私はずっと愛していた。
彼とは5年近く付き合った後に別れた。
私は今でも彼を忘れられずにここにいる。
彼と出会ったのは2012年だった。もう8年も前だということに驚く。
私は当時、10年間付き合っていた彼と別れたばかりだった。
学生の頃からの付き合いだった彼とは、既に恋愛関係は終わっていたのに、なかなか別れることが出来ず、なんとか状況を変える為に踏み切った1年半の同棲を経て、ついに別れた。けっこう消耗する出来事だった。
しばらく恋愛はしないと思っていた。
それなのに、同棲を解消し、地元に戻った私はすぐ彼に恋をした。
元々恋愛体質だった私は、今まで恋をしていない期間なんてほぼなかったんだから、やっぱりどこかで次の恋を探していたのかもしれない。
でも出会ったとき、彼には彼女がいた。彼はそのことを隠さなかったし、だから私は最初から彼女の存在を知っていた。知っていて彼を好きになった。
私はなぜだか、彼女がいるから諦めようとは思わなかった。彼女の他に浮気相手がいることは彼の周りでは有名な話だったし、彼女とは遠距離恋愛をしている彼が、羽を伸ばせるだけ伸ばしていることを私も知っていた。
だから私はとりあえず浮気相手になろうと思った。今考えると、なぜそう思ったのかは分からない。とにかくこの人に触りたい。そんな本能的に湧き上がる気持ちを無視することは出来なかった。
浮気相手になることは簡単だった。心は激しく消耗したけれど、浮気相手になるのに時間はかからなかった。私たちはすぐに恋人同士のような関係になった。彼はそれでも彼女と別れる気はないみたいだったし、相変わらず他の浮気相手にも会っていた。だけど、私は、それでも彼に一番愛されているのは自分だという確信に近い思いを抱いていた。
それは言葉にしたら途端に安っぽく感じてしまう何かだった。私はその何かを全身で感じようといつも必死だった。
いくら「彼女のような」存在になったところで、実際私は彼女ではなかった訳だし、周りから見れば数いる浮気相手の一人だった。
私はその時やっと、その事実が思ったよりも苦しいことを知った。
愛さえあればずっと浮気相手でも構わないと思っていた。例え彼が結婚していたとしても、愛されていない奥さんになるよりは、愛される愛人でいる方が幸せだろう真剣に思っていた。でも、実際にはそうじゃなかった。どちらも辛いはずだけど、愛されていない奥さんを羨んでしまうくらいに、私は徐々に追い詰められていった。
追い詰められた私は、SEXに異常にこだわった。
私たちを繋ぐものはそれしかないと思っていたから。
週に2、3回は会っていたと思うけど、会うたびにSEXをしなければ不安だった。SEXをすれば、彼との目に見えない絆のようなものが強くなる気がしたし、しなければせっかく出来た絆が薄れてしまう気がした。SEXをすることで、私が彼のもので、彼が私のものだという証拠が体に刻まれるような気がしていたし、そうなればいいなと本気で願っていた。
彼は私に合鍵をくれたし、友達とジブリ博物館に行けば、バロンの置物を買ってきてくれた。私を呼ぶ声や目に、気持ちを読み取ることは出来た。
でも、不足感に苛まれていた私は、そんなもの信頼できないと思っていた。バロンをくれたからって、明日には彼の気持ちが変わってしまうかもしれない。SEXなんて一番不確かなものなのに、なぜかそれを一番に信頼していた。
恐ろしいことに、もしかして私は彼の子供を欲しいと思っていたのかもしれない。避妊はしていたし、そんな可能性はなかったけど、無意識の中でそう願っていた可能性はある。本能レベルで彼の遺伝子が欲しいと思っていたとすれば、あれだけSEXにこだわっていたのも分かる。それとも、彼女や私以外の浮気相手に対するライバル心からだろうか。どちらにしても悲しい理由で私は彼とのSEXに執着していた。
その執着は自分が彼女になった後も続いた。
色々会った末、(過去の記事に詳しく書いてます)
浮気相手になって1年以上経った頃、彼は彼女と別れた。
私はついに念願の彼女になったのだ。
だけど、当たり前のことではあるけど、彼は引き続き浮気をした。
もちろん、彼との日々は幸せではあった。それは浮気相手だったときから変わらないことだけど、私は彼の隣にいるとただ幸せだった。浮気相手としてだろうと、なんだろうと今夜彼に会える自分は世界一幸せだと本気で思っていた。だけど、一瞬でも離れるとたちまち不安が襲う。寂しさに耐えられなかった。もう2度と会えないんじゃないかと恐怖に包まれてしまう。
彼と出会ってから、それが私の日常で「普通」の状態だった。全てが麻痺していた。私は「自分の時間」など持っていなかったし、必要ないと思っていた。自分と向き合うことを放棄して、彼のことだけを求めた。
簡単に言うと依存していた。私は仕事も生活も何もかも中途半端で、自分の人生を生きられていなかったから、彼の為に生きることに逃げていた。
そんなことで二人の関係が上手く行くはずはなかった。
私たちは何度も別れたり戻ったりを繰り返すカップルだった。
喧嘩はすさまじかった。私は自分で言うのも変だけど、割と真っ直ぐなタイプで本来は浮気されるなんて耐えられない。よく浮気相手なんてできたなと思う。一方彼は一人の時間を愛する自由人ってタイプで、本来合鍵なんて渡したくない、同棲なんてもってのほか。ってタイプだった。それが浮気がバレるたびに弱みを握られ、私に縛られてゆく。私はまず合鍵を要求し、信用できないからと言う理由で部屋に入り浸ったりした。
完全にお互いが無理をしていた。
自分を殺して、自分と合わない相手と付き合っていた。
「好きだから」
理由はそれだけだった。
散々無理をし合った挙句、私たちは最悪の日を迎えた。
お互い血が出るほどの喧嘩になったのだ。
私たちはどちらも正気ではなかった。力の加減は間違っていた。
当然彼の力のが強い。私は、自分だって手を出したにもかかわらず、
「暴力を振るわれた」と心の奥で感じた。
その喧嘩がきっかけで、私たちは3ヶ月近く会わなかった。
もう本当に終わってしまったんだと思った。
私は別れたくない、と何度か連絡をした。でも彼は取り合ってはくれず結局3ヶ月くらいの時間が経った。
諦めて仕事がんばろーと思っていた頃に彼から連絡があり、またよりを戻すことになる。
戻ってからも、私たちの関係はあまり変わらないように見えた。別れていたとはいえ、たった3ヶ月だ。いつもよりちょっと長かっただけのことじゃん。彼はまた浮気をするだろうし、良くも悪くもまた変わらない日々が始まる。私はとにかく仕事を頑張ろう、その頃にはそんな前向きな気持ちも戻りつつあった。だけど、二人の関係が前と同じではない事に気がついたのは、よりを戻して割とすぐのことだった。
最初はそんなことなかったと思う。確か、よりが戻って久しぶりにしたSEX
は今までと変わらなかったはずだ。
でも多分それから間もなく、私はSEXの度に激痛を感じるようになってしまった。今までそんな痛みを感じたことはなかった。例えるなら、人生初めてのSEXのときに感じるような痛みだ。3ヶ月しなかったくらいで、処女に戻ってしまうことなんてあるのか?そんなことも過ぎるくらい、とにかく痛かった。最初はそんなに深刻に考えていなかった。生理の直後だったからかも?くらいに思っていた。今にして思えば、その頃から、痛みが原因だったのか、別れの兆候か分からないけど確実にSEXが少なくなっていた。
回数が少ないとはいえ、毎回感じる激痛に、さすがに不安になった私は近くの産婦人科を受診した。ネットで色々調べた結果、性病かもしれないと思ったのだ。それならそれで薬で治るし、病院に行けば解決すると思っていた。
でも。診察の結果出されたのは、潤滑油のようなものが2種類。いわゆるローションのようなものだった。えー!私は驚いた。驚いたし、ショックだった。私はまだ30歳になったばかりだったし、そんなものが必要だとは思えなかった。安易な考えだけど、無知だったこともあり、自分の女としての部分を否定された気がした。
その時の私は、自分の体と向き合うことが出来なかった。
処方されたローションは使うこともなかったし、友達には相談したかどうか思い出せないけど、とにかく彼には言えなかった。ローションの力を借りなければSEXができない自分は、女として見られないんじゃないかと怖かった。
そんなことを考えているうちに、気がつけば完全にSEXはなくなっていた。
痛いから自分だって別にしなくてもいいはずなのに、彼が浮気をしているからしないんだろうと決めつけていた私は、会う度に問いただした。
実際彼が浮気をしていたのかは分からない。でも、SEXで繋がっているという思い込みをずっと捨てられなかった私は、このままじゃいけない、と自分で自分を追い詰めて行った。SEXレスが1ヶ月を過ぎると、私は冷や汗が出るくらい不安を感じるようになっていった。
でも、その頃でも彼は私を抱きしめたし、キスをした。久しぶりに仕事が早く終わるからお昼を一緒に食べようと言ったし、私を見る目は声は、出会った頃と変わらないように感じた。私は、女として見られていないんじゃないかと不安を感じながらも、彼の愛を疑ったことはたぶんない。
なのに、だ。私はSEXに執着するあまり、他の全部を見失った。
SEXをしなくなって3ヶ月が経った頃、私たちは終わった。
さよならも言わない喧嘩別れだった。
私はすぐに恋をしたし、彼は新し彼女と遠い故郷に帰った。
私は彼とのSEXが好きだった。この世の何よりも好きだった。あまりにも幸福で、文句のつけようがなかった。私にとってSEXとは、彼に一番近づくことができる行為だった。これ以上近づけないところまで近づけるもの。私の心がそれを求めたし、体は心と呼応するように彼を受け入れる為に協力した。私にとって体が濡れるとは、そういうことだ。
だから、彼とのSEXで私の体が濡れなくなってしまったことに、私は納得が出来なかった。だけど、私と彼の関係は、ただ好きだという感情を超えて、好きだからこそお互いを脅かすものになってしまったという事を考えれば、納得ができるのかもしれない。私たちは心も体も傷つけあってしまった。
自分を傷つける可能性がある相手に近づく事を、体は許してくれないのかもしれない。
というかそれ以前に、私の体に問題があったのかもしれない。
30歳とはいえ微妙な年齢だし、私の体に潤う力がなくなってしまっただけなのかもしれない。彼との間に起きた事は偶然それと重なっただけという可能性もある。なので私は、次の素敵なSEXに向けて体と向き合う事に決めた。34歳にして初めて自分の女性器と向き合う気持ちになったのだ。
彼氏も全然できないし、今は準備期間だと思う事にした。
2019年に卵巣嚢腫が見つかり手術をした事もある。やっぱり、何かしら女性器系に問題を抱えていたという事を突きつけられたのだから、このままじゃいけないと。それから自然にデリケートゾーンのケアに興味を持ったり、子宮を冷やさない食事や生活習慣を取り入れるようになった。
(この2冊を影響を受けました)
とはいえ、相手がいなければ自分の体が変わったのかどうか、つまり心と体は連動するようになっているのか、試す事は出来ない。
彼と別れて2年がたった頃、やっとそのチャンスがやってきた。
でも、今思えば結果は分かりきっていた。私はその彼に好意は抱いていたが、恋はしていなかった。友情以上のものはたぶん感じていなかったのだけど、お酒の勢いでそうゆう事になった。だからある意味心と体は連動した。私は濡れることはできなかった。その後何回かしたけど結果は同じだった。
でもどうなんだろう?別に恋をしていなくたって、性欲というものは女性にだって存在するのだから、ある一定の好意があれば欲情しても良さそうだし、そういう事だってきっと沢山起こっているはずだ。けど、とにかくその時は無理だった。心の問題なのか、体の問題なのかは、手術からまだそんなに時間が経っていなかったし、分からない。
でも私はまた少し自信を失くした。そして、愛してもいない人とSEXをした私は無償に別れた彼に会いたくなった。今すぐに愛のあるSEXをしなければいけないような気がした。
だから私は、愛のあるSEXを求めて彼に会いに行った。はるばる飛行機に乗って。(彼は新しい彼女とは別れていた)
でも、はっきり言ってどんなSEXをしたかあんまり覚えていない。
お酒を沢山飲んでいたし、久しぶりすぎた事と、限られた時間の中でゆっくり味わう余裕がなかった。だから正直、思っていたような素晴らしいものにはならなかった。矛盾しているようだけど、久しぶりに一緒にお酒を飲んだりご飯を食べる喜びのが勝り、SEXなんてどうでも良かった。
とにかく私の心と体は浄化された。
それから3ヶ月後、私はもう一度彼に会いに行った。今年の1月の事だ。
結果は同じだった。相変わらずSEXは覚えてないし、心が体が浄化されるのを感じた。違ったのは、帰るのが更に辛くなったという事だけ。別れるのは寂しすぎて、もう2度と会いにくるのはやめようと決めた事くらいだ。
そして私は最近恋をした。
彼とのSEXは他のなにとも似ていなくて、私にとってとても心地が良いものだった。それは久しぶりに感じる心と体の連動だった。私は彼に近づけるだけ近づきたいと思った。体はそれに協力した。
それから2週間が経った。私は彼に会いたくて死にそう、ではない。
時間があったら会いたいな、そんな感じだ。なぜだろう?
私の体は正常な性欲を取り戻しだけなのだろうか?ある一定以上好きな相手だから体は反応したのだろうか?よく分からなくなってしまった。
ってゆうかそんな事はどうでもいい、誰がいちいちSEXの相手が変わるたびに心と体の連動具合になど注目するだろう。そんなのその時の体調にだって左右されるはずだし、どれだけ濡れるかが、どれだけ彼を愛しているかのバロメーターになるはずはない。そんなことばかり考えているなんて、くだらない。どうしてそんなことを考えなければいけないのか。
私は素敵なSEXをした。何かが通じ合った気がしたわけじゃないけど、
心も体も何かで満たされた気がした。SEXの素晴らしさを、再確認できた瞬間だった。でもこれ以上近づきたいと思わない。だから私は今日も自分のベットで眠りたいと思うのだろう。
あの頃、私は自分のベットで眠りたいなどと思った事は一度もなかった。
それが異常だった事を、認めないわけにはいかないけれど、私はそれ以外の恋愛感情を知らない。
私は新しい恋愛の仕方を覚えたのだろうか?
心と体が濡れるとき、それは君を愛している証拠だと決めてしまうことは、
早とちりだろうか?
早とちりでもしなければ、私はいつまでたっても恋ができないから、もう早とちりしてしまおう、と思う今日は、まだまだ梅雨が明けない。