見下ろせば、一面が暗く広がっていた。ところどころ光る点も見え、しかし、一様に暗く静かであることは変わり無い。 俺は顔を上げると、視線を動かさずに大きくつぶやいた。

「よぅ、久しぶりだな、サムライ」

 響く特徴的な足音に、振り替えらなくともわかる。カチャ、と言う少し物騒な物音もまた、彼を象徴するものだった。

 後ろには、俺がサムライと呼ぶ、一人の男が立っている。その渾名にたがわず、きっちりと軍服を着込み、帯刀しているだろう男である。性格も、服装の通り。

「お前から現れるなんて、珍しいな。何のようだ?」

 それでも振り返ると、少し予想と反した服装をしていた。彼は軍服ではなくジャージを着込み、帯刀していた。

「……貴様を切りにきた」

 鋭い目つき、まさに侍。

 俺は立ち上がると、仰々しくも腕を動かし、呆れたような表情をする。

「おいおい、待てよ。仇討ちか? 俺はお前の知り合いを切った覚えなんぞないぞ」

「仇討ちではない。主君の命に従っているまでだ」

 サムライはそういいながら、抜刀する。強いライトに照らされて輝く刃のまぶしさに、俺は目を細めた。

「主君、って……隊長か?」

「答える義理は無い」

「愛も変わらず冷たいねぇ、お前は」

 仰々しい態度は、未だ収めない。呆れたような表情を強調させて、俺はサムライに言い放った。

「何とでも言え」

「へいへい」

 さて、そろそろお遊びもやめにしないといけない。

 見れば、さすがに向こうも本気のようだ。サムライが本気と言うことは、これは命がけの舞台のようなもの、と言うことになる。ならばこちらも、しっかりと動かねばならない。

 俺はホルスターに手を当て、愛用の銃を取り出す。そして構え、撃鉄を起こし、狙いを彼に定める。

「お前が本気で来るなら、こっちもその気になるぜ」

「承知の上だ」

「……おい、でも良いのか、ここでやりあって。変なことしたら、俺たちゃ広大な宇宙の彼方まで飛ばされて窒息死だぜ」

 サムライが少しでも逡巡するような顔を見せてくれれば、こいつにも人間さがあるように感じるのだけれどね。

 彼は変わることなく、即座に答えた。

「承知の上だ」

「根っからのサムライってか? なら、始めようぜ」

 そして、俺はトリガーを引き―――

「ストップ!」


 


⇒「バイザー」 ~「超重力」~