園長通信~こころ~ №450
IKEA効果 2026.5.15
コスパという言葉には慣れてきた。最近では、タイパも定着してきた。対効果、損得勘定で便利さばかりを求める風潮がある。様々な機会に、便利になったなあと驚き、感動することがある。だが、満足はしていない。人間は、欲深い生き物である。これでいいということがない。
どんなに便利になったとしても、仕事でも日常生活でも不便だと感じることがある。この不便さが重要なことのように思える。あえて小さな不便さがあったほうが、日々の生活が少し豊かになるのではなかろうか。 IKEA効果というものがある。IKEAとは、あのIKEAである。組み立て家具で人気の世界最大の家具量販店である。
商品を自分で組み立てた人は、同じ商品の完成品を手に入れただけの人よりも、その商品を高く評価する傾向がある。ただ苦労すればよいのではなく、重要なのは、自分の手で完成させたと感じられることである。そうすると、満足度が高まる。つまり、達成感や自分事感をもたらす手間が、価値を押し上げるのである。これが、IKEA効果である。
人は、がんばったのに価値がないと思うのがつらいため、心のつじつまを合わせる方向に価値が動きやすい。これが、不便さが意味を生むという心のメカニズムの一つである。また、人は、がんばればがんばるほどに、努力することが好きになったり、意義を感じたりする。
日本という国は、便利さが極めて高い社会である。だからこそ、生活の中に小さな不便を加える意義も大きいのではなかろうか。大切なのは、達成感や工夫が生まれるようなちょうどいい不便を選ぶことである。
IKEA効果の肝は、完成させられる点にある。これが、うまくいかなければ嫌になってしまう。私には、IKEA効果が期待できない。正直、組み立てるのがめんどうくさい。達成感などない。果たして、完成するのかという不安もある。最初から完成品をいただいたほうが満足感がある。
実際、完成できなかったことがある。イタリアにいるときだった。ローマにあるIKEAから、組み立て式のイスを買ってきた。早速、組み立ててみた。あれっ、ネジが一つ足りない。いくら探してもない。そうだった。IKEAといえでも、ここはイタリアだった。こんなことで驚いてはいけない。諦めてもいけない。後日、またIKEAに行って、ネジだけもらってきた。お店の方は、手慣れたものである。さも当たり前のように対応してくれた。めでたく完成したイスは、今でも我が家で活躍している。
便利さの中に、少しの不便さを加えることで、愛着や納得感といったものを、もう一度生活の中に呼び戻すことができるのではなかろうか。便利な時代だからこそ、あえて不便さを残す。そのほうが日々の暮らしを豊かにできるのかもしれない。