というわけで、続きです。明日8/9(日)が最終日ですが(^^;
なにしろ酷暑ですのでお出かけの際にはご注意・・・。逆に館内は寒いので、一枚羽織るものもご用意あるべし。

八王子・東京富士美術館 ~8/9(日)
さて、今回の展示構成は
1章 歴史的背景~アンギアーリとフィレンツェ共和国
テーマ1-1:1440年6月29日、アンギアーリの戦い / テーマ1-2:シニョリーア宮殿の大評議会広間
2章 失われた傑作~レオナルドの《アンギアーリの戦い》への手がかり
テーマ2-1:《アンギアーリの戦い》をめぐる文書史料 / テーマ2-2:壁画《アンギアーリの戦い》
テーマ1-1:1440年6月29日、アンギアーリの戦い / テーマ1-2:シニョリーア宮殿の大評議会広間
2章 失われた傑作~レオナルドの《アンギアーリの戦い》への手がかり
テーマ2-1:《アンギアーリの戦い》をめぐる文書史料 / テーマ2-2:壁画《アンギアーリの戦い》
/ テーマ2-3:レオナルドの馬 / 《タヴォラ・ドーリア》の立体復元研究
インテルメッツォ─優美なるレオナルド
3章 競演の舞台~アンギアーリとカッシナ、ミケランジェロとの対決
テーマ3-1:ミケランジェロの《カッシナの戦い》 / テーマ3-2:《アンギアーリの戦い》とラファエッロ
インテルメッツォ─優美なるレオナルド
3章 競演の舞台~アンギアーリとカッシナ、ミケランジェロとの対決
テーマ3-1:ミケランジェロの《カッシナの戦い》 / テーマ3-2:《アンギアーリの戦い》とラファエッロ
/ テーマ3-3:大広間の再装飾 / テーマ3-4:ティツィアーノの失われた大戦闘図
4章 視覚革命~《アンギアーリの戦い》によるバロック時代への遺産
テーマ4-1:《アンギアーリの戦い》とルーベンス / テーマ4-2:太陽王ルイ14世時代のフランス
4章 視覚革命~《アンギアーリの戦い》によるバロック時代への遺産
テーマ4-1:《アンギアーリの戦い》とルーベンス / テーマ4-2:太陽王ルイ14世時代のフランス
/ テーマ4-3:イタリア・バロックの戦闘図
というわけで、レオさん・ミケさん作品(の模写)だけでなく、関係者の肖像画から、題材となった1440年のアンギアーリでの戦い自体に焦点を当てて15世紀半ばのテンペラによる戦闘図から、各種模写や関係資料、さらには立体模型まで登場する非常に念入りな展示。で・・・さらに後代の展開についてもかなり充実。
まずは会場を入ってすぐダヴィデの頭部、で次がいきなり「サヴォナローラ処刑図」なのは、いや、「世紀の競作」を構想したソデリーニ体制の成立の前段だからなのは判ってはいるんですが・・・なんだ、いちおう神権政治否定のメッセージか?あるいは“法難”に対するシンパシー的な感じか、みたいな勘繰りをしたくなる(笑)。やむをえない(笑)。

サンティ・ディ・ティート: 「ニッコロ・マキャヴェッリの肖像」
で、その次がマキャヴェッリの肖像ってのは、深読みするとどんな意味だってことなんですが(笑)、ま、ここは「巨匠対決」絡みなんでしょうね。
当時フィレンツェ政府の高官だったマキャヴェッリが、レオナルドの「アンギアーリ」の制作に関する契約書に政府側代表としてサインしてるんですよね・・・。ダ・ヴィンチ、ミケランジェロときて、お次はマキャヴェッリ。この・・・オールスター具合が、実に塩野七生的世界w
で、15世紀の展示があり、レオさん・ミケさんの展示があって、その次ですね、テーマ3-4、“もう一つの失われた戦争図”、ティツィアーノの「スポレート(?)の戦い」のコーナーもあるのが凄くポイント高いなと。

作者不詳(ティツィアーノに基づく): 「スポレート(?)の戦い」
これはこれでなんだか凄い。人vs人の戦いのほかに、谷という立体的な舞台設定で、群衆の坂の転落という動きがあるんですね。模写としてもこれは・・・けっこう出来が良いんじゃないですか?右下の武将の横顔とかは普通にティツィアーノっぽくて、「かつてはティツィアーノ自身の作と伝承されてきた」というのも、まあ納得。そのほか、この油彩とは若干構図が異なる複製版画ヴァージョンを展示。
「アンギアーリ」や「カッシーナ」の影響、というか対抗意識を燃やしての作、とのことですが、そのほか中央、橋の向こうで岩にぶら下がる人は、ラファエッロの「ボルゴの火災」(@ヴァチカン)からも引用してますかね?
うじゃうじゃした群衆表現とかはすでにマニエリスムの領域。こういうのはレオナルドの「アンギアーリ」をつぶして描いたヴァザーリの戦争画を見ると山ほど出てきます。かと思うと手前の横たわる人の筆致とかは既にロマン派っぽいテイストもあって、ティツィアーノ、やっぱり時代的にもう一歩進んでる感じあります。
こちら、オリジナルは火事で焼けちゃったんだそうで、レオナルドやミケランジェロと違って完成されていたというだけに、もったいなさもまた格別・・・。
後半は、17世紀に入って「アンギアーリ」からの影響が特に強かったルーベンスから始まって、「アンギアーリ」の影響を感じさせるバロック期の戦争画に繋がる展開。
今回の展覧会は、もちろんレオナルドのオリジナルに焦点を当てた展観なわけですけど、ルーベンスをキーにして後世の戦争画が並ぶことで、全体としては「ルネサンス・バロック戦争画展」という面も同時に持っていて、その発展性がなかなか面白いです。
・・・ま、結果、延々戦争画が続いてこれが実に殺伐としてるわけですが(笑)。
・・・ま、結果、延々戦争画が続いてこれが実に殺伐としてるわけですが(笑)。

ルーベンス: 「アンギアーリの戦い」模写(こちらは出品されていません)
「アンギアーリ」の模写といえば、古くから一番有名なのはルーヴルにあるルーベンスの素描ですよね。私が子供の頃に見た画集とかでもルーベンス版しか出て無かったですよ。図録解説を読むと、全部ルーベンス模写ではなく、16世紀の作者不詳の模写にルーベンスが加筆したものだとのことで、びっくりしたんですが。
今回はその有名なヤツは来てませんが、近年ルーベンスに帰属されるようになったという油彩が出てます。こちら、色合いがわりと穏やかで、素描版の迫力にはやや欠けるか。
もともと激しい感情表現を得意としていたルーベンスが、レオナルドとしては例外的に激しい「アンギアーリ」に特に惹きつけられた、というのはありそうな話。ルーベンスがここから学んだ集団戦闘図の劇的な表現をその後の戦争画や狩猟図に生かし、さらに次世代の画家達がルーベンスを経由して「アンギアーリ」的な表現を学んだ、という図式が描かれてます。

ルーベンス(に帰属)(ダ・ヴィンチに基づく): 「アンギアーリの戦い」
↑が、第1段階としてのルーベンスによる「アンギアーリ」模写、第2段階がルーベンスによる「アンギアーリ」“応用編”である「軍旗争奪」(素描)、ヘラルト・エデリンクの「アンギアーリの戦い」(版画)が第3段階、次の世代の画家によるルーベンスの模写の模写で、版画なのでレオナルドの構図を広めるのに貢献したとのこと。版画だから構図が左右逆転していて一瞬あれっ?と思いますが。
ルーベンスの“応用編”の模写がニコラ・アンリ=タルデュ「コンスタンティヌス帝とマクセンティウスの戦い」が第4段階という感じですか。こうやって「アンギアーリ」の死闘表現がルーベンスの解釈を介してヨーロッパの戦争画のベースになっていくわけですね。レオナルド→ルーベンスの影響はバロックを超えてドラクロワなんかにも色濃く出ているようなので、非常に深く広く浸透した、ということのようで。
その後はその流れの上で制作された戦争画。デカいのはアントニオ・テンペスタとサルヴァトール・ローザ、ルカ・ジョルダーノの油彩、それとオランダで作られたタピスリー。
けど、テンペスタは・・・生年的にルーベンスより前だから、これはルーベンスの影響とは別かな?「アンギアーリ」の影響は明らかだけど、マニエリスムぽく動きがなくて、ポーズ集的に見えるところがミケランジェロぽくもある。ま、わりと好きなタイプ(^^;
ジョルダーノの2作はアーチのある橋での戦闘が画面の中心にあって、これは明らかにティツィアーノのモティーフですね、と思ったら、橋のある戦闘図はヴァチカン「コンスタンティヌスの間」にあるジュリオ・ロマーノ「コンスタンティヌス帝とマクセンティウスの戦い(ミルウィウス橋の戦い)」の方が先行しているようですね。
・・・そうか、それがジラール・オードランの「コンスタンティヌス帝とマクセンティウスの戦い」(版画)なのか。「(シャルル・ルブランに基づく)」て書いてあるから気づかなかった。ルブランがジュリオ・ロマーノを模写して、その版画ヴァージョンがオードランということね。

ジュリオ・ロマーノ: 「コンスタンティヌス帝とマクセンティウスの戦い(ミルウィウス橋の戦い)」
(こちらはオリジナルのフレスコ。出品されてません。ヴァチカンの壁面ですので(^^;)
ジュリオ・ロマーノ作品はラファエロのプランに基づいているようで、ラファエロが「アンギアーリ」を模写している件はテーマ3-2で軽~く触れられているんですが、「コンスタンティヌス帝・・・」もやはり「アンギアーリ」の影響下にあるみたいなので、つまりバロックの戦争画は、ラファエロ=ジュリオ・ロマーノとルーベンス2系統で「アンギアーリ」の影響を伝えてるわけですね。
というわけで、皆さん流しがちな後半部分なんですが、関係性の絡み合いがけっこうマニアックに面白いセクションですので、お時間あれば、こちらもじっくり見てみましょう。・・・いかんせん、殺伐とした気分になってくるのは否めないところですが(苦笑)。
なんにしても、明日8/9(日)までですが(^^;
おっ、すると・・・今、西美「ボルドー展」に出てるドラクロワの「ライオン狩り」もやっぱりその線上か?さらにルドンがドラクロワの「ライオン狩り」を模写してる?おお、繋がるなあ。いい感じですね・・・
こちら、このあと京都と仙台に巡回します。