分。
なぜか村人を4人くらい連れて来て戻って来たご婦人

「えっとじゃあ今からかけるけど、誰かタクシー会社の電話番号しらない?」

まだ、かけてなかったんかい!絶望にくれる事約40分ようやくタクシーが到着。この時点で時計の針は午後4時を指していた。

ご婦人や村人に感謝と別れを告げ(タクシーが来る間ずっとお喋りをしていました)
いざ安泰寺へ!

くねくねと曲がった国道をひた走り池ヶ平のというバス停を脇道にそれて行くと
「安泰寺まで4キロ」
という看板が見えてきました。
「ここで降りて歩いて上がる?」
タクシーのおっちゃんが冗談なのか本気なのかわからない口調で言ってくる。
「まさか?4キロも歩けないですよ」
 私の娑婆での生活は、毎日マンションの玄関ドアを開けると目の前にエレベーターがあり、エレベーターを降りると駐車場があり、会社の駐車場に車を入れると目の前が会社。あとは一日中会社の机に座っているだけの日々。
 日に100メートルも歩いた事がない生活をここ10年以上過ごしてきた私にとっては、おっちゃんの言っている事はまるで、どこかの酔っ払いの戯言にしか聞こえませんでした。

 安泰寺への道は舗装されていないタクシー1台ギリギリの幅の細い道でガードレールもなく、一歩タイヤを踏み外せば谷底に真っ逆さまの険しい山道を何度も切り替えして、登っていきます。
タクシーの車窓から見える山道や周りの景色を見ながら、心のどこかで脱出経路を絵に描いていたのですが、どうやら脱出するのは無理だと観念し、私の心は重く沈んでいくのです。

途中、それまで山道を暗く覆っていた雑木林が開け、遠く夕陽が見えた。
さっき迄降っていたらしい通り雨で出来た水たまりに夕陽が反射してキラキラと眩しく、本来なら美しく見える筈の光景も、約束の時間もとっくに過ぎているのにまだ着いていない現状と、10数年勤めてきた会社を辞め、家族や恋人を置き去りにして「本当に出家してしまうんだな俺。」という思いや、この先のお寺での生活や将来への不安などの色々な感情が入り乱れて、その光が私を絶望の淵に近づけていくのです。

 やがて眼前にゴツゴツとした石というか岩で組み上げられた。全長約100メートル、傾斜角60度の崖のような階段が現れました。
 タクシーのおっちゃんは、当たり前のように車を止めて
「みんなここからは歩いて登って行くんよ。さあ!兄ちゃん頑張って修行して来んさいよ!」
時間は4時半、雑木林に覆われて辺りは暗く、時折差し込む沈む夕陽の紅い光が不安に覆われている私の心と身体に突き刺さります。
「あの・・・・お寺に横付けできませんか?」
「兄ちゃん!大丈夫か?」
おっちゃんも呆れを通り越して苦笑い。階段を大きく迂回してお寺の前まで行ってくれようとしましたが
「あの!ちょっと待って!流石にお寺に横付けだと根性無しだと思われるんで、お寺から見えないところで降ろしてもらえますか?」
どこまでも根性無しの私に、おっちゃんは笑いながら
「寺までいかんと、どっちみちUターンできんけぇ無理じゃわ。頑張りんさいよ!」
こうして絵に描いたような根性無しの出家希望者を乗せタクシーは安泰寺へ到着。

 本堂らしきものは見当たらないが、2階建てのいわゆる長屋のような建物の前でタクシーは止まり、運賃4千円を受け取り軽やかに帰って行きました。不安と不安で胸一杯で荷物を降ろしている私に上下ジャージ姿の20代の顔色の悪い男性が怪訝そうに近づいてくる。
それもそのはず、約束の3時の時間は遠に過ぎており約2時間の遅刻。

 丁重に謝ったあと、新規参禅者の案内役であろう先程の顔色の悪い男性に外食堂と呼ばれる10人も入れば一杯であろう詰所のような場所に通され、参禅者ノートというものに、自分の年齢、国籍、住所、電話番号などを記入するよに指示されます。
 書きながら他の記入蘭を目をやると日本語で記入されているのはごく僅かで、殆どが英語で記入されており年齢も20代前半から40代まで幅広く、国籍もアメリカ、ドイツ、シンガポール、メキシコなど世界中からでして、わざわざこんな山陰のど田舎のお寺に参禅しに来ていることに驚きます。

 記入し終えると次は部屋に案内されます。参禅者が住むんでいるのであろう二階建ての長屋のような建物の二階の襖の開け放たれた部屋に通されました。
「アーナンダさん?英語喋れますか?」
「いえ、まったく喋れません。英語喋れないとダメなんですか?」
英語はthis is the penくらいならなんとかわかる私。英語の勉強しとけばよかったな〜と後悔しても遅い事を悟る38歳。
「特に喋れなくても問題ありません。同じ部屋のラトビア人は日本語が喋れないですけど、まあ何とかなるでしょう」
「また後で呼びにきますから、部屋に荷物を入れて置いてください。」
そういって遅れて到着して来た私を一切責める事もなく顔色の悪い男性は親切に言ってくだり階段を降りていかれました。

 襖の開け放たれた部屋は6畳一間で部屋の窓も障子も開け放たれており、古い机が2つ部屋の隅に置かれているだけで、何もありません。
 これが世界で最も多く読まれている「ビギナーズマインド」と呼ばれる禅のバイブルに書かれていた「生きている痕跡すら残さず」の実践なのでしょうか?無駄な物というか必要な物も何一つない部屋に妙に感銘を受けたのでした。

 バックパックを開き下着や服、数冊の本などの荷物(バックパックには入らなかった服や荷物は全て捨ててきました)を押入れに入れていると、ふいに殺し屋のような殺気をまとった外国人が部屋に入ってきました。
 丸刈りに刈られた頭皮に薄っすらと伸びた髭には少しだけ短い金髪が混じり、彫りの深い目元は影で暗くその向こうに氷のように冷たい緑の瞳。年齢は20代半ばでしょうか?身長は190cm近くあり筋肉質な身体にボロボロに破れたのアディダスの上下のジャージ。
彼は私に一瞥くれた後、何も言わずゴロンと部屋に寝転ぶとすぐにイビキをかきはじめ寝てしまいました。

怖い・・・

開けっぱなしの部屋で、イビキをかいて寝ているラトビア人と恐怖に震える日本人。
こんな奴と同じ部屋なんてと思うとまた絶望感がだけが私を覆うのです。

やっぱり来るんじゃなかった・・・

それから1時間後、先ほど部屋に案内してくれた顔色の悪い男性がやってきました。
「今からティーミーティングをするのでアーナンダさんはその席で自己紹介をしてくださいね」
男性と2人階段を降りていき、ティーミーティングが行われる部屋は案内されました。
そこは畳20畳ほどの部屋で、もうすでに何人かの雲水達が集まっていました。
ティーミーティングが始まる前に軽く挨拶してまわりましたが、皆の態度がどちらかというと怪訝な感じにみられ一層の孤独感に苛まれます。
 やがて全員で15人の雲水達が部屋に集まり、ティーミーティングが開始されました。
ティーミーティングと言ってもお茶を飲みながら会話するのではなく。
 ミーティング開始時にお茶の少しだけ入った湯呑みを飲み、その後は今日の報告や明日の予定が進行役のファーストモンク(首座)によって仕切られていきます。
 緊張の面持ちで各人を見渡してみると、2名ほど何人かはわからない東洋人とおぼしき女性と、後は皆男性でアメリカ人と同室のラトビア人、髭を蓄えたサンタクロースみたいな赤ら顔のドイツ人とその息子?のような子供と、あとは日本人で皆上下ジャージ姿。
 話を聞いているとどうやら今日は住職は不在らしく、遅れて上山して来た事とタクシーで来た事がとりあえず今日はバレないというセコイ安心感でホッと胸を撫で下ろす私でした。

ティーミーティングの最後に今日ずっと私に親切に指導してくれている顔色の悪い男性から自己紹介を促されました。

「えっと。。。今日から修行する事になったアーナンダと申します。出身は日本です。。よ、よろしくお願い申し上げます。」

緊張のあまり自分でも何を言っているのかよくわからない状態でしたが、私のその言葉に誰も言葉を返す事もなく合掌。そのままティーミーティングは終了しました。

その後、顔色の悪い彼が寺内のトイレやお風呂場、本堂などを一通り案内してくれ、座禅の時間や1日の差定(時間割)を細かく説明してくれました。
 私の弱い頭で全てを覚える事は不可能に近いので、とりあえず他の人のやっている姿を見て慣れていくしかないと思いながら、明日の朝3時45分から始まる修行生活に期待0割、不安10割の気持ちで部屋に戻りました。

消灯時間は9時。その日の夜は緊張と寒さのあまり殆ど寝つけませんでした。
9月の末といえども、山陰の山の中。未だ無言のラトビア人は部屋の襖も障子も一向に閉める気配もなく、用意されていた布団1枚ではとても寒く布団の中で丸まりながら、こんなところに来たことを心の底から後悔し涙を流すのでした。
 

9月26日


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