いよいよ大詰め感ただよう「へうげもの」、第20巻出ましたね。
講談社HPによれば
悪漢・大久保長安、親友・高山右近との別れ。粛清と伴天連追放、豊臣潰しへ暴走する家康。笑福の灯を消すまいと、織部の「激陶」やまず。生か死か、武か数奇か、それが問題にて候。
悪漢・大久保長安、親友・高山右近との別れ。粛清と伴天連追放、豊臣潰しへ暴走する家康。笑福の灯を消すまいと、織部の「激陶」やまず。生か死か、武か数奇か、それが問題にて候。
帯によれば
秀忠に作らせし「弓箭台子」。/正宗懇望「流れ圜悟」をディレクターズカット。/島津家の秘密兵器・薩摩茶入をプロデュース。/古田織部氏、ストップ・ザ・家康へ懸命の戦い。/日の本の危機に、数寄の力でさらに倍!!
とのこと。連載で読んでいた時はそれほどに感じなかったんですが、こうやって単行本の形になると、今回は数寄要素が満載!大詰めを迎える政治史的な部分と数寄話が集約してきて、今巻はここしばらくでも特に面白かった。
(以下ネタバレ有り。ご注意)
まずはお道具方向から行きましょうか。帯にも出てくる「弓箭台子」、「流れ圜悟の墨跡」の切断、織部様式の薩摩茶入&伊賀花入「生爪」のほか、「織部床」の誕生とか有楽の茶杓「玉ぶりぶり」なんかも使い方上手い!
「流れ圜悟の墨跡」の話は、伊達政宗の所望によって織部が春屋宗園に相談して切断したという伝承をうまくアレンジして、政宗の天下への野心を織部が諦めさせる、という、「独眼竜正宗」(再放送見てました)を思い出させるような緊張感あるエピソードに作りこんでました。はみ出した一文字を切り捨てる古織様がカッコいい。

結局、伊達家に渡った後半部分がその後行方不明になっているため、
「切断によって作品が守られたと言えなくもない」と苦笑い混じりな
コメントが付くこともあるw超国宝。これこそ織部の爪痕か。
あと、確かに「透」の下部分が切れてますね。凄いところをネタにするもので
で、証拠隠蔽を図る政宗が大久保長安を消しに動き・・・と次なる展開を引き出してくるあたり、「数寄が動かす日本史」として実に絶妙で。
まあ、その次なる展開ってヤツが豊臣と織部の運命にとってかなり致命的な感じなんですけど・・・

切断前の「流れ圜悟」。失われた後半部も、筆写資料から書かれていた文言は判っては
いるようですけど、この場面のためにわざわざ再現しちゃうんですから、マンガも大変だ・・・
薩摩茶入の話は、去年の岐阜県現代陶芸美術館「大織部展」や以前の「上田宗箇展」にも出ていた(銀座松屋の「古田織部展」の時は参考パネルだったかな)、例の書状の件。
織部が上田殿を使いにして薩摩焼を指導していたんだけど出来が気に入らず、「宗箇が好み申し候焼物、散々の物にて御座候」なんて書き送った書状が残っていて、ほんとにマンガの中の二人の関係そのもの。
そこに絡む伊賀花入「生爪」の件も作中描かれた通り、織部が宗箇に花入れを送る際に未練たらたら、「つめをはがし侯やうに存侯」と書き送ったという(苦笑)、二つ連結して織部―宗箇師弟の総決算的エピソードになってます。せっかくだからもっと大きな展開にしてもいいくらいだったかな。
で、その再指導の成果なのか、浅野幸長が手にしているまさに織部様式の薩摩茶入は田中丸コレクションの「サイノホコ」ですね。
そのほか、出てくる道具では・・・織部が真田幸村に渡した伊賀の耳付花入は三井記念美術館所蔵の「業平」がモデルですか。この花入については、ついこの間の連載で伏線回収されてましたね。
この左上のヤツですね。マンガで使われたのは反対側のようですが。

さらに安南染付の茶碗も遂に登場。
草花文紅安南茶碗(重美)これはもう、あの場面以外ではありえなかった。織田有楽作茶杓「玉ぶりぶり」と合わせて・・・。あの可笑しなネーミングの由来をストーリーに上手いこと結び付けてましたね。
ちなみに冒頭、家康が手にしている星形の絵の黒織部茶碗は、なんかどこかで見たことがある気がするんだけど、手持ち資料&検索では見つからず・・・。気のせい?知っている方、教えてくださりませ m(_ _)m
ストーリー的には、その政宗が野望を諦めたことを発端にした大久保長安の最期、からの拡がる粛清、さらに伴天連追放令、で高山右近追放、そしていよいよ不穏な成り行きへ、というあたりが主な流れなんですが、これが実に有機的に、緻密に組み立てられていて、もう完全に大河的展開。これはやっぱり単行本で読まないと分からない。絵的には雑誌サイズで伝わる迫力というのは大きいんですけどね。

さよなら右近殿・・・。
特に泣かせるのは高山右近との別れの場面、ということになるんですが、きれいに一座建立して完了、というのではなく、あえて感情をすれ違わせて別れさせているのが大人の物語だなあ。苦い。相当に苦い。しかも笑わせつつ、泣かせつつ、ですからね。以前の(5巻)秀吉の初の禁教令での別れの場面と比べても、より渋い、いい場面になりました。人生を感じさせます・・・。

そして「玉ぶりぶり」登場。泣ける場面に持ち込まれる、
この笑える響きが、ですね。
お、そういえば高山殿がオルガン弾いてるシーンがあるんですよね。ポジティフ・オルガンなんですけど、けっこうデカいヤツ。古楽好きの立場からすると、楽器の背後にちゃんとふいご手がいるのが高感度きわめて高し(笑)。
実際の演奏もこんな感じ。弾いてる人よりふいごの方が仕事してる感あり(笑)一方、大久保長安の最期は・・・なんじゃこのシュールな展開は(^^; まさかの故はらたいら出演(^^; しかしなんで大橋巨泉だったんですかね?山田センセの頭の中では、山師といえば巨泉だったんでしょうか。絵的には似てないし、この点はどうも謎でしたが、最後に笑わしてくれました。
あとギャグ方向でいえば・・・イグアナですか(大笑)。山田センセ、政宗=眼帯=タモリなんですね。最近あまりギャグネタになってなかった政宗にまだこんなネタを隠していたとは(笑)。それをさらに海蜥蜴(マールドラゴン)とか、よくこじつけるわ(笑)。
さて・・・いままでの清濁併せのむ家康、数寄に偏狭な秀忠、という図式が前巻からの流れで逆転してきて、秀忠が数寄を理解し始める一方で、猜疑心の塊の家康がいよいよ豊臣潰しに動きだしたのが、主人公の最終的な成り行きをどう決めていくのか。連載の方では家康がとうとう織部を・・・という場面があって、最終コーナー回った感じがあります。

秀忠も変りはじめ・・・
ついに運命の方広寺の鐘も登場。織部が「楽」の字を入れることをサジェストしているのが、秀吉の最期の場面との繋がりを思うとなかなか痛い・・・。
