「沈まぬ太陽」は、1995~99年に週刊新潮で掲載された山崎豊子さんによる長編小説で、2009年に映画化、2016年にはWOWOWでテレビドラマ化された。テレビでは全部で20話もあるが、この10月27日からBS朝日で毎週2話ずつ放映されていることがわかった。10日は、勤務地がテヘランからナイロビに異動させられた頃の第5話と第6話であったが、つい引き込まれて最後まで見てしまった。
このドラマは昭和30~60年を背景に、激動の道を歩んだ大手航空会社で働き、そこで波乱の人生を生きた男の奔走と苦悩を描いた社会派作品である。大手航空会社「国民航空」社員で同社の労働組合委員長を務めた「恩地元」と彼を取り巻く人物の描写を通して、人の生命にかかわる航空会社の社会倫理を表現したあくまでフィクションの作品であるが、実在のモデルがいて、登場人物も実際の人物と符合するあたり妙に興味がそそられる。ドラマを見ながら、実際の人物名が想像されるあたりが大変面白い。
ただ、あくまでフィクションの小説なので、モデルの人物がダブったり、架空の人物が登場したりもするので、注意を要する。会社の社員・役員、政治家などの登場人物、各政府機関や組織などもいろいろ出てくるが、小説的に再構築されている。実際の人物との相関図も公開されており、相関図を見ながらテレビを見ると好奇心が倍増する。
この小説・ドラマの内容については、自分の海外勤務の経験から現役時代の環境と重なる部分も多いので、人一倍興味が沸き感慨深いものがある。現に、主人公のモデルとなった人とは、交流もあったので、感慨深いものがある。1985~89年にフランクフルト駐在中、彼はナイロビ(2回目のナイロビ勤務)の支店長だったので、仕事上での関係もあった。1986年に落語家の立川談志一行によるナイロビで落語の会が開催されたことがあり、事前に談志師匠一行も東京への出張帰りの彼も乗り継ぎのフランクフルトでトランジットし、我々と一緒に食事をする機会があった。自分の知る主人公は、年を重ねていたからか温厚な人で、小説やテレビで描かれている人物とは大分異なる印象であった。
テレビ放映は一度見ているが、久しぶりにもう一度最後まで見ようかと思う。フィクションということで、組合問題の偏見や御巣鷹の事故をめぐる創作などモデルの会社に対するネガティブな内容が含まれていたり、小説なので変に誇張されていたり、事実と異なる点もあるため、正直なところ複雑な思いも少なくないが、楽しみが一つ増えた。
