校長室だより~燦燦~ №785
アンラーン
2023.7.4
人生100年時代といわれる中、人生を充実させるためには、学び続けることが不可欠である。学び直しという言葉もある。だが、過去の経験や知識がある人ほど、以前はこうした、この場合はこうだったといった前例にとらわれ、学びがうまくいかないこともあるという。 unlearn(アンラーン)というものがある。アンラーンは、これまでに学んだ知識や身に付けた技術を振り返り、さらなる学びや成長につながる形に整理し直すプロセスである。学びによる知識や経験をよりよく生かし、長いスパンで活躍し続けるためのとても重要なステップである。 「昨年はこうだったから、こうすべき」「こうすれば、こうなるに違いない」「あの人の言うことなら、間違いない」といったパターン化された思考は、新しい環境に適応しようとするとき、または、新たな行動を起こすべく次の一歩を踏み出す場面において、意思決定の大きなよりどころとなる。 第一線で奮闘する現場のスタッフにとって、長年のキャリアで得られた思考パターンや暗黙知は、行動指針の一つとなり、その行動や取組に安定感を与えることは紛れもない事実である。また、前例を踏襲したり、過去の成功体験から導き出される行動指針は、何よりも自分自身の気持ちに安心感をもたらすものとなる。 ある人は、アンラーンを、これまでに身に付けた思考のクセを取り除くことと説明している。ここでの思考のクセとは、環境に適応してパターン化した思考を指す。思考のクセは、柔軟な発想の妨げになったり、意味のある選択肢をみすみす逃してしまうリスクも抱えている。また、思考のクセの存在が、長期的には自分自身の成長それ自体を止めてしまう可能性さえある。 アンラーンの本を読んでいたら、「小さなアンラーンを習慣化するための8つのヒント」が紹介されていた。教育の現場に置き換えて示してみる。 ① 日ごろから「これは、学校外でも通用するだろうか」と自問自答する。 ② 改めて教師になろうと思った理由を自分に問い、その理由に情熱を傾ける。 ③ 教育業界以外の人に、仕事や熱中していることを説明し、その伝わらなさから自 分のクセを発見する。 ④ 多様な年齢、仕事、国籍、環境の人たちの中に身を置いて、「自分にとっての当 たり前」と「他人にとっての当たり前」の違いに気付く。 ⑤ 最近の「自分」について身近な人に尋ね「自己認識」と「周囲からの評価」の違 いを受け入れる。 ⑥ あえて情報量をセーブしながら動作や仕事を言語化することで、「本質」にフォ ーカスする。
⑦ 本業以外の活動を通じて、本業だけに通用する「当たり前」に気付く。 ⑧ 「いかになじむか」ではなく「いかに違和感を忘れないか」を大事にする。 学校で働く教員にこそ、アンラーンは必要だと思うのだが、どうだろうか。アンラーンすることは、豊かな可能性に満ちあふれた「新しい自分」との出会いを提供してくれるかもしれない。自分自身と一体化してこびりついて離れない思考方法、無自覚に繰り返している行動、何気なく多用しているフレーズなど、パターン化された罠にはまらない学びの在り方としていいかもしれない。