『幻の旅路』を読む 第3章−4 フランス | 『幻の旅路』大湾節子のブログ

『幻の旅路』を読む 第3章−4 フランス

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大湾節子さんの『幻の旅路』を読む。(14)
2016年05月11日 01時00分00秒
テーマ:『幻の旅路』を読む

ドイツ人の青年ユルガン (P92)
9月29日 パリ

大湾さんはポンピドゥー美術館で一人の青年から声を掛けられます。

別に予定がなかったので、残りの作品を一緒に見て回り、帰りに彼の下宿先を覗かせてもらうことにする。(略)
彼は新築の離れを借りて住んでいた。車庫にはドイツの高級車アウディの新車が停まっているし、室内もしっかりした家具が揃っていて、留学生にしてはいい暮らしをしている。
聞くと、両親は彼が幼いころ離婚し、母親の手一つで育てられたという。
彼女はドイツのファッション界で成功しているビジネス・ウーマン。
どうりで、彼には貧乏臭さが全然ない。
二十代の頃の私や今まで旅先で出会った発展途上国の留学生とは全く違う


なるほど、人間は環境によって作られるのですね。
日本の古い諺(ことわざ)を思い出しました。

氏より=育(そだ)ち[=育(そだ)て柄(がら)] 家柄、身分のよさよりも、環境、教育などのほうが、人間をつくりあげるのにはたいせつであるということ。(国語大辞典(新装版)小学館 1988より)

写真 1980.09.28 エッフェル塔を背景にパリの記念写真をとる

当時のファッションでしょうか、洒落た格好の溌溂(はつらつ)とした大湾さんがエッフェル塔の下部をバックにして写っています。

「エッフェル塔」で思い出しました。
中学1年、学校の授業で英語を習い始めた頃、国語辞典に載っているカタカナ言葉(外来語)を本物の英語では何というか、を、英和辞典を引いて調べることが「マイ・ブーム」でした。
「エッフェル塔」もその1つでした。
「エッフェル」 ⇒ 「efferu ?」 ⇒ あれ?辞書にない!? ⇒
「e」の項にあるはずだ!? ⇒ 「e」の項を片っ端から探し始める ⇒ あった!! Eiffel Tower
こんな具合に英語が好きになっていきました。
辞書で発音記号を覚えながら発声練習をしたのもこの頃です。


モン・サン・ミッシェル城 (P94)
10月1日 ポルトソン→モン・サン・ミッシェル→ナント

バスを降りて、実際に門をくぐり一歩城の中に入って、さらに驚いてしまった。
夢で見た城と実物の城がほぼ同じ造りだったからだ。
不思議に思うのは、この城をまだ訪れたことがなかったのに、どうして城内に村があるなんて分かったのだろう。


本当に不思議ですね。
夢で見たことが現実になったというお話ですから、いわゆるデジャヴ(既視感)とは違いますね。
私は大湾さんと似たような経験があります。
教職4年目に見た夢とそっくりの場所に、その4年後の職員旅行で訪れたのです。
夢の中の話というのが、これまた不思議でした。

夢の中で、私は、お寺の楼門の前に立っています。
吐く息が白いので季節は冬のようです。周りには、まるで初詣(はつもうで)のときのように、人がたくさん集まっています。

どこだろう?と思っていると、突然、私の身体がフワリフワリと浮かんで、楼門(ろうもん)の屋根の下の踊り場のようなところに着地しました。

ろうもん【楼門】二階造りの門。現在では、下層に屋根のある門を二重門と呼ぶのに対して、特に、下層に屋根のない二階造りの門をいう。(国語大辞典(新装版)小学館 1988より)

踊り場の中で、30代から50代くらいのお坊さんたちが20~30人くらい、旅支度をして、お経を唱えているのです。
聞こえてくるお経は「南無妙法蓮華経」でした。

我が家の菩提寺は真言宗ですので法華経は唱えません。
夢の中で不思議なこともあるものだ、と、思っていると、さらに不思議なことが起こりました。
お坊さんの一人が私に声をかけたのです。
「鎌倉まで参りましょう」と。
すると、お坊さんたちは、楼門の踊り場から、一人ずつ、笠をかぶって、お経を唱えながら空中を歩いていくのです。
私に声をかけてくれたお坊さんが私の肩に触れると、私も、お坊さんたちとともに空中を歩いていくのです。
夢はここで終わりました。
この夢を見た4年後に職員旅行で訪れたのは、新潟県佐渡島でした。
そこにあった大きな古刹の楼門が、まさに夢でみた楼門でした。
今ではお寺の名前すら忘れてしまいましたが。

読後感が脇道に逸(そ)れすぎました。
ごめんなさい。読後感に戻ります。

城の外に出ると、海と空の雄大なパノラマの景観が三百六十度広がっている。
何千年も前から繰り広げられる大自然のシンフォニーを体全体で感じ取る。
風の音、海の色、雲の形が刻一刻と変わっていく。
自然の時の流れのなかに立ち、一瞬にして過去になる「いま」を経験する


名文ですね。情景が浮かんでくるようです。
一瞬にして過去になる「いま」』という表現には感嘆しました。
このような名文は、実際に旅に出た大湾さんでしか書けないと思います。


http://ameblo.jp/romantictravel/theme-10050246385.html>
2012-03-02 10:46:46
詩3篇『冬の日』『思い出』『時』
テーマ:私の書いた詩

『時』

時が流れていく
ただ音もなく あてもなく
過去だけが残り
現在は把握(はあく)されぬ間に
行ってしまう
未来は果たしてあるのだろうか。

過去が真実で
我々が今存在しているこの時は
一体何なのだろうか?

こういう風に一人過ごしたのは
何回あっただろうか?
こういう風に一人思ったのは
何回あっただろうか?

大きな宇宙の流れの中で
過ぎ去って行ってしまった人々。
広い砂漠の中で
風に吹き飛ばされて行く
一粒の砂。

人間であるという悲しい存在。
悩み悲しむ苦しみ愛する
宿命の動物。

その中で一体何ができ
何をしようとするのだろうか。
               
1972.8.19 (27歳)
『幻の旅路』より、ブログ用に引用 (P480)

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